花のない花屋

本当は伝えたいありがとう 金婚式を迎える父と母に

  

〈依頼人プロフィール〉
板垣泰子さん 49歳 女性
神奈川県在住
会社員

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私はバツイチで、その後再婚した人と39歳で第1子を出産。そして3年後には第2子を出産しました。高齢出産でずっと働いているので、ことあるごとに近くに住む母を頼っており、子どもたちが小学生になる今も、週1回は自宅に来てもらい、ご飯を作ってもらっています。

普通ならさぞ両親に感謝しているだろうと思われるでしょうが、心ではそう思っていても、実際にはなかなか感謝の言葉が口に出せません。それどころか、忙しいときに電話をもらうと、ついきつい口調で「いま忙しいのよ!」と言ってしまうことも……。両親にいまだに甘えているのでしょう。

思い返してみれば、30歳くらいまで母とはケンカが絶えませんでした。「気が合わない」と言ってしまえばそれまでですが、幼い頃から母には反発ばかりしていて、褒められた記憶がありません。

母は何かにつけて「あなたは恵まれているから」と私に言っていましたが、後になって、もしかしたら戦争を経験している母は、子どもの頃から何不自由なく暮らしている私に嫉妬しているのかもしれない、と気づきました。逆に今は、私がずっと専業主婦だった母に嫉妬しています。なんだか私たち親子は時代を反映しているようです。

そんな母と“和解”したのは、29歳で離婚をし、実家に戻っていた頃でした。両親にはいろいろと心配をかけ、私も母の気持ちが少しずつわかるようになったのです。私がいまこうやって働きながら子育てをし、幸せに暮らせているのも、両親の支えがあったからこそ。「いつもどうもありがとう」。本当はそう伝えたいのです。

両親はこの5月で金婚式を迎えました。そこでこの機会に、2人に感謝の気持ちを込めて花束を贈りたいです。父はいつも優しく、クラシック音楽好き。母は社交ダンスが得意で、80歳になった今も毎週踊りに行っています。母がよろこびそうな、ビビッドな華やかさのある花束をお願いいたします。
 
  

花束を作った東さんのコメント

ご両親の金婚式とのことなので、“シックで大人っぽいカラフル”な花束にまとめました。

メインの花は胡蝶蘭(コチョウラン)の“ファレノプシス”です。お祝いなどでよく贈られる花ですが、こうやって短く切って挿すとイメージががらりと変わり、かわいらしくなります。

胡蝶蘭の後ろには、大きなダリアや小さなポンポンダリア、クルクマ、エピデンドラム、マリーゴールド、カーネーション、セダム、グリーントリュフなど、色とりどりの花をちりばめました。とはいえトーンを抑えめにしたので、カラフルなのに大人っぽい雰囲気です。

縁は、リーフワークの代わりにブラックベリーとビバーナムの実モノでぐるりと囲みました。これもシックな印象に一役買っています。板垣さんからの日頃の感謝の気持ち、伝わりますように……。

※当初「銀婚式」となっておりましたが「金婚式」の誤りでしたので、訂正いたしました。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

本当は伝えたいありがとう 金婚式を迎える父と母に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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