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こんな友人がほしいな。確かな味を知っている人。『箸もてば』

こんな友人がほしいな。確かな味を知っている人。『箸もてば』

撮影/馬場磨貴

今回は、石田千さんの『箸(はし)もてば』をご紹介します。石田千さんは、エッセーから小説まで、たくさんの作品を発表されています。日常の何げない感覚を、素朴でありながら、独自の世界観として投影できるところが魅力的な、人気の高い作家さんです。

本書は、『清流』(清流出版)に連載された『箸もてば』を軸に、様々な媒体で発表された食に関するエッセーをまとめたものです。

まずは、もくじから。「もうそ、」「おべんとさげて」「空豆紀行」と春を感じさせる章からはじまります。ところが、「三人姉妹」「うっすら、ぼんやり」「つるぬる姫」など、ハテ? と思うものもある訳です。もくじを見ているだけで、どんな料理が紹介されているのかワクワクしてきませんか?

料理の描写には、季節の空気が大きく含まれています。会社勤めの頃のおべんとうの味、旬の食材の味、旅先の味、実家の母の味、行きつけののみ屋の味。読み進めていくと、その場に一緒にいるような心地良い気分になるから不思議です。まったく同じ経験をしたはずはないのに、誰にでも起こりうる近しい体験が、そんな思いを想起させるのかもしれません。

千さんは、おいしく作り、おいしそうに食べる。あまり余計なことはせず、でも、長年の経験と食いしん坊の勘で「この味だ!」という感覚をキャッチできる。食べたこともないのに、「おいしい」が確定されていると信じられるのです。

こんな友人がほしいな。確かな味を知っている人。「おいしい」が研ぎ澄まされている人って、感じの悪い人はいないと思いませんか? ひとりで食べる、家族と食べる、友人と食べる、愛する人と食べる。「おいしい」は、きっと人を幸せにしてくれるはずです。

(文・大川愛)


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