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<72>グッズも充実、タイポグラフィの楽しさを伝える店

<72>グッズも充実、タイポグラフィの楽しさを伝える店

店の看板、道路標識、広告、駅の案内板……。世の中は文字であふれている。

「街の中は文字だらけです。駅の案内板を一つとっても、どんな文字を使うかを考えて作られています。文字って、わかってくると面白いんです」

そう話すのは、学芸大学駅から徒歩約4分の住宅街の一角にある「BOOK AND SONS」オーナーの川田修さん(41)。タイポグラフィを中心としたグラフィックデザインの専門書店をここにオープンさせたのは2015年5月のこと。

タイポグラフィとは、適切な書体を選んで読みやすさを考えて美しく文字を配置したり、文字を華やかに、アートのようにデザインしたりすること。本業がデザイナーの川田さんは、そのキャリアをwebデザインからスタートさせた。

「大学はデザイン系ではなかったし、専門的な勉強をしないままデザイナーになったので、それがコンプレックスでした。それでタイポグラフィの本を集めて勉強しはじめたんです」

勉強のために買い集めた本は、いつしか和洋合わせて1000冊を超えていた。ところが自宅を引っ越すことになり、本の置き場が問題に。たまたま同じ時期に事務所のための物件探しでこのビルを見つけ、1階を本屋にしてしまおうとひらめいた。

少し調べてみたところ、アート系の書店はあるものの、意外にもグラフィックデザインやタイポグラフィの専門店がないことに気づいた川田さん。自分がこれらの本を頼りにデザインを学んでいったように、デザインに携わる人に役立つ空間にしたいと考えた。

店内デザインは川田さんが手がけた。自身が所有していたジャン・プルーヴェの「ポテンス ウォールランプ」を軸に空間を創り上げていった。本棚は、webデザインのクライアントでもあったオーダーメイド家具工房のAS.CRAFT(アズクラフト)が設計。店の奥には、ギャラリースペースを設けた。コーヒーショップ「BOOK AND STAND」も併設し、オリジナルブレンドコーヒーを味わうこともできる。こうして、本や雑誌を手に取り、落ち着いて過ごせる空間が完成した。

当初は川田さん所蔵の古書のみだったが、客が持ち込んだ古書を買い取ったり、国内外の出版社とのつながりができたことで新刊本も扱うようになったりと、品ぞろえも少しずつ広がっていった。

「古書の値付けなんてしたことがないので、『これくらいかな』と自分の感覚で値段を決めていたら、お客さんに『これは安すぎるよ』と言われたこともありました。デザイン関係のお客さんが多く、本についても僕が逆に教えられることもよくあるんです」

店の一角には、しおりやボールペンなどのオリジナルグッズや、タイポグラフィ関連グッズが並び、店のwebサイトでも販売する。

「オリジナルグッズ作りは、半分は僕の趣味ですね(笑)。活版印刷を手がけているFIRST UNIVERSAL PRESSさんに依頼して、異なる欧文書体をあしらったしおりを6種類作ってみました」

こうしたグッズはデザインやフォント好きにはたまらないようで、本と一緒に買っていく人も多い。

「文字ってひと手間かけて選ぶ書体を変えたり、整えたりするだけで見ばえががらりと変わります。タイポグラフィのことは詳しく知らなくても、文字を読まない人はいないはずなので、ここで新たな発見をしてもらえたらいいなと思っています」

■おすすめの3冊

おすすめの3冊

『大阪万博1970 デザインプロジェクト』(東京国立近代美術館/編)
東京国立近代美術館で2013年に行われた展示の図録。大阪万博を成功に導いたデザインワークとプロセスを振り返る一冊となっている。「大阪万博のコンペ内容が記されています。時代背景とデザインが密接に関わっていることがわかりますし、文字以外のデザインについても記されているので、広く興味を持ってもらえるのではないでしょうか」

『これ、誰がデザインしたの?』(渡辺千春/著、「デザインの現場」編集部/編)
日本の普遍なるデザインをテーマに、どこかでみかけたことのあるデザインに目を向け、誰がどのようにデザインしたのかを探る。「誰もが知っているモノのデザインを掘り下げた一冊です。こちらもデザインのことをあまり知らない人にも面白く読んでいただけると思います」

『定番フォントガイドブック』(タイポグラフィ編集部/編)
和文・欧文の定番フォントなど約700種類の定番フォントの組見本を収録したガイドブック。「和文と欧文を組み合わせたサンプルも載っていて、すごくわかりやすいです。組版の基礎知識や欧文書体の用語解説のページもあって、デザインやタイポグラフィ初心者にもおすすめです」

(写真 山本倫子)

    ◇

BOOK AND SONS
東京都目黒区鷹番2-13-3 キャトル鷹番
http://bookandsons.com/
https://twitter.com/bookandsons

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PROFILE

吉川明子

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体に週刊朝日、アサヒカメラ(「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、婦人公論、BRUTUS、mi-molletなど。
https://www.instagram.com/a_yoshikawa0227/
https://note.mu/akikoyoshikawa

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