明日のわたしに還る

「明日のわたし」へ贈る花束 軽やかに新しい時代を拓き、それぞれの美しい花を咲かせてほしい

wで毎週木曜日に更新される、創刊時から続く人気連載「花のない花屋」。
読者の皆さまから募ったエピソードをもとに、フラワーアーティスト東信さんが、それぞれの思いを丁寧に花に込めます。
花を贈る相手は、あなたがいま一番、思いを伝えたい人。
この連載では、花を通して紡ぎだされる、贈り主と大切な人の物語をお届けしています。
今回は5周年の特別編として、編集部から読者の皆さまへ、感謝の思いをこめて東さんに花束を作っていただきました。
&wでは初公開の花束メイキング動画と、東さんから皆さまへのメッセージをお届けします。

写真・動画: 椎木 俊介 / 取材: 宇佐美 里圭


依頼人:&w編集部

 朝日新聞デジタル「&w(アンド・ダブリュー)」は、
2018年1月、おかげさまで創刊5周年を迎えました。

「花のない花屋」を読んで下さっている皆さま、お手紙を寄せて下さった皆さまに、心から感謝申し上げます。

 就職、独立、結婚、出産、離別、病気、転職、進学……。
自分だけでなく、家族や友人、周囲に起こる様々なできごと。

5周年にあたり「&w」は、読者の皆さまがいまいる場所から、人生の様々なステージを経て、さらに居心地のいい、「明日のわたし」へ還っていくためのメッセージを伝える特集を、お届けしていきます。

その象徴となる贈り物として、東さんに、「&w」読者の皆さまへのお花を作っていただけませんでしょうか?

 いろいろなことがあっても、私たちは止まっていない。めぐってまわって、さらに柔らかく明日を作るために、自分が本当に好きな場所や好きな自分に、還っていく——。

「&w」を見守り、参加して下さっている皆さまが、一番大好きな自分に向かって還っていく力となるような、エールとなるようなお花をお願いします。


「明日のわたし」へ贈る花束 軽やかに新しい時代を拓き、それぞれの美しい花を咲かせてほしい

鎧を脱いだ、“やわらかな素の自分”を花で伝えたい

―「明日のわたしに還る」というテーマをもとに、とても春らしい、やさしい色合いの花束を作っていただきました。

東 信 (以下、東)
寄せていただいたエピソードには、いろんな人生が詰まっているんです。出会いだったり、別れだったり、誕生だったり・・・・・・。毎回、その人の人生の、言葉にできない感情や表現のしようのない思いに寄り添って、花を束ねています。
今回のテーマを聞いた時に、そんな様々な出来事を経てきた読者の方が「本来の自分に還っていく」ということなのだろうと考えて、鎧(よろい)を脱いだ、“やわらかな素の自分”を花で伝えたいと思いました。
世の中をひっぱっているのはいつの時代も女性。自然体で、軽やかに新しい時代を拓き、それぞれの美しい花を咲かせてほしいですよね。だから、強い色は一切使わず、ニュートラルなやさしい中間色とグリーンでまとめています。花の庭にふらっと迷い込んだような、そんな感じにまとめたいな、と思いました。
また、やさしいだけではなくて、とても華やかです。読者の皆さまが、巡りめぐってたどり着いたところに待っていてくれたものが、こんなにも華やかな花束だなんて。この花束を拝見した時、とてもうれしい気持ちになりました。なぜ、このようなアレンジを?

この花束は、いつにも増してたくさんの種類の花を使っているんです。 オレンジ色のユリは、珍しい“バラ咲き”という新種です。肉厚の花弁がまるでバラのようですね。そこに、ガーベラ、スカビオサ、エピデンドラム、カーネーション、ブルーレース、そして大輪のダリアをびっしりと挿しています。
やわらかな色の花を重ね合わせて、全体的に“自然”を感じられるように意識して束ねています。
そして、このストックはつぼみですが、徐々に咲いていくはずです。実は、一つの花が枯れても、その下に次の花が咲くように順番を計算して、全体的に美しく朽ちていく仕掛けをしています。朽ちていくもののそばに、つぼみがある。枯れたあとに見えてくるものがあるのかな、と思います。時間の経過とともに変化していく、花の様子、花の姿を楽しんで欲しいですね。

―また、やさしいだけではなくて、とても華やかです。読者の皆さまが、巡りめぐってたどり着いたところに待っていてくれたものが、こんなにも華やかな花束だなんて。この花束を拝見した時、とてもうれしい気持ちになりました。なぜ、このようなアレンジを?


