相棒と私

シシド・カフカさん 出会いは「君、歌ヘタクソだね」

シシド・カフカさん


シシド・カフカさん

友だちとも、恋人とも違う、同じ目的を共有する「相棒」とはどんな存在? 「相棒」との大切なエピソードを語っていただく連載「相棒と私」がはじまりました。

私:シシド・カフカ(歌手・ドラマー・女優)
相棒:平出悟(サウンドプロデューサー)

第1回は、ドラムボーカリストで女優としても活躍するシシド・カフカさん。黒髪のストレートロングヘアを振り乱しながらドラムをたたき歌うその姿は、見ている人に強烈な印象を残す。最近では、そのトレードマークの髪をバッサリと50cmも切ったことが話題になった。そのシシド・カフカさんが相棒として挙げるのは、デビュー前から一緒に作品作りをしている、サウンドプロデューサーの平出悟さん。どんな場面でも彼の前では「絶対に泣かないと決めている」という関係について聞きました。

ダメもとで歌ってみようと決めてから

出会いは12年前、友だちに誘われてついていった、女性ボーカリストのオーディション会場だった。「一流のミュージシャンに会える機会なんてめったにないから」と言われて、ドラマーとしてのチャンスがあればという気持ちで友達について行った会場にいた平出さんに「君も歌ってみない?」と言われて歌った。聞いていた平出さんは、終わるとひと言、
「君、歌ヘタクソだね。いいねぇ。一緒にやってみない?」

「このドラムセットが見えますよね? わたしドラマーですけど、と、心の中で思っていました(笑)」
平出さんは雲の上のような存在だったし、もちろん自信もなかった。でもこの人たちと作品を作れたらおもしろそうだなと、ダメもとで歌ってみようと決めた。

それから、平出さんに「コテンパンにやられました」という日々が始まった。

歌うことは初めてだったので、歌い方の基礎を一からたたき込まれた。教えてもらったこと言われたことをすべて吸収するのに必死だった。認めてもらいたいと思う気持ちがあったので、ああでもないこうでもないと試行錯誤する日々。自分のボーカリストとしての理想に近づこうともがいて苦しい時もあった。

「そんな時でもずっと『俺はお前の声がすごくいいと思っているんだ』と言い続けてくれた。それが支えでしたね」

すぐにデビューという花が開かなかったこともあり、自分自身もとまどっていた。平出さんは仕事があって忙しいのもわかっていたから、もっと教えてください、とは言えずにいた。時には、春に会って次に会うときは「明けましておめでとう」と言うこともあった。ボーカリストとしてのレッスンも厳しかったが、放っておかれることが一番つらかった。

それでもやめようと思わなかったのは「YESともNOとも言われていないから」。ダメだと判断されるまでは、やめないと決めていた。
「それに、放っておかれてもまだ私と一緒に何かやろうとしてくれる、そう思わせてくれることが、続けられるという希望になったんです」

ふたりで決めたルールと私のポリシー

「ちゃんとケンカをしましょう」。それが、「相棒」とのルールだ。

たとえば、衣装のラインストーンひとつにしてもこっちがいい。いやこっちがカッコいい。というような本当に細かいところまで、とことん納得するまでケンカする。それがふたりで決めたルール。

「思い出してみると、本当によく怒られていたなぁ。こないだ注意したところがなぜ直っていないのかとか、歌詞のことでもそれでは伝わらないとか。大人になってこんなに叱られることはないというくらいに」

泣きたくなるような場面は幾度もあったが、話し合いの場で悔し涙を流すと話が進まなくなるから、ポリシーとして「泣かない」と決めていた。「うれし泣きの涙はたくさん流したほうがいいですけどね」。「泣かない」というポリシーは、平出さんが評価してくれていることのひとつでもある、とも思っている。

デビュー当時のシシド・カフカさん


デビュー当時のシシド・カフカさん

そして出会って7年、2012年に、シシド・カフカさんは、ドラムボーカルのスタイルでデビューした。

以来、全力で仕事に向き合ってきて、最近は、徐々に認められていると感じることや、手放されるところが増えてきたように思う。歌う時にこういう表現にと言われた時も、私はこういう表現をしたいと話ができるようになった。

