花のない花屋

家族の絆を守ってくれた息子へ

家族の絆を守ってくれた息子へ

〈依頼人プロフィール〉
高井仁美さん(仮名) 44歳 女性
神奈川県在住
自営業

私には二人の子どもがおり、長女は高校生、長男は小学校4年生です。実は、長女が2歳の頃から夫のモラルハラスメントが始まり、そのストレスから一時期心療内科に通っていました。

娘のイヤイヤ期が始まり、子どもが自分の言うことを聞かなくなると、夫は娘に対して「お前は使えない人間だ」などと言い、私にも「ダメな母親だ」「ダメな人間だ」と繰り返すようになりました。

怖いのは、毎日そのような言葉を投げかけられていると、自分でも本当にそうかもしれない……と思いはじめ、洗脳されてくることです。私は結婚を機に故郷を離れ、 仕事も辞め、専業主婦をしていたため当時は周囲に知り合いもいませんでした。助けを求めることもできず、家で悶々とするうちにパニック障害の症状が出てきました。

そのあと誕生した息子は、おとなしかった長女とは違って本当にやんちゃな子で、生活は一変。ふたりの子育てで大変なときでも夫のモラハラはひどくなるばかり、娘は心ない言葉に傷つき、不登校になってしまいました。いつしか私たち母娘は夫を避けるようになっていましたが、 そんな中でもただ一人、息子だけは夫になついていました。

「男同士だからなのかな?」「あんなひどいことを言われても好きなのかな」「私よりパパが好きなら、パパは任せたわ」……。私はそんな気持ちでした。

しかし、次第に息子が問題行動を起こし始めます。家で親のお金を盗むようになったり、学校でゴタゴタがあったり……。なんで? どうして? 苦しくて悲しくて、どうしようもない八方塞がりになっても、夫はすべて他人事。頼りになりませんでした。

そんなときふと、もしかしたらこの子は私の気を引くために問題を起こしているのかもしれないと思い、息子と話をしてみました。すると、彼は「ママのことが大好き」と言ったのです。

息子はたぶん、不仲な両親と父を嫌う娘を見て、自分がお父さんから離れたら家族は崩壊すると、子どもながらに感じていたのでしょう。もっと早く息子の優しさや悲しさに気づいてあげられたら……と心の底から後悔しました。

今は息子にも「ママはあなたを愛しているよ」とちゃんと伝えています。不登校ですが、明るくひょうきんで、自分らしさは失っていません。少しずつ学校へ行く努力もしています。これからさらに難しい年齢になる前に、心を開いてくれてよかった、と思います。

そんな、寂しい思いをさせてしまった息子へ、私の愛を感じられるような花束を作っていただけないでしょうか。彼は囲碁が得意で、今は4段を目指して頑張っています。プロの先生につき、「囲碁だけは他の人に負けない」という思いが、彼の芯になっています。難しいかもしれませんが、囲碁をイメージした花束というのはできますでしょうか。得意なものを伸ばし、自分らしく生きていって欲しい、という願いを込めて……。

家族の絆を守ってくれた息子へ

花束を作った東さんのコメント

 今回のテーマは囲碁。白と黒でまとめました。黒い花はスカビオサ、白い花はトルコキキョウとピンポンマムです。中心には白と黒のプロテアを5本いれています。どこか獣を思わせるような、毛のついたプロテアを目にするのは、息子さんにとって初めてじゃないでしょうか?
 プロテアはこの状態から少し膨らみますが、そのままドライフラワーとして保存できます。

 リーフワークはブラックタイ。一つ一つ折ってたくさんまわりに挿しました。シンプルなアレンジですので、こういった細かい作業が際立ちます。

 子どもへ贈る花束のアレンジはいつもそうですが、やはり気合いが入ります。今本当に自分がいいと思うものを見せてあげたい、と思って作りました。

 黒と白の色合いで、とても大人っぽい花束になりましたが、息子さんの反応はいかがでしたか? 長持ちするアレンジですので、ゆっくり楽しんでください。

家族の絆を守ってくれた息子へ

家族の絆を守ってくれた息子へ

家族の絆を守ってくれた息子へ

家族の絆を守ってくれた息子へ

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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