このパンがすごい!

いつでもあっつあつ! 幸福MAXの揚げたてカレーパン/ブーランジュリ シマ

揚がったばかりのカレーパン


揚がったばかりのカレーパン

■ブーランジュリ シマ(東京)

 「ご注文受けてから揚げます!」のポップにわくわくどきどきが止まらない。ブーランジュリ シマのチキンスパイスカレーパンは、いつでも幸福MAXあつあつ状態で食べられるのだから。
 さっそく頼んでみよう。奥さんが発する「カレーパンひとつでーす!」の声は、厨房(ちゅうぼう)にいる島健太シェフに届き、カレーパンが油の中に投入される。
 待つこと3分。紙袋に入れたカレーパンを「はい」と手渡された途端、導火線に火のついた爆弾でもあるみたいに、「あつっ、あつっ! どうしたらいいの!?」と軽くパニックになった。冷静になろう、ただ噛(か)みつけばいいのだ。
 いや、たしかにこれは香りの爆弾である。かりっと高い音を立てて生地が割れると、中からぴゅんぴゅんスパイスの香り成分たちが飛びだす。ごろんごろん鶏肉の塊、トマトベースの甘酸っぱい、透明感のあるスープ。ちゅるちゅる軽快に食べられて、後味はすーすースパイスの清涼感。高原で深呼吸するような、なんともさわやかなゴール地点だ。

チキンスパイスカレーパン


チキンスパイスカレーパン

 「お子さんからお年寄りまで、スパイスが苦手な人でも食べられます。かつ、さわやかな余韻も残してあげる。後味が大事ですから」
 シマの厨房には約40種ものスパイス。なぜそんなにのめりこんだのか? きっかけは「カリ~番長」こと水野仁輔さんのカレーとの出会いだった。
 「衝撃を受けました。自分のカレーパンはカレーじゃなかったんだって。もう一度勉強しなおそうと」
 試行錯誤すること2年。カレーパンの食べ過ぎで蕁麻疹(じんましん)が出るほど試作した。「パンと同じでゴールが見えない。答えがずっと見つからない。その奥深さがスパイスの魅力なんですよね」
 ホール、パウダーとりまぜて全11種。骨格はホールのシナモンがメイン、相性抜群のカルダモンと、本格カレーらしいスパイス感を演出するクローブ。そこに「食べられるスパイス」としてカレーリーフ、コリアンダーなどが入り、粒を噛むたびに時限爆弾が炸裂(さくれつ)、香りの紙吹雪が舞い上がる。

カレーパンを揚げているところ


カレーパンを揚げているところ

 生地はどうか? 島さんに課せられたハードルは高い。客を待たせられるのは、注文を受けてからせいぜい3分。短時間で火が通るふわりとした生地であり、かつイメージは「ナンの役割なんですよ。メインのカレーを邪魔せず、それでいて自分も主張するような」。
 まさにナン。小麦の甘さがとろーんと溶けて、カレーと混然一体になっていく。冷めれば一転、もちもち。コクを増したカレーを受け止める。カレーだけを食べたとき以上の感動をパンが演出。これこそ、カレー屋ではなく、パン屋の仕事である。
 注文後あつあつ提供シリーズの、二の矢はチーズ揚げパン。カレーパンと同じ生地に、モッツァレラとゴーダチーズを入れる。衝撃の一語。かじると中からどろーりとマグマのようにあつあつチーズが流れだす。

チーズ揚げパン


チーズ揚げパン断面

 パン屋なのに、週末はコロッケ。ベーコンポテトコロッケはコロッケの概念を覆す。ほろほろと勝手に崩れていくやわらかさ。じゃがいもの甘さ、土っぽい香りが強調され、もはやコロッケを超え、「じゃがいも料理」の趣がある。
 なぜ揚げたては人を狂わすのか。島さんはこう考える。
 「この揚げたてのドーナツ持ってみてください。軽いでしょ? 水分が躍っているからなんです。分子レベルでは運動して空中に浮いている。油も温度が上がれば軽くなるでしょ」

ベーコンポテトコロッケ


ベーコンポテトコロッケ

 科学的事実としては、水分を蒸発させたがゆえに軽く感じるのだろうが、イメージ的にはおいしさをよく捉えている。揚げたてカレーパンの躍り食い。宙で「躍って」いるかのように軽く、味わいは生き生きとしている。あまりに軽くて、シマのカレーパンはもう1個食べたくなる。最初の1個はリピートの果てしなきメビウスの輪への入り口だ。

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外観


外観

■ブーランジュリ シマ(しまぱん)
東京都世田谷区三軒茶屋2-45-7 グリーンキャピタル三軒茶屋103
03-3422-4040
9:00~19:00
月・火曜休み
https://ameblo.jp/shimapan3cha/

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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