花のない花屋

優しさに気づけた今、改めて父母へ

優しさに気づけた今、改めて父母へ

〈依頼人プロフィール〉
碓氷恵美花さん 43歳 女性
長野県在住
看護師

    ◇

 母は私が小学生の頃にがんを患い、1年以上抗がん剤治療を受けていました。支えになるはずの父は母の病を受け入れることができず、離婚。母はつらい闘病生活を送りながら、一人で私たち3人姉妹を育ててくれました。

 その後抗がん剤治療を終え、病の再発の不安を抱えて生活をしているとき、リンゴ農家の男性と出会って再婚しました。ちょうど高校1年生だった私は、新しい父になじめず、つらくあたったこともあります。新しい父の実家に引っ越すことになったときは、私は地元に残ると言い張り、下宿しながら高校生活を送りました。長期休暇で実家に帰っても、その頃は父の嫌なところばかり目につき、どうしても好きになれませんでした。私は看護学校へ進み、就職してまもなく結婚したので、結局父とは一緒に暮らしたことはありません。

 そもそも、私が看護師になったのは母の影響でした。病気と離婚を経験した母が一番悔やんだのは、何の資格も持っていなかったことだそうで、だから娘3人には「資格を持って」と言い続けてきました。そんな母の助言と、母を助けられるかもしれない、という思いがあったから選んだ職業が看護師でした。

 結婚後、私は4人の子どもに恵まれました。4番目の長女は出産後にダウン症であることがわかりましたが、そのとき母は「成長が少しゆっくりなだけで何も変わらないよ。かわいい時期がたくさん楽しめるじゃない」と言ってくれ、どれほどその言葉に救われたか……。長女は心疾患も患っていることがわかり、これまでに手術を3回受けましたが、気づけばいつも両親が私の支えになってくれています。

 それなのに、私はこれまであまり父には感謝してきませんでした。でも、先日実家に電話したときに、母がいなかったので父につい子育てのグチなどをこぼすと、父は「4人の子育てのほかに、夫の両親の世話までちゃんとやってるんだから偉いよ」と励ましてくれました。父にそんな言葉をかけてもらったのは初めてです。びっくりしたのと同時にとてもうれしく、どうして今までこんないい父だと気づかなかったんだろう、と反省しました。

 自分が親になり、こうやって話すことができて初めて、父親の存在の大きさに気づきました。私は今年で勤続20年です。ここまで看護師として働いてこられたのも両親のおかげでしょう。

 そこでいま、あらためて父と母に、これまでの感謝の気持ちを込めて東さんの花束を贈りたいです。二人はリンゴ農家で、巨峰とリンゴを作っています。母はどんなお花も好きですが、明るい紫色の花や清楚(せいそ)な感じのスズランが特に好きなようです。母が驚くようなアレンジで、長く変化を楽しめるものだとうれしいです。
 
優しさに気づけた今、改めて父母へ

花束を作った東さんのコメント

 明るい紫色と、白い花でさわやかなアレンジに仕上げました。中心に挿したのは、球根のムスカリです。この状態からぐんぐん伸びてくるはずです。

 ムスカリのまわりにはフリージア、スカビオサ、トラノオ、ダリア、宿根スイートピー、カラーなど白い花を挿しました。つぼみの状態のものが多いので、これから少しずつ咲いていきます。毎日花束の状態が変わってくると思いますので、変化をじっくり楽しんでくださいね。

 紫のトルコキキョウで囲んだ外側には、ナチュラルな雰囲気のグリーンを挿しました。ユウギリソウ、シキミアの実、ヒカゲと3種類のグリーンを組み合わせ、自然な雰囲気を出しています。

 碓氷さんの前向きなメッセージや、感謝の気持ちをそのまま花束に込めました。お二人の反応はいかがでしたか?

優しさに気づけた今、改めて父母へ

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優しさに気づけた今、改めて父母へ

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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