花のない花屋

15年間、私を支えてくれた長男へ

15年間、私を支えてくれた長男へ

〈依頼人プロフィール〉
藤原佳乃さん 44歳 女性
千葉県在住
パートタイム

    ◇

 私は長男が小学校1年生のときに離婚し、その後再婚しました。そして、立て続けに弟と妹が誕生。まだまだ甘えたいであろう時期に子育てに追われ、息子には寂しい思いをさせてしまいました。

 そんな中、彼はいつも「ママ、大丈夫?」と気遣ってくれ、自分から弟たちのおしめを換えたり、ミルクをあげたりと、疲れきった私を精いっぱいサポートしてくれました。

 彼は学習障害、多動性障害と診断されており、小学校から中学校までは特別支援学級に入っていました。人の3倍も4倍も努力しないと何かを覚えることができませんでしたが、毎日毎日必死で勉強し、私には何一つ心配をかけることなく、何でも一人で最後までやり通しました。

 そして気づけば、身長は180センチにまで伸び、大きくたくましく、それでいてとても優しい、情け深い人間に育ってくれました。

 この春、中学校を卒業したときには、息子から手紙をもらいました。「ママ、お願いがあります。僕はもう半分大人(笑)、半分子どもだけど、もう大丈夫。下の子どもたちをもっともっと可愛がってあげてください」。そんなことが書かれていました。

 特別支援学級から普通高校への入学は到底無理だと言われていましたが、本人は「普通高校に行きたい」と努力し、この春、希望の高校に合格しました。発表の日、声をあげて泣いてしまった私に、「ママ、恥ずかしいよ」と言いながら、私と一瞬抱き合ったね。握手したね……。お兄ちゃんがいたから、私もここまで来られたのだと思っています。この15年間、支えてもらったのは私でした。

 今、息子は調理師になるという夢を追いかけながら、毎朝5時に起きて剣道の朝練に通い、夜中まで勉強しながら、何事にも一生懸命取り組んでいます。

 いつもまっすぐ前に向かって生きてきた息子。本当にありがとう。寂しい思いをさせてきた分、ママはこれからもあなたを心から、陰ながらずっと応援したいと思っています。

 そんなママからの感謝とエールを込めて、彼に花束を贈りたいです。息子には「まっすぐに、ブレずに伸びている」というイメージがあります。芯の強さを観葉植物など地に足の着いた植物で表し、そのまわりに彼の気持ちのやさしさを象徴するような、かすみ草などのやさしい花で取り囲むアレンジをお願いできないでしょうか。一生に一度のことだと思い、思いの丈をつづらせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

15年間、私を支えてくれた長男へ

花束を作った東さんのコメント

 今回はお母様の気持ちをストレートに表したアレンジです。地に足を着け、まっすぐに伸びるガジュマルの木を中心に、まわりはすべてかすみ草でアレンジしました。

 ガジュマルは有機的な木の根の形が魅力的です。「多幸の木」とも呼ばれ、世界各地で“精霊が宿る木”とも考えられています。生命力が強いので、これからもどんどん伸び、生き生きとした葉っぱをたくさんつけるでしょう。植え替えればずっと育てられますので、しばらく楽しんだら土に移してみてくださいね。

 かすみ草は一つ一つの花が大きい品種です。シンプルなアレンジにしたことで、それぞれの良さが引き立ち、一つの風景が立ち上がりました。どうかこれからも夢に向かって、まっすぐに生きていってください。

15年間、私を支えてくれた長男へ

15年間、私を支えてくれた長男へ

15年間、私を支えてくれた長男へ

15年間、私を支えてくれた長男へ

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

15年間、私を支えてくれた長男へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

病気をきっかけに気がついたお互いの思い、元彼へ

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心のなかで生き続ける、赤ちゃんの虹介へ

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