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わたしの心の絶景本。『南の島のティオ』

撮影/猪俣博史

撮影/猪俣博史

わたしの心の絶景本をご紹介します。日本から真南にくだりグアムとハワイの中間にあたる南太平洋上の島しょ国。シニアボランティアとして約2年間、わたしが暮らした島は、戦前4万人の日本人が住んでいたといわれているのに、旅行社に勤めていたわたしでも「どこ?」と地図上を探しまくった、赤道直下のちっちゃな島でした。

南の島暮らしで一番美しいのは、夕暮れに……

島の人口はおよそ1万1000人。小さなホテルが8軒、スーパーマーケットが3軒、カラオケやスナックなどあるはずもなく、夜は日暮れとともにホテルのラウンジか現地のサカウバー(Sakau:コショウ属の根っこを潰してつくる鎮静作用のある島の伝統飲料)で静かに飲むのが夜更かし人の日課という生活。

車で回れば島1周で約4時間、環礁に囲まれた島の90%は、いまだ緑濃い未開拓地で、礁湖(しょうこ/環礁内の浅い海)では色鮮やかなサンゴに魚が乱舞し海底まで見える透明度。ボートで走ればイルカが並泳して出迎え、外海にでれば魚群を知らせる鳥山(とりやま)があちこちで見られ、魚を追って中に入ると数えきれない鳥に覆われて周りが暗くなるほど。

でも一番美しいのは夕暮れに釣りから戻り、島の入り江にボートを進めると夕闇の中にポツポツとともる街の明かりは温かみがあって幻想的で「こんな世界が本当に存在するのだ」とうっとりと見とれるばかりなのです。

初版が1996年と決して新しい本ではありませんが、それぞれの物語から醸し出される雰囲気は現地に住んでいて感じるまさに島の生活そのもので、しかもいまだに読まれ続けている、誰にでも楽しめるメルヘンともいえる短編集は現実と物語が融合した1冊です。

読後「南の島」はどこ? と思われた方のために耳打ちさせていただくと、地名こそ違うものの巻頭地図の形状、そして竹沢うるまさんと共著写真集「Tio’s Island」で池澤さん自身が(ミクロネシアの島々へ再訪)と書かれているミクロネシア連邦のポンペイ島こそが『ティオの島』なのです。

この本を手にして南の島を旅して海を眺めながら静かに流れる極上の空気感を味わってほしいと切に願っています。

(文・重野 功)

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重野 功

2014年12月オープン時より、湘南蔦屋書店に旅行コンシェルジュとして勤務。旅の企画・販売、海外駐在、添乗員、海外ホテルの窓口、在日政府観光局、JICAシニアボランティアなど観光を支える「作る側」を経ると共に、アジア・南太平洋を中心に40カ国以上「旅する側」を実践する旅大好き人間。

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