魚料理が好きな母へ。うまみがぎゅっと詰まった絶品煮魚を
料理家・冷水希三子さんが、読者の皆さんの「料理のお悩み」を解決する「冷水料理相談室」。なんでもない毎日のごはん、特別な日の特別なひと皿、自分のために作りたい、あるいは遠くのあの人に届けたいごちそう……。冷水さんが、ご相談に答える形で、いろいろなお料理を作ってくださいます。今回のご相談者は……
〈相談者プロフィール〉
原田早苗さん 50歳 女性
東京都在住
会社員
◇
母と二人で暮らしています。母はお肉を好んで食べたがらないこともあり、私が料理をする時は、魚や野菜中心の料理をつくっています。でも、なかなかうまくいかないことがあり、お手紙を差し上げました。
魚料理をすると、煮ても、焼いても、蒸しても、魚の臭みが残ってしまうのが悩みです。特に煮魚は苦手で、できれば薄味で魚本来のうまみを生かした料理をと思っているのですが、臭みを消すためについ甘辛い味付けにしてしまいがちです。できれば塩分控えめな魚料理をつくってあげたいと思うのですが……。
そして、もうひとつの悩みは「火入れ」です。野菜の炒め物をつくってもどうもシャキッとせず、水っぽくてくたびれた感じになってしまいます。味付けをしたあとすぐに味見したときはちょうどいいのですが、食卓に出す頃になると水分が出て味が薄まってしまいます。
以前テレビで「野菜は炒める前に湯通ししたほうがいい」というのを見て実践したところ、今度はゆで野菜のような食感になってしまったりと、なかなか上手に火入れができずにいます。
こんな感じなので、母からはカキフライやかき揚げなど、味付けが不要で火入れも比較的失敗の少ない揚げ物が好評です。
そこで、基本的なことで恐縮なのですが、魚と野菜、両方の素材の味と食感を生かした調理法、メニューを教えていただけるとうれしく思います。火の入れ方のコツなどもぜひ伝授していただきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
焦らずふっくら、蒸し煮で仕上げる鰆の煮浸し
<冷水先生からのメッセージ>
この連載でもよくお悩みに上がる「火入れ」。お肉でもお魚でも野菜でも、料理をおいしく作るために欠かせないことですが、一度わかればいろいろなお料理に応用できますので、ぜひ何度か挑戦してコツをつかんでくださいね。
お魚とお野菜を使ったお料理をとのリクエストでしたので、旬の鰆(さわら)と菜の花の煮浸しをご紹介します。
まずお魚の臭みについては、何より下ごしらえが肝心です。切り身に塩をふってしばらくおき、魚から出た水分を丁寧に拭き取ります。こうすることで臭みを取ることができます。
今回は煮浸しですが、どちらかというと「蒸し煮」というイメージ。お魚は急に熱を入れると硬くなったり、パサついたりしますので、温めたお出汁の中に入れて、沸騰させることなくゆっくり火を入れます。ときどきお出汁を魚に回しかけることで均一に熱が入りますので、お出汁は魚が半分浸かるくらいの量で十分です。
付け合わせの野菜は一緒に煮ると火が入りすぎるので、魚を取り出した後にさっと熱を通す程度で。食感や風味が程よく残って、おいしく仕上がります。お料理に焦りは禁物です。「ゆっくり、丁寧に」を心がけて、素材のおいしさをじっくりと引き出してください。

鰆は塩をふってしばらくおき、出た水分を丁寧に拭き取ります。これだけで臭みは随分軽減されます

煮汁は決して沸騰させないよう弱火でじっくりと。ときどき煮汁をまわしかけて味と熱を全体に行き渡らせましょう
■鰆と菜の花の煮浸し
◎材料(2人分)
鰆…2切れ
菜の花…1/2束
A
鰹昆布出汁…200ml
酒…50ml
薄口醤油…小さじ1
片栗粉…小さじ2/3
塩…少々
◎作り方
1 鰆に塩を少々ふって20~30分置き、キッチンペーパーで水分を拭き取る。菜の花は、水につけて水上げしておく。
2 鍋にAを入れて中火にかける。沸いたら1の鰆を加え、軽く蓋をして弱火で10分ほど煮る。ときどき煮汁を回しかる。
3 2の鰆を器に取り出し、鍋に菜の花を加えて蓋をし、強火でさっと炊く。菜の花を皿に盛り付けたら、煮汁に水溶き片栗粉でとろみをつけて鰆と菜の花にかける。
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冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家
PROFILE
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小林百合子
編集者
1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。 -
関めぐみ(写真)
写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。