花のない花屋

自閉症の長男の心に届けたい。私たち家族へ花束を

自閉症の長男の心に届けたい。私たち家族へ花束を

〈依頼人プロフィール〉
谷口育男さん 55歳 男性
千葉県在住
教職員

    ◇

 30代前半の長男は重度の自閉症で話ができません。小さい頃は「お母さん」と言うことができましたが、成長するにつれ消失してしまいました。

 特別支援学校を卒業した後は近所の施設に通っていましたが、18歳の頃、コンビニのコーヒーにこだわるようになりました。玄関や窓をブロックして勝手に開けられないようにしていたのですが、「どうしても欲しい!」という気持ちが抑えきれず、開いていた小窓から飛び出すようになってしまったのです。

 私たちだけの力ではどうにもならず、仕方なく長男を遠くの施設に入所させ、私たちも引っ越して環境を整えました。今は週末になると迎えに行き、家族一緒に過ごしています。車でドライブに出かけたり、松戸市の東部スポーツパークや流山の運動公園を散歩したりするのがいつものコースです。

 家で食べる妻の手料理も楽しみの一つのようで、カレーや肉料理、煮物、みそ汁などをおいしそうに食べては、機嫌がいいと笑顔や笑い声を出したり、手を振ったりしてくれます。言葉は出ないのですが、妻を見つめて「おいしいよ」と伝えようとしているようです。

 先日NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」」を見て、東さんの生き方や考え方に引き込まれ、感動してサイトを探しているうちにこの連載にたどり着きました。「花は命の作品。人間のエゴで切り取られたものだからこそ、花の命を無駄にしてはならない。人の心の深くに届けることで、命を生かさなければいけない」という考え方に共感しました。

 そこで、東さんに私たち家族に向けて花束を作ってもらえたらと思い応募しました。妻はひまわりが大好きで、明るくあたたかく愛情いっぱいに3人の子どもを育てています。長男は妻の手料理が大好きなので、妻の手料理をイメージし、香りをかいで思わず口をつけたくなるような花束を作ってもらえないでしょうか。いい香りのする花を目の前にして、彼が何かを感じてくれたら……。息子が笑ってくれたら、家族みんなが笑顔になれます。東さんの作品を目にした息子の感動を家族で分かち合いたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

自閉症の長男の心に届けたい。私たち家族へ花束を

花束を作った東さんのコメント

 奥様が好きなひまわりと、香りをテーマにアレンジをしました。使用した花材は、山吹色とライムイエローのひまわり3種と黄色いネリネ、小振りのかわいらしいタンジーなどです。最近はひまわりといっても、小振りのヒメヒマワリなどが多く出回るようになりました。黄色い花を中心にぎゅっとかため、太陽のような花束にしています。

 まわりのリーフワークは2種類のゼラニウムとポリシャス。ゼラニウムはそれぞれ違う香りがするので、ぜひ手で触って楽しんでみてください。

 目で見るだけでなく、触ったり香りをかいだり……いろいろな方法で楽しんでいただけたらうれしいです。

自閉症の長男の心に届けたい。私たち家族へ花束を

自閉症の長男の心に届けたい。私たち家族へ花束を

自閉症の長男の心に届けたい。私たち家族へ花束を

自閉症の長男の心に届けたい。私たち家族へ花束を

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

自閉症の長男の心に届けたい。私たち家族へ花束を

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

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