花のない花屋

苦労の末の転職、幸せをつかんだ友達に

  

〈依頼人プロフィール〉
村田鈴香(仮名)さん 32歳 女性
兵庫県在住
会社員

彼女はインナーのデザイナーで、私は発注を受ける部署の仕事。部署は違いましたが、不思議とウマが合い、仕事帰りにおしゃべりをしたり、休日も買い物やカフェに行くような間柄でした。私は出無精なところがあるので、誘ってくれるのは決まっていつも彼女でした。

話す内容は仕事のことがほとんど。小さい会社だったので、会社全体の話をしたり、今後どうしようか、と不安を打ち明けたり。彼女は2歳年下でしたが、大学生の頃から一人暮らしをしているためか自立していて、考え方も大人。いつも明確な目標があり、彼女と話すことによって私も「このままでいいのかな」と刺激を受けてきました。

数年前から彼女は仕事で上司とぶつかることが多く、現場で守ってくれる人もいなかったため、かなりつらい思いをしていました。「もう会社に行きたくない」と当時の恋人に相談していたこともあったようです。

結局苦しんだ末、「もっとデザイナーとしての能力を上げたい」と退職。突然のことだったので、会社としてもちゃんと彼女を送り出すことができず、なんとなくそのままでした。それもあって、私が連絡をすると会社を思い出させてしまうかも……と思い、こちらから連絡をするのを躊躇(ちゅうちょ)していました。

でも、今年年賀状をもらったのをきっかけに連絡してみると、久しぶりに会うことに。相変わらず転職先でも頑張っていて、以前からつきあっていた恋人と7月に結婚したと聞きました。

大人っぽくておしゃれな彼女は、東さんのファンで、写真集を持っていると聞いたことがあります。そこで、つらいことを乗り越え、幸せをつかんだ彼女に、結婚祝いの花束を作っていただけないでしょうか。白とグリーン、もしくは彼女のイメージカラーであるオレンジやイエローでまとめていただけるとうれしいです。東さんのファンなので、東さんならではの結婚祝いのアレンジをお願いします。

  

花束を作った東さんのコメント

結婚のお祝いとのことでしたので、ストレートに白とグリーンでみずみずしい花束にまとめました。

メインの花は白い八重咲きのユリです。広く出回っているヤマユリはかなり大振りで迫力がありますが、今回使ったのは小振りの“マイウェディング”という種類。花弁が多く、小さいのに華やかで、どこか気品があります。以前このマイウェディングだけでブーケを作ったことがありますが、とてもきれいですよ。

ユリの周りには白い小花をたくさんちりばめました。アガパンサス、アスチルベ、ベロニカ、クレマチス……どれもかわいらしい雰囲気の花です。アクセントにライトグリーンのトルコキキョウをしのばせ、サンキライの実と葉、ポリシャスのグリーンで囲みました。
大人っぽい上品な雰囲気でまとめ、ストレートにお祝いの気持ちを表しました。村田さんの祝福の気持ちが伝わりますように。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
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花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

苦労の末の転職、幸せをつかんだ友達に

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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http://azumamakoto.com/

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

父に続いて母までも、病気を抱えた両親へ

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寝たきりの私を世話してくれる母へ 「ありがとう」

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