花のない花屋

まさか友達になるとは……。いまでは「心友」の彼女へ

まさか友達になるとは……。いまでは「心友」の彼女へ

〈依頼人プロフィール〉
佐山里子さん 32歳 女性
千葉県在住 会社員

    ◇

 私が彼女と出会ったのは、今から10年前の入社式のときのことです。ふつう、新入社員は目立たないような服装の人が多いのに、彼女は茶髪のパーマで、服装も派手。スパスパとたばこを吸う姿に、「この人とは縁がないな」と思ったのが第一印象でした。

 しかし、それから2カ月ほど経った頃、父に重大な病気が見つかり、ある日とうとう堪えきれずに会社の給湯室で一人泣いていると、「お前、大丈夫か?」と声をかけてくれたのが彼女でした。サバサバしていて、いつも男っぽい言葉遣いなのですが、彼女はずっと私の話を聞いてくれ、「うんうん」と相づちを打ちながら、一緒に涙を流してくれました。

 それをきっかけに私たちは仲良くなり、10年の間にたくさんの思い出を共有しました。あるときは海外旅行に一緒に行ったり、あるときは夜通し会社のグチを話したり、またあるときは会社の資格試験のために一緒に徹夜をしたり。彼女は今では、私の人生になくてはならない「心友」です。

 そんな彼女は昨年の秋に会社を辞め、新しく自分の会社を立ち上げました。仕事のために一人で引っ越しをしなくてはいけなくなり、夫とも別居。短い間にめまぐるしく環境が変わりました。

 一見サバサバしているようで、相手の意見をよく聞く彼女は、経営者としては優しすぎるのか、毎日つらい思いをしているようです。社員のためによかれと思って何かをしても、結局はすぐ辞められてしまったり……その度に少なからず傷つき、最近自信を失ったような弱々しい言葉も口にします。

 そんな彼女に、「あなたは誰よりも素晴らしい人物だから、どうか自信をもって」「優しいあなたのままで、理想を突き通して」というメッセージをこめて、花束を贈りたいです。

 彼女の好きな花はユリ。私から見たイメージは「オレンジ色の太陽」です。今は少し弱っていますが、本来は明るく力強い女性です。濃い色のコントラストがはっきりした、エネルギーあふれるアレンジをお願いいたします。

まさか友達になるとは……。いまでは「心友」の彼女へ

花束を作った東さんのコメント

 ご友人が好きなユリを使い、“オレンジ色の太陽”をそのまま花束にしました。

 使用したのは黄色とオレンジ色のスカシユリ。普通のユリより小ぶりで、とても上品に花を咲かせます。今は黄色いユリだけが咲いていますが、時間が経つにつれて少しずつオレンジ色も混ざってくるはずです。

 コントラストがはっきりしたアレンジをご希望でしたので、シンプルにユリだけでまとめ、まわりは濃いグリーンのハランを使ったリーフワークでまとめました。
 色を絞ったことで、ユリがより際立っています。

 親友に対する佐山さんの思いをそのまま花束に込めたつもりですが、いかがでしょうか。どうか自信を持って自分の選んだ道を進み、大きな花を咲かせられますように。

まさか友達になるとは……。いまでは「心友」の彼女へ

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まさか友達になるとは……。いまでは「心友」の彼女へ

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

まさか友達になるとは……。いまでは「心友」の彼女へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

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