野村友里×UA 暮らしの音

人の生命のこと。火を使って、命をいただくこと。

  

東京・原宿のレストラン「eatrip」を主宰するフードディレクターの野村友里さんと、歌手のUAさんの往復書簡。今回は「火」をテーマにしながら、野村さんがお手紙を書きました。

>>UAさんのお手紙からつづく

うーこ

お手紙ありがとう!
なんていうか不思議だな
距離があることでぐっと近くに感じることがあるのね。

そして言葉、
“言葉”がこんなにも心地よくすんなりと入り
確認しあっている会話のごとく展開していく内容にも
なんだか感慨深いものがありすぎて幸せを感じてしまったわ。

そう
“死合わせ”
私もこの濃縮な数年を振り返ると
喜びも悲しみも、これまで味わったことがないほど味わい、
たくさんの感情に揺さぶられた。

そして先日は内面だけではなく
事故にあって救急車で運ばれて危機一髪
“死”を免れる体験までしたという。。。

心身ともに魂が剥き出しになるような経験を積んで
少しずつ時間が経っていくと
大事なことに気づかされることが多くてね。
全てを飲み込むと、ギリギリのところで結局穏やかな感謝の気持ちの方が残るの。
ただ生きてるということだけで感謝する気持ち。

お陰様で生きるヒダが広がったように感じるし
今まで意識していなかった“無常”という言葉が
自分の中ででてくるようになったりもした。
だからこそ
“今”をとてつもなく愛おしく感じるようになったし
過去でも未来でもなく
“今”が後ろにも先にも繋がってゆくのだな~と改めて考えるようになった。

そしたら
うーこの言うように人・人・人という波を
前より意識しなくなって
矛先は自然や動物、季節、自然、原始的なものにより心が動き
自分は銀河の中のほーんの小さな点でしかない存在ということ。
とても気が楽になってしあわせに感じてきたりしてね。
大袈裟かしら。。。。。

私は人間としての成長はだいぶスローだと自覚しているのだけど
今“人”としての自分に興味をもちはじめたのかもしれないと思ったところに
うーこが出会った山口の窯元の方の言葉
『人間の時代は終わったんです。人間は人(ヒト)となるときがもうとっくに来てるんですよ』
の言葉でグッときたの。
もっと剥き出しの
人としての感覚を強く感じないと
お腹の底から
もしかしたらそれは“無意識”という域なのかもしれないけど
大事にしないとなと。

稲葉俊郎先生も寄稿している『無意識の整え方』(前野隆司 著/ワニブックス)


稲葉俊郎先生も寄稿している『無意識の整え方』(前野隆司 著/ワニブックス)

うーこも参加できることになった
年末の「食の鼓動」というパフォーマンスは
まさにもう一度、生命の中の一つである、私達“人”の生命の素晴らしさを
たくさんの人達と感じ合えたらという試みなの。

他の多種の生命を食材として、火を使い水を使い器を使い料理をする。

これは私が感銘を受けている食のジャーナリスト
マイケル・ポーランが強く唱えていることなのだけど
人は料理をすることによって進化してきた。

そしてそのたくさんの生命から作られた料理を食し
体内にとりいれ “心身”の糧に変えられる人としての力

これを伝えるには
音はとっても大事。

食は口から体内に入るけど
音も体全体
皮膚を通して入ってくからね。
そしてまた逆に自分の体を通して外に発することもできる
まさに外と内の呼応を“音”はできるから凄い。

『人間は料理をする・上: 火と水』(マイケル・ポーラン 著/NTT出版)‎


『人間は料理をする・上: 火と水』(マイケル・ポーラン 著/NTT出版)‎

映画「未知との遭遇」のシーンで
地球人が宇宙人に送るメッセージが
モールス信号で送る、ピポパポっていう音楽だったでしょ。
あのシーンが、地球をイメージする象徴的なシーンとして私には強く残っている
地球で人々はどんな暮らしをしているの?って聞かれたら、
人はどの時代も料理し食べ、寝そべったり踊って歌う生き物って
私は言ってしまうだろうなと。
以前、月から見た
”地球の出” “地球の入り”
映像を見た時、そのあまりの美しさに思わず涙がでるほど感動してね。

無味乾燥
なーんにもない、色も水も風もないだろう月面の世界に
真っ青な
息をのむほどの美しい地球が浮かびあがってくるの。
もし月に住んでいたら
絶対あの星に行ってみたいって思わずにはいられないはず。
だからもしうーこがオリオン座にいて地球をみたら
きっと号泣だろうなーってつい思ってしまったわ。

NHK VIDEO 月周回衛星「かぐや」が見た月と地球~地球の出 そして 地球の入~(ポニーキャニオン)


NHK VIDEO 月周回衛星「かぐや」が見た月と地球~地球の出 そして 地球の入~(ポニーキャニオン)

と、せっかく今回は“火”について話したいと思って、うーこに宣言していたくらいなのに
思わずうーこの手紙を読んでいたらいろんな感情が吹き出してしまった。

ちなみに
年末の「食の鼓動」ね(何度も出てきてしまうけど!)
火の要素は欠かせなくてね。
もちろん料理人としてもだけど
人は火をつかって進化したから今回のテーマにも不可欠。
血なまぐさい肉が焼かれることによって
美味しそうな匂いと香りまで変わるのだからね。

