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幸せってなんだっけ?『世界幸福度ランキング上位13ヵ国を旅してわかったこと』

幸せってなんだっけ?『世界幸福度ランキング上位13ヵ国を旅してわかったこと』

撮影/猪俣博史

「あなたは今、幸せですか?」この質問に間髪入れずに「もちろん!」と答えられる日本人は一体どのくらいいるのだろう。かくいう私も、考え込んでしまう。幸せってなんだっけ。ドイツ人女性のマイケ・ファン・デン・ボームもそんな疑問をもった1人。これから紹介する『世界幸福度ランキング 上位13ヵ国を旅してわかったこと』の著者である。

本書は、OECDの幸福度調査でトップ13にランクインした国々を巡り「幸福とは何か」をリポートした渾身(こんしん)の一冊。ここでの13ヵ国とはすなわち、コスタリカ、デンマーク、アイスランド、スイス、フィンランド、メキシコ、ノルウェー、カナダ、パナマ、スウェーデン、オーストラリア、コロンビア、ルクセンブルクのこと。北欧と中南米の国が大半、それにヨーロッパの小国とオセアニア、北米の大国という縮図からは一体何が見えてくるのだろう。

彼女はこの旅を通じ、各国の専門家から市井の人々まで、述べ300人にインタビューを行った。彼女と旅を共にするように、私もまた本書を読み進めながら知らない誰かの幸福論に耳を傾ける。すると、自分のなかにも「あれ、もしかしたら幸せってこういうことだったんじゃないか」という感覚がよみがえり始めたのである。

幸せってなんだっけ?『世界幸福度ランキング上位13ヵ国を旅してわかったこと』

『世界幸福度ランキング上位13カ国を旅してわかったこと』 マイケ・ファン・デン・ボーム 著、畔上司 翻訳 集英社インターナショナル刊 2200円(税込み)

特に印象的だったのは、コスタリカの章に登場するカーチャ・エスキベル・ヌニェス。彼女は首都サンホセ郊外に建つ「掘っ立て小屋」のような家に子供たち4人と住んでいる。この掘っ立て小屋は実は不法建築物(!)で、となり村に住む父親は片腕を失ったために家族を養えない。水は隣人からもらっているし、子どもたちは国からの支援なしでは生活ができない。そんなカーチャに対し、著者マイケは普段は滅多にしない直截(ちょくせつ)的な質問を繰り出す。「これで幸せ?」

すると、カーチャは目を輝かせてこう答えたという。「もちろんよ。私たち、お金はないけど幸せだわ! 幸せになるには、落ち着いた暮らしと友達、それに家族がいればそれで十分。コスタリカは確かに貧乏だけど、私たちは幸せ。家族と神様がいるもの。」彼女の言っていることが、ほとんど全てだなと思った。幸せって、そうだ、そういうことだったはずなのに。今の日本では、それを実感することは、なぜだかとても難しい。なぜなんだろう?

お金があれば幸せなのだろうか。街にはあらゆるものがあふれ、私たちはいつでも何かが欲しい状態。効率化することが幸せなのだろうか。パソコンがあればもはや買えないものはなく、ロボットやAIは人間の代わりにたくさんのことができるようになっている。

もちろん、この国で私たちが受けている恩恵は多くある。それならばなぜ、こんなにも、私たちは窮屈なんだろう。私たちは、どうしてこんなに幸福を感じづらくなってしまったんだろう。私たちが目指すべきところはどこなんだろう……。胸に去来するたくさんの問いに、この本に登場する13ヵ国の人々は、皆それぞれの幸福論でときに静かに、ときに情熱的に私を諭してくれた。

(文・長谷川 彩)

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湘南 蔦屋書店 児童書コンシェルジュ。新卒で入った会社をたった1年で退職した後、北海道富良野でラベンダーに囲まれ半年を過ごす。滞在中「私には本しかない」と悟り、帰郷。現在は、選書集団BACHにも所属し、武者修行中。いつか直接お礼を言いたい命の恩人(=それはもう影響を受けた人)に松浦弥太郎、又吉直樹、西加奈子がいる。

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