リノベーション・スタイル

特別編<3>もっと自由に暮らす。 ~一棟まるごと&戸建てのリノベーション事例

  
 自分らしく暮らすために住まいを編集する――。「ブルースタジオ」が手がけたリノベーション事例を紹介する「リノベーション・スタイル」も連載を開始して5周年を迎えました。全4回の特別編として、ブルースタジオ執行役員の石井健さんに「リノベーションの始め方」、「中古マンションのリノベーション事例」、「一戸建てリノベーション事例」、「お金のはなし」とテーマごとにお話を伺いました。
「特別編<2>もっと自由に暮らす。~中古マンションのリノベーション事例~」
「特別編<1>リノベーション、どう始める?」

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  前回は中古マンションのリノベーション事例を世帯別にご紹介しました。今回は一棟まるごとのリノベーションや戸建てのリノベーション事例です。

 まずは連載第137回でご紹介したKさんの事例です。大田区にある築40年以上の2階建てですが、60平米ととてもコンパクト。奥まった路地裏にあり、もともと1階にはほとんど日が当たりませんでしたが、玄関の向きや階段の位置を変え、外壁を壊して家の中に光と風を取り込みました。さらに断熱工事や、区の助成金を使った耐震補強までも実現。こういった全面改装はマンションではできない、戸建てならではのリノベーションです。

天井までの大きな壁面収納。壁の向こう側はサニタリー


天井までの大きな壁面収納。壁の向こう側はサニタリー

 第147回でご紹介したHさんの事例も戸建てならではのリノベーションです。世田谷区の閑静な住宅街にある築38年の2階建ての一戸建て。庭の木が伸び放題で1階は湿気がたまりやすいことに加え暗く、天井が低い物件でした。
 思い切って2階にあったバルコニーと1階の庭の木を撤去。さらに、3部屋に分かれていた1階の壁をすべて取り払い、一続きのリビングに。今までの空間が嘘のように光あふれる明るいリビングに生まれ変わりました。部屋の天井も少し高さをあげ、庭があった場所にはテラスを造り、リビングの延長として外を楽しめる空間に。玄関からテラスまで視線が抜けるよう、既存の壁に窓をつくったりと戸建てだから実現できる大胆なリノベーションですね。

リノベーション前の外観


リノベーション前の外観


リノベーション前のリビング


リノベーション前のリビング


リノベーション前の1階の庭


リノベーション前の1階の庭


リノベーション前の玄関まわり


リノベーション前の玄関まわり

 3階建ての家をまるごとリノベーションし、住居兼事務所のSOHOをつくったのは、第139回でご紹介したMさん一家。エディトリアルデザイナーのMさんご夫婦は1階を事務所にし、2階を書斎兼打ち合わせスペース、3階をLDKにしていました。しかし、10年ほど経つとさらに本が増えたため、2階に本を置けるスペースを増やすことに。そして2017年、2回目のリノベーションを行いました。新たに設置した本棚はすべて造り付けです。というのも、東日本大震災のときにかなりの本棚が倒れてしまったそうですが、1回目のリノベーションで造作をした本棚は大丈夫だったため。耐震のことも考えて本棚を作り付けにしました。今回は大きくなったお子さんのために、子ども部屋も造りました。このように、家族の成長に合わせて住まいを変えられるのはリノベーションのメリットですね。

特別編<3>もっと自由に暮らす。 ~一棟まるごと&戸建てのリノベーション事例

リノベーションした後の2階の書庫、書斎


リノベーションした後の2階の書庫、書斎

 第155回でご紹介したAさんのリノベーションもインパクトのあるものでした。Aさんの自社ビルの最上階、ペントハウスを“究極にリラックスできる空間にしたい”という依頼で始まったこのプロジェクト。最終的には広いソファで部屋をぐるりと囲み、天井はモルタル仕上げのドーム状に。まるで包まれるような空間が出来上がりました。なかなかまねできないリノベーションですが、生活するための空間だけでなく、こういう場所を誰かとシェアして楽しむ、という考え方は参考になるのではないでしょうか。

  

 連載では取り上げていませんが、3階建ての戸建てを相続され、1階をオーナーさんの自宅に、2階、3階を賃貸用の住居にして“お金を生む住まい”を実現された事例もあります(「BOTAO」)。ワンフロアは37平米ほどとコンパクトですが、1人にはほどよい大きさ。1階の住まいは、もともと基礎だったところを半地下のようにしてベッドを置き、寝室として使っています。ほどよいこもり感があり、使い勝手もいいようです。

1階のオーナーさんの部屋


1階のオーナーさんの部屋


2階、3階の賃貸用住居の一室


2階、3階の賃貸用住居の一室

 さらに、賃貸の事例ではありますが、一軒家の1階をカフェに、2階をご自宅にリノベーションした事例もあります(第138回、おおたはらさんご夫婦)。2階はすでにフルリノベーションされた空間でしたが、1階は改装自由という条件での賃貸。そこで、ご夫婦は既存の木製建具やチェッカー床など既存の空間をいかしつつ、ご自分たちの手ですてきなカフェに変身させました。

喫茶スペースはかつて居間だった場所


喫茶スペースはかつて居間だった場所

 昔から商店街の八百屋さんのように、1階を店舗に、2階を自宅にというスタイルはありましたが、これはその現代版みたいなもの。最近多いのはパン屋やカフェ、雑貨やアクセサリー屋さんを併設することですが、戸建てのリノベーションでは、こういった店舗型住居を造ることができます。

 中古マンションだけにこだわらず、戸建ても視野に入れていくと、リノベーションの幅はさらに広がりますね。

(文 宇佐美里圭)

 第4回「お金のはなし」は、3月29日(木)更新予定です。

PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

特別編<2>もっと自由に暮らす。~中古マンションのリノベーション事例~

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特別編<4>リノベーションとお金のはなし

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