今回演奏してもらうことになっている
うーこの仲良し
ささたくやくんは、高知は四万十に住んでいて
基本火を使わない料理を作って食べているのだけど
最近火を使うようになったと訪ねた時
蒔(まき)の窯で火をつけて料理してくれたの。
火加減の調整が難しいからと
大きな鉄鍋の真ん中、隅の方などをうまく使いながらね。
四万十の近所に住んでいる
木工作家・荒井さんのおうちもそういえばガスがなかった。
夕ご飯をご馳走になったのだけど
目の前で採った魚を焼いて
みんなで作った餃子を、暖をとるストーブの上で焼く。

火をおこすものを探し
火をつけて
火加減しながら料理をする暮らし

  

もちろん先日カリフォルニアで起こった
大規模な山火事のように
全てを焼き尽くしてしまう恐ろしさもあるけど
私がインターンした先のレストラン
Chez Panisseをはじめ
ガスも使うけどメインの食材は蒔で焼くのが主流のレストランが多いの。

火から学ぶ事はたくさんあるのだけど
調理だけでなく
ロウソクの炎の一定でない揺らぎは心が落ち着くし
オレンジの光は料理を美しくみせてくれもする。
昔、両親が持つ山の家のお風呂が五右衛門風呂だったのだけど
蒔と一緒にみんなで小枝を拾ってふうふう燃やして
お風呂を焚く人と入る人に分かれるの。
小さな頃の記憶なのだけど、未だにあのお湯の熱さは
違ったなって思いだす。
火がある暮らしの大切さを今考えているところ。

火といえば
うーこは語ることがたくさんあるはず!

うーこの年末の舞台のパフォーマンスの中で、一番は
たくさんの生命からできた料理を“頂きます!”という感謝の祈りの歌!
それを、いらしてくださる皆さんと作りあげられたらと。

・・・・どうしても年末の舞台に結びつけてしまうわ、、
私ったら。。
なので、最後にもう一押しで
うーこの言う、
大好きなミヒャエル・エンデのモモからの一節
「光を見るために目があり、音を聞くためには耳があるのと同じに、人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、その心が時間を感じとらないようなときは、その時間はないも同じだ」

そんな心が動く時間になりますように。
だいすきだな~うーこ
ありがとう。

友里

「食の鼓動-inner eatrip」

ライブパフォーマンス「食の鼓動-inner eatrip」

野村友里さん企画・演出によるライブパフォーマンス「食の鼓動-inner eatrip」が12月28日(木)~30日(土)、東京・青山のスパイラルで開催されます。

食をもとめる生命の鼓動に耳をすませ、身体の記憶を呼びさます、(食べない)食の三夜連続ライブパフォーマンス。音楽家、料理家、ダンサー、医学博士、デザイナー、陶芸家、映像作家など幅広いジャンルのクリエーターや各界のプロフェッショナルの協演により、「食」によって形づくられる身体の「鼓動」、臨場感あふれるパフォーマンスを展開します。
また、関連企画として、野村友里さんディレクションによる特別展示のほか、稲葉俊郎医師と出演アーティストによるトークセッションも開催されます。

詳細はこちら

PROFILE

  • UA

    1972年大阪生まれ。母方の故郷は奄美大島。1995年デビュー。1996年発表のシングル「情熱」が大ヒット。2000年、ブランキー・ジェット・シティを解散した浅井健一とAJICOを結成。同年、初主演映画「水の女」(テサロニキ国際映画祭グランプリ受賞作品)公開。2003年から放送されたNHK教育テレビ番組「ドレミノテレビ」に、歌のおねえさん「ううあ」としてレギュラー出演。2004年、数々の童謡・愛唱歌を集めた、ううあ名義アルバム「うたううあ」をリリース。2006年、菊地成孔とスタンダードジャズアルバム「cure jazz」をリリース。2010年、デビュー15周年企画カバーアルバム「KABA」をリリース。2016年、7年ぶりとなるオリジナルアルバム「JaPo(ヤポ)」をリリースした。また、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中。現在はカナダに居住。4人の母でもある。α-STATION(FM京都)の番組「FLAG RADIO」にレギュラー出演中。

  • 野村友里

    料理人(りょうりびと)、「eatrip」を主宰。おもてなし教室を開く、母・野村紘子さんの影響を受けて料理の道に。主な活動に、レセプションパーティーなどのケータリングフードの演出、料理教室、雑誌の連載、ラジオ番組など。2009年、初の監督作品『eatrip』を公開。11年、「シェ・パニース」のシェフたちとともに、参加型の食とアートのイベント「OPEN harvest」を開催。その経験を経て日本のシェフたちとともに「nomadic kitchen」プロジェクトをスタート。12年、東京・原宿に「restaurant eatrip」をオープン。著書に『eatlip gift』『春夏秋冬 おいしい手帖』(マガジンハウス)、『Tokyo Eatrip』(講談社)、共著に『TASTY OF LIFE』(青幻舎)がある。
    http://www.babajiji.com/

ヒトにとって「時間」ってなんだろう

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火と暮らすこと。土に帰ること。

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