花のない花屋

93歳、美しく華やかに 大好きな叔母へ

  

〈依頼人プロフィール〉
瀬川宏子さん(仮名) 57歳 女性
埼玉県在住
主婦

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叔母の兄は、鼻が高くて品のある顔立ちで歌舞伎の女形のよう、姉は「○○小町」と呼ばれるほどの美人さん。そして、3きょうだいの中で叔母だけが似ておらず、ちょっと違った顔立ちでした。

その叔母と一番よく似ていたのが、母。2人は下ぶくれの瓜実(うりざね)顔。教師をしていた母は、その叔母の家に幼い頃の私を預けていました。今はもう断片的な記憶しかありませんが、叔母の家族にたいそうかわいがられた思い出があります。

夫の転勤もあり、叔母とはしばらく疎遠になっていましたが、先日、何十年ぶりかに会ったときのこと。彼女のあまりの変貌(へんぼう)にびっくりしてしまいました。

今年93歳。たしかに年月分の年はとりました。でも、顔の輪郭が変化しているじゃないですか。パーツも兄と姉に限りなく似てきました。どうしたの? と衝撃を受けるほどのインパクト。人間、年を重ねることでこんなに美しく変わることができるんですね!

昔から叔母は宝塚の大ファンで「美しいもの、かわいいもの」が大好きでしたが、年とともに違った形でグレードアップ。通院している病院の楽しみ方がすごいんです。好みの顔だちの先生、きれいな看護師さんがいると、いてもたってもいられなくなり、抱きつくのだそう。叔母にとっての“お薬”みたいなものでしょうか。

日曜朝はケーブルテレビの宝塚の番組が楽しみで、開始前になるとテレビの前で正座をして待つそうです。正座をするのは彼女たちへの敬意です。

叔母は慎み深く、どちらかというとすぐ気に病むタイプだったのに、こんなにもアグレッシブに身も心も開放的になっていることに、びっくりしました。90歳にもなれば、誰でも気弱になりそうですが、そういう雰囲気は一切なし。むしろ美しくなり、生き生きしていて魅力的です。

人はいくつになっても変われるんだ、人生って素晴らしい! 捨てたもんじゃない! と私はしみじみ実感しました。今では叔母は私の希望の星です。

人生の素晴らしさを教えてくれた叔母へ、まだまだ元気でいてねという気持ちを込めて、東さんの花束を贈りたいです。叔母が大好きな宝塚の「ベルサイユのばら」の世界観でアレンジしていただけないでしょうか。

  

花束を作った東信さんのコメント

90代からパワーアップとは素晴らしいですね! 今回は叔母さまが大好きだという「ベルばら」をテーマにアレンジしました。

これまでもバラの花束は何回かありましたが、今回は7種類のバラを使っています。中心は緑色のレッドポンポンやスプレー咲きなど、咲き方、色、さまざまなものを選びました。真紅のバラ一色とはまた違う華やかな印象になりますね。

花の周りを囲んだリーフワークはアイビーです。白と緑色の複色なので全体が明るくなりますし、バラとも好相性です。そして、なんといっても“城壁にはうツタ”のイメージです。

今回のアレンジは、アイビー以外はそのままドライフラワーとしても楽しめます。ドライフラワーにしたいときは、1週間ほど生花を楽しんだ後、水をあげずに風通しのいい場所に置いてみてくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

93歳、美しく華やかに 大好きな叔母へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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