「最近では、2013年にリリースした『群青』。いい歌詞だと思うよ、とはじめて歌詞をほめられた。ちゃんと評価してもらえてうれしかったですね」

さらに自分では思ってもみなかったが、表現者として幅を広げるために挑戦した演技が、評価のひとつに加わった。

「どうやら見ていられないだろうと思って私の初出演ドラマ『ファーストクラス』を見たら、わりと見られるじゃん! と思ったらしく、『安心感からか逆にどんどん見なくなったよ(笑)』と」

10月から3カ月連続でリリースされる作品についても、楽しみにしてくれていると思う。リリースした曲を聴いてボーカリストとしてこういう表現もできると、新たな指針を作る作品になっているから。「何も言わないけど、全部見てくれていると思っているし、私も彼を見守っている。これからもお互いのもっているいいものを出し合って、持ち寄って作品を作っていきたいです」。

相棒と私のこれから

カフカさんにとって“相棒”とは、「絶対にないがしろにしない人」だという。

「ちゃんと説明や理由を話してくれるし、私が存在していることを認めてくれる。今は一緒に走れる状態になってきたので、これからは私がリードできる場面を増やしていけたらいいかな」

そんな相棒との関係だが、実はデビューして半年ぐらい経った頃、ジャケットのことや売り出し方の意見の食い違いで、もう終わりか、と思うぐらいぶつかったときがあった。
その時に平出さんに言われた言葉があるという。

「でも、その言葉は今は言えない。理解はしています。それからずっと、その言葉に勝るものを探しているところで、それが私の軸になっていると思うから」

(文・&w編集部)

シシド・カフカ
メキシコ出身。ドラムヴォーカルのスタイルで2012 年「愛する覚悟」でCDデビュー。最新CDは2 月22 日リリースのコンセプト・ミニアルバム「DO_S」。現在までに8枚のシングル・ミニアルバム・アルバムをリリース。女優としてもドラマ「ファーストクラス」、日本テレビ系日曜ドラマ「視覚探偵 日暮旅人」(2017)、NHK 連続テレビ小説「ひよっこ」に出演し話題に。現在は、フジテレビNEXT「TOKYO ESSION ‒ROCKIN’GAMBLER‒」、Eテレ「高校講座 美術Ⅰ」、bayfm「土曜の夜にはカラスが鳴く」にレギュラー出演中。

シシド・カフカさんからのお知らせ

シシド・カフカさん 出会いは「君、歌ヘタクソだね」

3カ月連続配信リリースに加えて、12月にはライブツアー「シシド・カフカ Live Tour 2017 そうだ、ライブやろう」を愛知、大阪、東京で開催する。髪をバッサリ切った彼女の、あらたなドラムパフォーマンスは必見。ライブで「みんなの反応を見るのが楽しみ!」

【ライブ情報】
シシド・カフカ Live Tour 2017 そうだ、ライブやろう
・2017年12月2日 名古屋 ell.FITS ALL
・2017年12月6日 大阪 TRAD
・2017年12月13日 渋谷 WWW X

【リリース情報】
3カ月連続配信限定作品リリース
・第1弾「羽田ブルース
シシド・カフカ feat.横山剣 with CRAZY KEN BAND
(2017年10月4日)
・第2弾「新宿サノバガン(SON OF A GUN)
ザ・クロマニヨンズ真島昌利 作詞・作曲
(2017年11月8日)
・第3弾「zamza
作詞:シシド・カフカ 作曲:金子ノブアキ
(2017年12月13日)

オフィシャルHP:www.shishido-kavka.com

editor’s note-インタビュー後記-

ジャケットはなるべく顔を隠したいと思っているシシド・カフカさんと、どんどん顔を出していこう派との間で「今も戦っています! 自分の意思を伝えるためにもケンカは売り続けないとね(笑)」

PROFILE

坂口さゆり

生命保険会社のOLから編集者を経て、1995年からフリーランスライターに。映画評や人物インタビューを中心に、金融関連や女性のライフスタイルなど幅広く執筆活動を行う。ミーハー視点で俳優記事を執筆することも多い。主な紙媒体に、「朝日新聞」(朝日新聞社)「AERA」「週刊朝日」(以上、朝日新聞出版)「Precious」「女性セブン」(以上、小学館)「プレジデント」(プレジデント社)など。著書に『バラバの妻として』(NHK出版)『佐川萌え』(ジュリアン)ほか。

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