リノベーション・スタイル

<164>こだわりの収納と、家族それぞれの空間つくり

[line dance]
Aさん(夫、妻、長女)
東京都江東区 築12年/75.10m²/総工費 490万円
    ◇

 Aさんご一家は、もともと奥様の仕事の関係で江東区のこのマンションにお住まいでした。今回は上層階でもう少し広い部屋に空きが出たため、そちらを購入し、自分たちの暮らしや収納量に合わせて使いやすくするために部分リノベーションをすることになりました。

 大きなテーマは二つあり、一つは「収納をきっちりつくる」ということ。すべてのものをあるべき場所にきっちり収納したい、という奥様の要望で、リビングの棚やキッチンの収納棚などを新たにつくりました。キッチンの収納棚の中には電子レンジや家電、器などすべての物がきっちり収まっており、表面のラインもそろえたので、とてもすっきりした印象です。

 そしてもう一つのテーマは、「家族3人それぞれのスペースをつくり、持ち物も各自が管理できるようにする」ということ。みんなが集まるリビングを広くしようとも考えたそうですが、そこにそれぞれの物が散らかっているのは嫌だ、という奥様のご要望で、個別の空間に収納を設けることにしました。

 もともとの間取りは3LDKで、個室が二つとリビングがありました。今回のリノベーションでは、リビングに”抜け”をつくるために、リビング隣の個室の壁を取り除き、棚で仕切りをつくってそこを奥様の部屋にしました。空間の真ん中にちゃぶ台が置いてあり、そこで本を読んだり、仕事をしたりすることができます。入り口横にはウォークインクローゼットがありますが、そこには奥様の物だけが収納されています。

 その隣の個室はご主人の部屋。ここにご主人の持ち物がすべて収納されています。そして、なんとリビングの収納棚の一部が娘さんの“部屋”。途中から「私も自分のスペースが欲しい!」となり、棚の中に小さな机をつくって、中に入れるようなDEN(デン)スペースをつくりました。家の形にマスキングテープが貼ってありますが、これは娘さんのスペースという目印。この枠内なら彼女が好きなものを貼っていいのだそうです。

 面白いのは、それぞれのスペースに娘さんが紙でつくった「表札」があること。まるで家の中に3人のコテージがあって、それが集まりスモールビレッジになっているような雰囲気です。

 最近はとかく「シェア」という価値観が広がり、リノベーションにおいても家族がシェアする空間を充実させる、という傾向にありますが、Aさんたちのような考え方もありだと思います。なんでもシェアすればいいというものでもありません。それぞれがインディペンデントでありながら、心地よく暮らしていく、というのも大切なこと。そういった価値観を反映させられるのは、リノベーションの醍醐味(だいごみ)ですね。

(構成・宇佐美里圭)

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PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

<163>郊外の丘の上で豊かな暮らしを楽しみつくす

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<165>扉のない美術館のような空間に

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