東京の台所

日本酒を飲む夫婦は仲がいい? 「東京の台所」トークイベント開催

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大平一枝さん

 2月17日と23日、東京・下北沢の書店「B&B」で、「大平一枝さんと語る『東京の台所』トークイベント」が開かれました。
 朝日新聞デジタル&w創刊と同時に始まった「東京の台所」連載5周年を記念したもので、この5年、160回を超えた連載を大平さん自らがふり返り、取材の裏話からその後のストーリーまで、2時間ぎっしりと語り尽くす構成。改めて「東京の台所」が、多くの人に読まれている理由が見えてくる時間でした。(&w編集部)

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2回とも90人を超える満員御礼。ありがとうございました

 お話は、「私が影響を受けた台所」というテーマで、取材を通して変わってきた大平さんの「東京の台所」のお話から始まりました。
 まず心に残っている台所が、「<123>離婚。味覚をなくした先にあったもの」「<125>人気フードブロガーの恋愛とごはんと明日の夢」。離婚や死別など、大きな別れを体験した方が、ともに台所でまた力を取り戻していく、その過程の取材を通して、大平さんは台所が「心を整える場所でもある」ということを痛感し、台所を通して「いかに目に見えないものを書くか」ということに目を開かされたといいます。

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 お話のもうひとつの柱が、台所における「もの」との付き合い方。取材中に印象に残った「みんなの収納アイデア」をはじめとする50点ほどの画像を通して、容器や色を揃えるなど、見せる収納のポイントが紹介されました。
 断捨離ブームを受けた「<40>5人家族55平米、究極のミニマム暮らし」など「ものがない家」の工夫、反対に「<14>ああ、ものがあふれて、昭和の香り」といった「ものにあふれた台所」の話では、「なんかほっとする光景ですよね!」という大平さんのひと言に、会場からも笑いが。さらに取材で出会い、自ら使っているフライ網やヨーグルトメーカーなど、大平さんの「切らしたら困るもの」も紹介されました。

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 後半には、「<127>29歳男子3人、熱くて陽気なシェアハウス」「<143>「美しく見せるための料理」で、人生が一変」など、シェアハウスや料理サイトといった、いまを映し出すような要素がつまった台所の話題も。そこから、外食が減ってきている一方で、「やっぱり東京のお父さんは忙しくて平日、家でごはんを食べている人は少ない」といった、台所から見えてくる社会や時代を記録したいという思い、さらには、大量生産、大量消費ではないもの、失われそうなもの、失いたくないものを、台所を通して記録していきたいという、大平さんの思いが語られました。

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これが取材七つ道具!家に上がるときの「靴下」は必携

どんな台所にも、少しの喜びと少しの悲しみが

 ところで、大平さんが取材で気づいたこととして、「日本酒を飲む夫婦は仲がいい」というのがあるんだそう。なぜでしょうか? 
 「考えてみると、日本酒って手がかかるんですよ、熱燗にしたりぬる燗にしたり。缶ビールみたいにプシュッとフタをあけてすぐ飲めないし、缶と違って、小さな盃で相手と酌み交わす。燗をつけてさしつさされつ、間がいっぱいある。そこに派手なおつまみはなくて、炙ったイカみたいな、素朴なものがおつまみに出て、ゆっくり時間が流れていくっていう。そういうことなのかなぁと思って」

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実際に取材を受けた方がたくさん来場、サイン会では「結婚しました」と、後日談を伝える方も!

 大平さんは「どんな台所にも、少しの喜びと少しの悲しみが染みついていて、恵まれているだけの人なんていない。それが生きるっていうことなんだな、と感じる」と言います。
 「取材を受けてくれる人に共通しているのは、誰も投げやりになっていない、自分の人生を投げていないこと、なんですね。それが私にも希望になる。記事を読んでくれた人が、『じゃあ今夜はおいしいおみそ汁を自分のために作ってみるか』と思ってもらったらそれが本望。そういう人間のしなやかな強さ、希望を伝えるような記事を、これからも書いていきたいです」

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 明るい語り口に、時折涙と、終始笑いが絶えないトークイベントは、最後の読者からの質問コーナーとサイン会をもって、あっという間に終了となりました。追ってウェブ上で、読者の皆さまから寄せられたご質問への、大平さんからのお返事特集をお届けします。

PROFILE

大平一枝

長野県生まれ。失われつつあるが失ってはいけないもの・こと・価値観をテーマに各誌紙に執筆。著書に『東京の台所』『男と女の台所』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『届かなかった手紙』(角川書店)、『あの人の宝物』『紙さまの話~紙とヒトをつなぐひそやかな物語』(誠文堂新光社)、 『日々の散歩で見つかる山もりのしあわせ』(交通新聞社)、『昭和式もめない会話帖』(中央公論新社)ほか。最新刊は『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)。HP「暮らしの柄」。
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