花のない花屋

試練を乗り越えて前へ 妹夫婦に

試練を乗り越えて前へ 妹夫婦に

〈依頼人プロフィール〉
金子純さん 41歳 女性
新潟県在住
会社員

    ◇

 8歳年下の妹は三人兄弟の末っ子で、小さい頃から丈夫でよく食べ、健康そのもので育ってきました。社会人になってからは仕事も順調で、20代後半で結婚。まさかそれから2年も経たないうちに、突然生死をさまようことになるとは、誰も思っていませんでした。しかも二度も……。

 一度目は2013年のこと。妹は通勤途中の駅で突然倒れました。心臓発作の一つだったようですが、幸い駅員の方がすぐにAEDを使ってくれて、すぐ隣の大学病院に搬送されました。そして、そのまま3日間意識不明の重体に。親も妹の夫である義弟も憔悴(しょうすい)しきり。祈ることしかできませんでしたが、そのあと意識が回復し、奇跡的に脳に後遺症も残らず、それまで通りに社会復帰ができました。まだ妹が29歳のときのことです。

 本当によかったね、と安心していたのもつかの間。それから数年経った一昨年の年末、今度はくも膜下出血で倒れてしまいました。ちょうどその1カ月前から、妹だけ単身赴任で東京へ引っ越したばかりでした。たまたま義弟が大阪から泊まりに来ていた朝、「なんだか調子が悪いから、救急車を呼んで」と頼み、病院に搬送されると「すでに破裂しています」とのこと。すぐに緊急手術となりました。もし一人だったら……と思うとぞっとします。

 集中治療室に駆けつけたときは、どうしてまた妹が?という思いと、義弟に何度も心配かけて……という気持ち、そしてなんとしてでも助かってほしいという気持ちが私の中で交錯していました。

 その後、予断を許さない場面が何度もありましたが、義弟はわずかな面会の時間に来て音楽をかけ、妹の足や指先をマッサージし、懸命に支えてくれました。ここまで妹のことを深く思ってくれているだなんて……と本当に本当にありがたかったです。

 そのかいもあってか、妹は奇跡的に意識を回復しました。医師には、後遺症は残るだろうと言われていましたが、義弟が大阪の自宅近くのリハビリ専門病院を探し出し、そこへ入院した後は劇的に回復していきました。

 今では補助具をつけて歩けるまでになり、社会復帰したいという妹の希望もあって、2017年の春からは時間差通勤を開始、そして10月からは通常勤務を始めました。義弟は、毎日妹を仕事場へ迎えに行ってくれているようです。

 そこで、妹と義弟へ、思わず「うわあ……!」と目を見開くような華やかな花束を作っていただけないでしょうか。妹の命へ感謝とエールを、義弟に心からのありがとうを込めて。

 妹は色や形もほんわかした優しい雰囲気のものが好きなので、ピンクやアイボリーなど、優しい色の花をたくさんちりばめた、ふんわりした花束をお願いします。また、二人の絆を象徴するようなものを加えていただけるとうれしいです。

 当たり前と思っていることは、実は当たり前ではない。そんなことを私も胸に刻み、すべてに感謝して生きたいと思っています。

試練を乗り越えて前へ 妹夫婦に

花束を作った東さんのコメント

 贈った瞬間、相手に「うわあ」と言ってもらえるような花束を……と考え、今回はご希望のピンクとアイボリーの花をふんわりと盛った花束にしました。

 ベースにぎっしりと挿したのはカーネーションです。一輪咲きとスプレー咲きの品種をランダムに挿し、ボリュームを出しました。その中に、ナデシコ、ブバルディア、バラ、セルリア、トルコキキョウ、センニチコウなどをあちこちに加えています。

 トップに挿したのはピンクのダリア2輪と、テッセン2本。「2」というのは、妹さんとご主人の2人を表しています。まさに「花に埋もれるお二人」です。

 淡いピンク色は、見ていて心がなごみます。大変な試練を乗り越えたお二人に祝福の気持ちが届きますように。

試練を乗り越えて前へ 妹夫婦に

試練を乗り越えて前へ 妹夫婦に

試練を乗り越えて前へ 妹夫婦に

試練を乗り越えて前へ 妹夫婦に

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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