リノベーション・スタイル

<166>風と光がまわるリバーサイドの家

[S邸]
Sさん(夫婦、長女9歳、双子6歳)
神奈川県川崎市 築27年/75.5m²

    ◇

 Sさん一家のリノベーションのテーマは「リバーサイド」。キーワードは水、光、風、夏です。

 実際、こちらのマンションの目の前は多摩川があり、窓をあけると素晴らしい眺望です。都心からのアクセスはいいのに、ゆったりとした郊外の雰囲気。自然が好きな人にはたまらない環境ですね。
 部屋の間取りは長方形ですが、両端に窓とバルコニーがあるので、窓を開け放つと部屋の中を気持ちよく風が通り抜けます。

 リノベーションにあたっては、Sさんからいくつかご要望がありました。まず、かっこよすぎないこと。また、ハードな素材は使わずナチュラルで、肩ひじ張らない雰囲気のものを使いたいということ。さらに、廊下を“廊下以上の空間”にすること。ライブラリースペースがあること。洗面台はベッセル型じゃないものにすること。ブルーをアクセントカラーにすること……などです。

 最終的に決まった間取りは、玄関から中へ入ると右側がベッドルームで、左側がLDKという間取り。

 そして最大の特徴は、LDKへ続く廊下の空間です。ここは一見廊下なのですが、いわば“七変化する廊下”です。
 まず、廊下を挟んでサニタリールームと洗面所や洗濯機置き場が向かい合っていて、その先にはライブラリーとベンチがあります。その向かいがキッチンです。つまり、この廊下は玄関からLDKへ向かう通路であると同時に、使うシチュエーションごとにいろいろな空間になるというのが、この廊下の特徴です。

 また、廊下の壁の反対側には別の部屋があり、その空間と玄関をつなげたので、廊下の壁を軸にした回遊性も生まれました。

 こういった廊下の使い方は最近のリノベーションではずいぶんスタンダードになってきました。一昔前までは、日本家屋の廊下は廊下としてしか機能せず、暗くてドアで閉め切られるような空間でした。でも、それはすごくもったいないこと。廊下だって机を置けば書斎になりますし、時間軸の中で使い方を工夫すれば使用範囲が広がるのです。

 ちなみに、浴室とキッチンは大きな窓でつながっています。それによってバルコニーの光を浴室まで届けることができますし、お風呂の中から「ビールちょうだい」なんて頼むこともできます。浴室に湿気がこもらないことも大きなメリットです。

 玄関横のベッドルームの壁はガラスブロックにし、ベッドルーム側のバルコニーの光が玄関に届くようにしました。このように、部屋全体に風と光がまわる仕掛けがあちこちにあります。

 設計中、奥様はお1人目のお子さんを妊娠中でしたが、その後さらに双子のお子様も生まれたため、実は最近Sさんご一家はこの家を手放し、湘南に引っ越されました。そちらでも新しいリノベーションを楽しんでいらっしゃるようです。リバーサイドからシーサイドへ。本来お好きだった自然にどんどん近づき、理想の暮らしを実現されています。

(構成・宇佐美里圭)

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PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

<165>扉のない美術館のような空間に

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<167>猫と植物と山水画のような空間に暮らす

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