リノベーション・スタイル

<163>郊外の丘の上で豊かな暮らしを楽しみつくす

  

[横浜荏田北の家Ⅰ]
神奈川県横浜市青葉区 築32年/136.28m²

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 今まで中古住宅のリノベーションといえば、“都心”で、“コンパクト”に、自分の“スタイル”を実現させるということに軸が置かれていました。でも時代とともに、住宅に求められるものは少しずつ変わってきています。

 そこで今注目したいのは、郊外の戸建てです。中古の戸建て住宅のリノベーションは、都心の中古マンションのリノベーションとは正反対。キーワードは、“郊外”、“ゆったり”、“アクティビティー”です。郊外ならではの土地の広さを生かし、これまで外で楽しんできたことを家の中に持ち込み、暮らしそのものを楽しもうという考え方がベースにあります。

 とはいえ、もちろんそこにはハードルもあります。たとえば擁壁問題。郊外には坂や丘のある場所も多くありますが、そういう場所には必ず擁壁があります。となると必然的に階段も生まれ、上り下りが面倒なうえ、その分の土地が無駄に感じられます。さらに耐震補強、雨漏り対策などももちろん必要です。

 でもそれらすべては考えかた次第。発想を転換すればネガティブ要素はポジティブ要素になります。擁壁があるということは、眺望がよく、四面採光が可能ということ。擁壁問題があるがゆえに土地の値段も安くなります。さらに階段は魅力的なものに作り替え、「階段があってよかった」と思える場所にすればいいのです。

 さて、今回ご紹介する事例は、まさにそんなネガティブ要素のつまった“郊外の丘の上に建つ家”です。丘の上の家となると、擁壁があって階段を上らなくてはいけない面倒な家というイメージですが、そのネガティブなイメージをポジティブ要素に変えようと、株式会社リビタのHOWS Renovationと一緒に手がけました。 

 場所は東急田園都市線沿線の市が尾駅からほど近く。40段もの階段を上った先に、三角形の土地に建つ鉄骨造の2階建ての家があります。

 40段の階段と聞くと、「勘弁してくれよ」と思いますが、まず考えたのはワクワク感に発想を転換するということ。そのため、階段横には植栽を置けるスペースを造ったり、途中に座れるスペースを設けたりしました。小さな”公開空き地”という感じです。ここでバーベキューをしたり、ちょっとしたマルシェを開いたりしても楽しいでしょうね。使い方は住人次第です。

  

 さらに、三角形の土地に家が建っているので、全室庭付き。広さや形の違う庭を楽しめます。釣り好きの人なら、ホームセンターでプラスチック池を買って、釣り堀を作ってみるのもおすすめです。広い庭ではグランピングをしてもいいですね。今まで出かけてやっていたアクティビティーを敷地内に持ち込めるのという楽しさがあります。

 1階には広い玄関ホールがあり、ゆったりとした部屋が2つ、洗面所とお風呂があります。本来ならリビングは1階にありますが、素晴らしい眺望をいかすため、2階を広いワンルームのLDKに。ここだけで36畳もあります。これは軽量鉄骨の家だからできたこと。窓がたくさんあるので、ぐるりとパノラマの風景を楽しめます。本当に気持ちのいい空間です。

 天井は鉄骨の小屋組をそのまま見せているので、植栽やハンモックなど掛けられるので便利です。広々としたゆとりのある暮らしは、郊外の戸建てだからこそできることです。

 このように、不動産として価値がないかもと思われていても、発想の転換によっては「実はこっちの方がいいじゃん!」となるも場合も。しかも他より安いのですから、いいことずくめです。発想の転換というのは、いつの時代も新しいもの生み出す力になっています。

(構成・宇佐美里圭)

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PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

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