ほんやのほん

売れている料理本はなぜ、おいしそうなのか? 『料理書のデザイン』

撮影/猪俣博史


撮影/猪俣博史

『料理書のデザイン』 COOK CORP 鈴木めぐみ編 誠文堂新光社 3456円(税込み)


『料理書のデザイン』 COOK COOP 鈴木めぐみ編 誠文堂新光社 3456円(税込み)

 毎朝、書店には新刊書籍が大量に届く。もちろん日々、新しい料理の本もいくつも届く。正直、「よくぞこれほど多くの料理本が出版されるものだな」と驚いてしまうほどだ。とはいえ、その中で3年、5年、ましてや10年、20年残っていく本はほんの一握りだ。

 ロングセラーになっている本には、やはり納得できる理由がある。見ているだけでよだれが出てしまう「おいしそう!」と思わせる写真があり、何より自分にもつくれそうという気にさせる何かがあるのだ。

 何かってなんだろう? なぜ、おいしそうに見えるのか、どうしてわかりやすいのか。
 それに対するひとつの答えを出してくれているのが、今回取り上げた本『料理書のデザイン』だ。この本は、編者の鈴木めぐみさんが「長く愛され続けている本には、デザインの力が大きく作用しているのではないか?」と考え、ロングセラーの料理本100冊を中心に、そのデザイナー(アートディレクター)にインタビューをしてまとめたものだ。

 本のデザイナーの仕事は、ごく簡単に言ってしまえば、編集者から写真や原稿をもらって割り付けていくことだ。ただし、写真、文字の大きさや配置、字体(フォント)選びや組み合わせ、色づかい、紙質など、そこには実に多くの要素が存在する。
 しかも、そもそもその前に、本の内容やコンセプトを著者や編集者と共有し、ビジュアルイメージを決めないと、そうした細かい作業はスタートできない。どうやったら伝えたいことをいちばん効果的に伝えられるか。デザイナーとともに、著者、カメラマン、スタイリスト、編集者というチーム全体で伝えたいことを研ぎ澄ましていく。

 インタビューを読んでいると、「なぜそのデザインなのか」という大きなところから、「なぜその字体を選んだのか」というディテールひとつひとつにいたるまで、すべて理由があり、それを通して伝えたいことがちゃんとあることがよくわかる。
 あるデザイナーは、著者の料理をつくる現場そのものを再現しようとし、別のデザイナーは、著者の性格までも表現したいと話す。また、写真や文字にとどまらず、ページを繰る紙の感触や風合いから著者の世界観が伝わる、と語る人もいる。
 とはいえ、多くのデザイナーが共通して、「結局いちばん大切なのは、おいしそうに見えること」と言っているのは、当たり前といえば当たり前だが、やはり大前提なのだなあとあらためて思う。中でも多くの料理本を手がける人気デザイナーの有山達也氏の言葉が印象的だ。

 「読みやすいというのは大事だと思うけれど、『おいしそう』とか『作ってみたい』という動機で料理本は買われるものです。そういうところをきちんとしていかないと。表層的なデザインだとバレちゃうっていうか、本として長く続いていかない。読者の目も厳しいですよ」

 デザイナーが込めた思いは表立って伝わらないほうが、本としては成功なのだろう。だが、たまにはそんなことも考えながら料理本を眺めてみるのも、おもしろいかも知れない。

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蔦屋書店 コンシェルジュ

12人のブックコンシェルジュの皆さんに、
そのとき、一番おすすめの本を週替わりで熱くご紹介いただいています。
●代官山 蔦屋書店
間室道子(文学)
●二子玉川 蔦屋家電
岩佐さかえ(健康 美容)/大川 愛(食)/北田博允(文学)
嵯峨山 瑛(建築 インテリア)/中田達大(ワークスタイル)/松本泰尭(人文)
●湘南 蔦屋書店
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八木寧子(人文)/若杉真里奈(雑誌 ファッション)

武富葉子(たけとみ・ようこ)

湘南 蔦屋書店 料理・暮らしコンシェルジュ。料理を中心に、暮らしの本や雑誌の編集に二十数年携わったのち、思うところあって売る側へ。現在は料理だけでなく、手芸の楽しさを広めるべく、書店の枠を超えて活動中。通勤電車での編み物が小さな楽しみ。

幸せってなんだっけ?『世界幸福度ランキング上位13ヵ国を旅してわかったこと』

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未来の幸福な読者のために。3冠作品『紙の動物園』

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