花のない花屋

大親友は100歳、祇園の”おかあさん”へ

  

〈依頼人プロフィール〉
野原桃子さん(仮名) 20歳 女性
茨城県在住
大学生

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7歳の時から、10年以上も文通を続けている大親友がいます。彼女は80歳年上で、知り合ったときは7歳と87歳。この6月には100歳を迎えられました。

その大親友は、祇園のお茶屋さんの現役の“おかあさん”です。うちの母が12年前、京都新聞に「40年前に行った京都の修学旅行では、規則が厳しくて街を楽しめなかった。今度は楽しめる京都旅行をしたい」と読者投稿をしたのを読んで、「ぜひいらっしゃってください」と新聞社経由で手紙をくださったのがご縁の始まりでした。

実際に家族で遊びに行くと、本当に快く迎えてくれ、それからというもの、私と“おかあさん”は毎週のように手紙のやりとりをしています。また、毎年かかさず「都をどり」にもご招待してくださり、家族ぐるみで親しくさせていただいています。

政財界の大物や著名人を知り尽くしてきた“おかあさん”のお茶屋さんは、白州次郎さんが贔屓(ひいき)にしていたことでも知られ、花街のお店を今も女一人で守っていらっしゃいます。お父様は、蛤御門(はまぐりごもん)の変にもいきあわせたとかで、日本史の教科書にあるような話も出てくる楽しい方です。

6月に100歳を迎えられたときは、それまで年齢のことは考えたことがなかったそうですが、「まわりがあんまり大騒ぎするもんだから、なんやもう後がない気がして……」と悩みを打ち明けてくれました。

だから、聖路加病院の日野原重明先生のように、100歳を過ぎてもまだまだ現役で活躍できるよう、生きるパワーが出てくるような花束を作っていただけないでしょうか。

“おかあさん”はウィットに富んだ頭のいい人なのに、天衣無縫なおっとりしとした雰囲気を漂わせています。星空が大好きで、「祇園は星空が見えない」といって、90歳を過ぎてから星を見に南半球にも行ってらっしゃいました。また、女学校のときに因数分解をわからないまま卒業したから、「覚えるまで逝けない」と、私に因数分解を教えて欲しいと言ってきたこともあります。

そんな好奇心旺盛でステキな“おかあさん”に、星空や宇宙、連綿と続く生命を思わせるような花束をお願いいたします。

  

花束を作った東さんのコメント

テーマはまさに“星空の花束”です。星空がテーマなので、選んだのは“ブルースター”や、花の根元が星のような形の“エリンジウム”、銀河を彷彿とさせる“スターチスのブルーファンタジア”。さらに、トップには星のような形の多肉植物を挿しました。ブルーファンタジアはかなり久しぶりに使いましたが、今回新しい魅力を発見した気がします。

リーフワークは黒いブラックタイを使い、夜空や宇宙をイメージしました。“おかあさん”はきっとこれまでいろいろな花束をもらってきたでしょうから、少しアバンギャルドでもいいかなと思い、思い切ったアレンジに挑戦してみました。

ブルースター以外はこのままドライフラワーにもなります。ぜひ長く楽しんでくださいね。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

大親友は100歳、祇園の”おかあさん”へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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