花のない花屋

私たちステップファミリーに。大好きだよの気持ちをこめて

私たちステップファミリーに。大好きだよの気持ちをこめて

〈依頼人プロフィール〉
奥村早紀さん(仮名) 25歳 女性
沖縄県在住
主婦

    ◇

 私は通信制の高校に通っていた頃、シングルマザーで長女を出産しました。まだ17歳でした。高校を卒業するために両親や周囲のサポートを受けながら子育てをスタートさせましたが、当然悩みも多く、幸せそうな周りの人の姿を見ては孤独を感じることもありました。

 そんな中、私の心を支えてくれたのが友人たちでした。たわいもない会話や真剣な悩みを聞いてくれる相手の存在が、どれほど私を救ってくれたかわかりません。彼らは私の娘をとてもかわいがり、一緒に遊んでくれたこともありました。そんな大切な友人の一人が今の夫です。

 夫は友人の中でも娘のとびきりのお気に入りで、一緒にいるときは「ご飯を食べさせて」と甘えたり、手をつないで歩いたり、本当に仲良しでした。しかも夫はつきあう前から私の父とも馬が合い、仕事のアドバイスが欲しいからと実家に来ては父と話をしていました。

 でも、当時の私は毎日生活していくだけでいっぱいいっぱい。新しい恋愛をする気力はまったくなく、彼のことは仲の良い親友、死ぬまで友達だろうと思っていました。恋愛対象としては見ることができず、言ってみれば「結婚したくない相手」だったのです。

 それが「結婚したい相手」に変わったのは、娘の幸せと自分の将来を真剣に考えたときに、彼ほどいい人はいないと気づいたからでした。できれば娘には妹か弟がいたらいいなと思っていたし、娘があれほどなついていた人は他にいません。
 自分にとって何が必要か、どうしたら幸せになれるのかを具体的に、冷静に考えたとき、私の最大の理解者である彼の存在がとても大きなものに思えました。
 翌日さっそくその気持ちを素直に彼に伝えると、彼からは「実は俺も昨日そういうことを考えていた」という返事が。そしてトントン拍子で結婚へ。
 当時1歳だった娘は今年でもう8歳です。その後、夫となった彼との間に子どもができ、2人家族だった私たちは4人家族になりました。次女ももう5歳です。夫と結婚してから、幸せな時間をたくさん与えてもらい、一人では見られなかった景色を見させてもらっています。
 あのとき、娘が夫になついていなかったら今の私の幸せはなかったな……と感じるたびに、娘が引き合わせてくれた縁に感謝がこみ上げてきます。
 普段は照れくさく、特に夫に対してはなかなか素直に感謝を伝えられない私ですが、かけがえのない夫と娘たちに「家族になれた喜び」と、「今の幸せをありがとう」「大好きだよ」という気持ちを込めて、花束を贈りたいです。

 ステップファミリーだからこその葛藤が、夫にも娘にもたくさんあったと思います。家族それぞれの個性が調和した、明るい未来を感じられるアレンジだとうれしいです。

 夫の仕事はオーガニック野菜の卸売業を営んでおり、野菜やすがすがしいグリーンが似合います。長女は活発で乗馬や自然が大好き。好きな色は水色です。次女は甘えん坊でお姫様気質。ピンクやかわいいものが大好きです。私は、もっと素直に自分らしく生きていけるよう、丸みのある淡いピンク色のオールドローズを入れていただけるとうれしいです。
 ガミガミとうるさい私ですが、娘たちと夫から幸せを受け取りながらニコニコ笑って、母として妻として生きていきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

私たちステップファミリーに。大好きだよの気持ちをこめて

花束を作った東さんのコメント

 素敵なご家族ですね。今回は奥村さんのご家族への思いをストレートに込めてアレンジしました。

 みなさんを象徴する好きな色や花が明記されていたので、それに合わせて花を選んでいます。まず、長女が好きだという水色は、デルフィニウムです。そして次女の好きなピンクはフリンジのあるトルコキキョウとかわいらしい小花のセンニチコウ。そこに奥村さんご指定のピンクのオールドローズを挿していきました。ところどころに紫色のスカビオサを入れていますが、これは全体を引き締めるために加えたものです。

 仕上げにのせたのは、ご主人を象徴する緑色のグリーンネックレス。リーフワークはルスカスをフリルのように折って挿しました。

 全体的にかわいらしい雰囲気に仕上げ、ご家族みんなで楽しめるようなアレンジにしました。南国の沖縄ではあまり見られない花束になったのではないでしょうか。みなさんで長く楽しんでもらえたらうれしいです。

私たちステップファミリーに。大好きだよの気持ちをこめて

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私たちステップファミリーに。大好きだよの気持ちをこめて

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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