花のない花屋

90代の老老介護、大切な隣家のおじちゃんおばちゃんへ

  

〈依頼人プロフィール〉
飯森美代子さん 53歳 女性
長野県在住
行政書士

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隣に住む、母の一歳年下のおばちゃんは95歳、おじちゃんは92歳。2人とも顔の色つやもよく、互いにいたわり合って、これまで自立した生活を送ってきました。近所の人たちが「あんな風に年をとりたいね」と憧れる、ご長寿夫婦です。

ところが今年3月、家に行ってもおじちゃんしか出てこないので、てっきりおばちゃんは部屋の奥にいるのかと思っていたら、転んで背骨を折り、1カ月入院していたとのこと。心配させまいとしたのか、私も含め近所の人には入院を隠していました。あとで「ごはん、どうしてたの」と聞くと、「最初は失敗したけど、要領がわかってきたから大丈夫」とおじちゃん。そして退院後は、一人で立ち上がれないおばちゃんを介護しなくてはならず、介護されるのも介護するのも90代という、究極の“老老介護”が始まりました。

おばちゃんは、私にとっては第二の母のような存在です。子どもはおらず、私は幼い頃、よくご飯を食べにおばちゃんの家に行っていました。毎朝、我が家のヤギの乳も届けました。おばちゃんがうちでお茶を飲み、「さて、そろそろ帰るかな」と立ち上がろうとすれば、私が背中にまとわりついて、「行くな」と態度で示したそうです。また、気兼ねなくケンカできる唯一の人でもあります。3年前、母が亡くなり悲嘆に暮れていたときは、おばちゃんに支えてもらい、立ち直ることができました。

おじちゃんには、困りごとが起こるたび助けてもらいました。自動車免許取りたての頃、狭い道でうまく方向転換ができず、手に負えなくなったときは車を動かしてもらったり、農作業の道具の使い方を教わったり。ツバメのヒナを襲うヘビを退治してもらったことも数知れません。いつも嫌な顔をせず、快く力になってくれる頼もしい存在です。

今度は、私が2人に恩返しをする番だと思っています。「困ったことがあったら、夜中でも構わないから、遠慮なく言ってね」と声をかけながら、おしゃべりをしに行っています。

おじちゃんは90歳を過ぎた今も、冬は屋根にあがって雪下ろしをするほど元気ですが、さすがにそろそろ介護の疲れが出てくるはず。おばちゃんもけが以降、いまだに気落ちしています。

どうか2人を元気づけるために花束を作ってもらえないでしょうか。見てほっとできるような、野に咲く優しい花などでまとめてもらえるとうれしいです。世話をするのが大変かもしれないので、手をかけなくても長持ちする植物でお願いします。

  

花束を作った東信さんのコメント

90代のおじいちゃんとおばあちゃん、その後お二人はいかがでしょうか。「見てほっとできるようなお花を」とのことでしたので、今回はピンクとグリーンのやさしい雰囲気でまとめました。

ピンクの花は、ディサアーティスト、アルストロメリア、サラサドウダン、ナデシコなどです。グリーン&ホワイトはリョウブ、スカビオサなど。バイカウツギはまだつぼみの状態ですが、これから白い花が咲くはずです。

比較的長持ちするアレンジですが、できるときにオアシス(緑色の吸水スポンジ)に水を入れてあげてください。きれいに全体が枯れていくアレンジですので、花の姿をゆっくりと楽しんでくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

>>これまでの「花のない花屋」まとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

90代の老老介護、大切な隣家のおじちゃんおばちゃんへ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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