この花束は、いつにも増してたくさんの種類の花を使っているんです。 オレンジ色のユリは、珍しい“バラ咲き”という新種です。肉厚の花弁がまるでバラのようですね。そこに、ガーベラ、スカビオサ、エピデンドラム、カーネーション、ブルーレース、そして大輪のダリアをびっしりと挿しています。
やわらかな色の花を重ね合わせて、全体的に“自然”を感じられるように意識して束ねています。
そして、このストックはつぼみですが、徐々に咲いていくはずです。実は、一つの花が枯れても、その下に次の花が咲くように順番を計算して、全体的に美しく朽ちていく仕掛けをしています。朽ちていくもののそばに、つぼみがある。枯れたあとに見えてくるものがあるのかな、と思います。時間の経過とともに変化していく、花の様子、花の姿を楽しんで欲しいですね。

「明日のわたし」へ贈る花束 軽やかに新しい時代を拓き、それぞれの美しい花を咲かせてほしい

ゼラニウムは、ずっと触っていたいほど柔らかいさわり心地。指で少しこするだけで強い香りを放つ

―読者の皆さまにお伝えできないことが残念なほど、とてもいい香りがする花束です。甘い香りの中に、すーっと鼻に抜けるような、さわやかな香りもします。


できるだけ五感で楽しめるよう、いい香りのする花もたくさん使っています。香りが特徴的な花材は、バラ、スイートピー、フリージア、ストック、ユリ、そしてグリーンのゼラニウムとユーカリです。爽やかに感じるのは、ゼラニウムとユーカリでしょう。指でこするといい香りが指に移り、どんな香りかよくわかりますよ。

「明日のわたし」へ贈る花束 軽やかに新しい時代を拓き、それぞれの美しい花を咲かせてほしい

―一方で、“自然に還る”ということは東さんの一貫した作品テーマでもありますね。
1万本の切り花を円形に並べ、花々が朽ちて大地に還り、芝生に飲み込まれていく様子を撮影するインスタレーション「Back to the Earth ツチニカエル」や、ブラジルのリオデジャネイロでは、海辺の広大な芝生の上に切り花を大量に並べて、花が朽ちて大地に還っていく様子をインスタレーションとして発表されています。


その通りです。「花を殺して生かす」ということをしている以上、命のサイクルには敏感にならざるをえません。
「生と死」は僕の中でずっと大きなテーマなんです。これまでは朽ちていく様子を作品にしていたので、これからは逆に「再生」をテーマにした作品を作っていきたいと思っています。
よく言われることですが、「母の日に花を贈りましょう」というと美しく聞こえるけれど、その花は、どのようにして育てられたものなのか、まさか野原に咲いていたものではないでしょう? 私たちの手元に届くまでに、たくさんのエネルギーを使って生産・流通していることを考えると、環境を破壊している面もあるんですね。
自分たちのまわりから、少し視線を広げて、思いをめぐらせてみることが大切だなと思っています。
そういうことを考えると、やはりいつかは“自然の花”を使って作品を作りたいと思いますね。まぁ、命のサイクルを考え出すと、最後はひと山買わないといけないから、ものすごく壮大な話になりますけど(笑)。

東 信さんにとっての“自分に還る”時間とは


僕自身は、“自分に還る時間”というのは特にありません。というよりも、こうやって日々花に対峙することが、“自分に還る”行為になっているのかもしれません。
素の自分で勝負しないと、生命にはとうてい向き合えないんです。だからこそ、余計なことはしたくないし、本当に自分が好きなもの、いいと思うことを真摯に続けていきたいですね。花屋以外にやりたいことがないんですよ(笑)。いつもきれいなものを見ていられるし、飽きることがないし……。
やっぱり花がすべてなんです。本当に好きなんですね、一生をかけて向き合うもの、天職だと思っています。

「明日のわたし」へ贈る花束 軽やかに新しい時代を拓き、それぞれの美しい花を咲かせてほしい

連載「花のない花屋」書籍紹介

「花のない花屋」
(発行・朝日新聞出版)著者:東信, 写真:椎木俊介
人気連載「花のない花屋」待望の書籍化。読者が「花束」を贈りたい相手、その理由、思いを手紙にしたため、それを読んだフラワーアーティスト東信が思いを「花束」に束ねて届ける100の物語。言葉にできない感情や思い、そしてその思いを託された花束の美しさが心を打つ一冊。
税込 2,268円
http://amzn.to/2qPkhy9

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川上未映子さん「あらゆることを、混沌のままに表現していきたい」(インタビュー前編)

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