リノベーション・スタイル

特別編<2>もっと自由に暮らす。~中古マンションのリノベーション事例~

  
 自分らしく暮らすために住まいを編集する――。「ブルースタジオ」が手がけたリノベーション事例を紹介する「リノベーション・スタイル」も連載を開始して5周年を迎えました。全4回の特別編として、ブルースタジオ執行役員の石井健さんに「リノベーションの始め方」、「中古マンションのリノベーション事例」、「一戸建てリノベーション事例」、「お金のはなし」とテーマごとにお話を伺いました。
「特別編<3>もっと自由に暮らす。 ~一棟まるごと&戸建てのリノベーション事例~」
「特別編<1>リノベーション、どう始める?」

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 特別編第2回は、中古マンションをリノベーションし、自由な暮らしを実現した事例を世帯別に見ていきましょう。

 まずは連載の第31回でご紹介したTさん(39)。一人暮らしの男性で、最初から「ホテルのスイートルームのようなところに住みたい」と明確に部屋のイメージを描いていらっしゃいました。昭和38年に建てられた古いマンションでしたが、都心にあり、職場からも30分圏内。ベッドルームをガラスの壁で囲んだことで、視覚的にはワンルームでありながら、機能としては1LDKという高級スイートルームのような部屋ができました。非日常空間を現実にできるのは、一人暮らしの特権でしょう。

  

 一方、「こんなところに住みたい」という夢をかなえつつ、将来的な投資も視野に入れたリノベーションを実現したのは第141回でご紹介したKさん(40代)。36平米というコンパクトなお部屋を購入されましたが、東京メトロやJRの駅も使える東京のど真ん中という好立地。しかも駅近。決して広い空間ではありませんが、家具を造作したことで十分に収納も確保でき、かなり快適な空間になりました。このような好条件の住まいなら、将来結婚や転勤などで生活環境が変わっても、簡単に売却したり、賃貸に出したりすることができます。今の暮らしを楽しみながら、将来的に投資効果のある物件を持つというのは、流動性の高い賢い選択です。

 海外転勤などで東京の住まいを賃貸に出している方の中では、月々の住宅ローン返済額よりはるかに高い金額で貸している人もいます。その場合、とにかく立地がいいのが特徴です。投資効果を見据えて将来を担保しつつ、今の暮らしを楽しめる物件を探すのが理想ですね。

「第141回 36平米でも広々&収納たっぷり。ホテルのようなワンルーム」


「第141回 36平米でも広々&収納たっぷり。ホテルのようなワンルーム」

 次に最近のリノベーションの傾向を見てみましょう。100人いれば100通りの暮らしがありますが、いわゆる“リビ充”、つまりプライベートな空間をできるだけ小さくし、リビングを広くとり充実させる人が増えているということ。

 日本の高度経済成長期は、とにかく“個室が多いのが贅沢(ぜいたく)”という考え方がありました。だからその頃に建てられた家は戸建てでもマンションでもやたらと個室や廊下が多く、日のあたらない場所がたくさんあります。

 ところが、最近は家族のつながりを重視する人が増え、「寝室は寝るだけでいいし、個人のプライバシーもいらない。そのかわり広々としたリビングが欲しい」というリクエストが多くなってきています。しかもその広いリビングにはソファやテレビがあるだけじゃなく、ワークスペースがあったり、書斎があったり、子ども部屋があったり……と、家族がゆるやかにつながる空間をつくる傾向があります。

ブラインドを開けるとこどもたちのスペースまで視線が抜ける


ブラインドを開けるとこどもたちのスペースまで視線が抜ける


Rの内側はこどもたちの秘密基地


Rの内側はこどもたちの秘密基地

 たとえば、第120回でご紹介したKさんご一家。こちらはリビングダイニングと同じ空間に、ゆるやかにつながるキッズルームを併設しました。第44回の仲川さん一家も、リビングダイニングと同じ空間に小上がりを活用して、キッズルームのように使っています。

  

 基本的には、オープンキッチンを希望する方も同じような“つながり重視”の考え方です。「リビ充+α」という流れはもはやメジャーな流れになっています。ちなみにお子さんがいる家庭で最近よく見るのは、3LDKを買って、それを1LDK+S(サービスルーム=納戸)とする方法。お子さんが小さい頃は広い玄関や土間、インナーテラスなどとして使い、大きくなったらそこを閉じて個室にするという考え方です。これも一つの方法ですね。

廊下もリビングの一角として感じられるスチールサッシのおさまり


廊下もリビングの一角として感じられるスチールサッシのおさまり

 とはいえ、先ほど述べた通り、100人いたら100通りのスタイルがありますので、“リビ充”とはまったく逆のこともできます。たとえば、3人家族それぞれが個室を持っている、第164回でご紹介したAさん一家の事例。Aさん家族は3人それぞれの個室があり、持ち物もそれぞれのクローゼットで管理しています。そう、なんでもかんでもシェアすればいいというわけではありません。家族がインディペンデントでありながら、心地よく暮らしていく方法だってあるのです。極端にいえば、3LDKを買って、それを7LDKにしてもいいのです。住む人が快適であれば何でも自由です。

リビングにつくった壁一面の造作棚。一部は娘のデンスペースにして、小さな勉強机を設けた


リビングにつくった壁一面の造作棚。一部は娘のデンスペースにして、小さな勉強机を設けた

 さて、ここまでは家の中の話でしたが、もう少し視点を広げて働き方や暮らし方を見ると、両親との“近居”や“同居”をポジティブにとらえる人が増えています。仕事を持ったご夫婦や、若い世代で親との距離感が近い家族も増えています。第145回でご紹介したSさんご一家が横浜の郊外の物件を購入したのは、やはりご実家が近いことが大きい理由でした。

購入の後押しとなった広い庭。これから庭づくりをしていくそう 


購入の後押しとなった広い庭。これから庭づくりをしていくそう

 一方で、子どもたちが独立し、自由な時間が増えたシニアが、セカンドライフを楽しむためにリノベーションをするケースもあります。これまで心にずっと秘めていた「やりたかったこと」を思う存分実現したのは、第129回でご紹介したUさんご夫婦の事例です。娘さんの部屋だった場所をアウトドアグッズやアメリカのアンティークグッズを置くスペースにして、ご自分の趣味をのびのび楽しんでいらっしゃいます。

広々としたワンルームは水まわりと収納以外の壁は排除。家具で仕切る、模様替えが楽しい住まいに変身


広々としたワンルームは水まわりと収納以外の壁は排除。家具で仕切る、模様替えが楽しい住まいに変身

 このように、それぞれの世代や世帯によってさまざまなリノベーションの事例がありますが、共通しているのはリノベーションが「今をより楽しむ」有効な方法であること。楽しみ方は当然ながらライフステージによって変化します。まずは、みなさんも自由な発想で暮らしを思い描いてみてください。

(文 宇佐美里圭)

 第3回「一戸建てリノベーション事例」は、3月14日(水)更新予定です。

PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

特別編<1>リノベーション、どう始める?

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