花のない花屋

ストーカー被害を乗り越えて 支えてくれた年下の彼へ

  

〈依頼人プロフィール〉
山本ゆきえさん(仮名) 27歳 女性
会社員

知り合って1年、付き合って半年の彼には、精神的につらいときに支えてもらいました。一つ年下ですが、私にとってはかけがえのない大きな存在です。

実は、20代前半から4年ほどつきあっていた元彼がとても大変な人でした。ひと回りほど年上だった彼は、徐々に私に対するもの言いが強くなり、何かの拍子で怒りはじめると止まらず、説教が数時間も続くことがあり、最初は彼にただ従ってきた私もだんだんと耐えられなくなってきました。まるで彼に洗脳されていくようで、友達には「とにかく逃げて」と言われました。

そして、あるときついに私から別れを告げると、今度は手のひらを返したように「自分が悪かった」、「やり直したい」という言葉……。電話もメールも無視し続けていると、どんどんストーカーのようになっていき、そのうち自殺をほのめかすように。私は1人で家にいるのも怖くなり、警察に被害届けを出しました。

そんなときに思い出したのが、当時友達だった今の彼です。この話をしたら引かれるかもしれない……と思いながら思い切って打ち明けると、驚きながらも「話すことで楽になるなら、いくらでも聞くよ」と受け止めてくれました。

そこからふっと心が軽くなった気がして、毎日電話でいろいろな話をするようになりました。恐怖で耐えられないというときも、彼はいつも話を聞いて慰め、励ましてくれました。

その後付き合いはじめて、遠距離なので数少ない会える日を大切に過ごしています。彼と一緒になってからも元彼から連絡がきて、当時の悪夢でうなされ、自分の叫び声で目が覚めたり、急に恐怖に襲われたりすることは今でもあります。でも、どんなときも私を受け止め、近くにいられない悔しさをにじませる彼の声に、私は本当に救われているし、体はそばにいなくても、心はいつも寄り添ってくれているような気がします。

思えば、そんな彼にきちんと「ありがとう」を伝えたことはない気がします。もうすぐ彼の誕生日、初めて一緒に迎える誕生日です。これを機に日頃の感謝の気持ちと、これからもよろしくという思いを東さんのお花で伝えたいです。
会社員4年目の一人暮らしなので、手入れが簡単なグリーン系でまとめて、私も彼も好きな青い花をポイントで入れていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。

  

花束を作った東さんのコメント

「手入れが簡単なグリーン系で」というご希望に沿い、今回は全体をグリーンでまとめました。

青い花を入れる代わりにハスの実をアクセントにし、アンスリウム、リリアルプ、キク、ナデシコ、グリーンローズ、ヤツデの実、ポリポジューム、エアープランツ、パフィオペディラム、グロッパ、ユリのつぼみ、カーネーションなどを入れています。食虫植物のサラセニアとウツボカズラも3つ入っています。

同じグリーンとはいえ、質感も形もいろいろ。“華やかな”グリーンの花束で、ストレートに感謝の気持ちを表しています。男性の一人暮らしとのことですので、仕事から帰ったらぜひじっくり一つ一つ見てみてください。きっと楽しめると思いますよ。

  

  

  

  

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

ストーカー被害を乗り越えて 支えてくれた年下の彼へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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http://azumamakoto.com/

 

PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

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