花のない花屋

夫婦になった瞬間から、がんと向き合っていくことになった私たちに

夫婦になった瞬間から、がんと向き合っていくことになった私たちに

〈依頼人プロフィール〉
高橋歩さん 32歳 女性
東京都在住
会社員

    ◇

 夫と交際し始めて間もないとき、腰のあたりにしこりが見つかりました。痛みはなかったのでしばらく放置していましたが、あるとき何気なく彼にそのことを話すと、お医者さんに診てもらうことを勧められ、病院へ行きました。

 外から見ると8センチほどの大きさがありましたが、いろいろな検査をしても正体がわからず、近所の病院では「この部位はだいたい良性ですから大丈夫ですよ」と言われました。

 そうこうしている間に私たちは結婚を決めたのですが、その半月ほど前に、滑膜肉腫(かつまくにくしゅ)という希少がんであることが発覚しました。病名の告知を受けて帰宅する途中、結婚は保留にした方がいいのではないかという気持ちと、闘病中彼に支えてほしいという気持ち、両方があってどうしたらいいのかわからずにいました。

 でも、そんな迷いは一瞬で消えました。帰宅して彼に病気のことを告げるやいなや、彼は「そばにいます」という言葉をくれたのです。

 お互いの家族も「ともに病に立ち向かっていこう」という言葉をかけてくれ、予定通り昨年11月に婚姻届を出し、私たちは夫婦になりました。

 切除手術は無事12月に終え、幸いなことに転移はなかったので、しばらく休んだらまた普段の生活に戻れそうです。とはいえ、これから10年間は再発と転移の検査を受け続けなくてはいけません。

 そこで、夫婦となったその瞬間から、私のがんと向き合っていくことになった私たち二人に、希望の花束を作っていただけないでしょうか。

 彼はとても真面目で誠実な人です。真面目すぎて、知り合ってから告白するまで3カ月、10回くらいデートをしたほどです。結婚した今も、私のことをとても大事にしてくれ、何をするにも私のことを優先してくれます。もちろん私だけでなく、自分以外の周りの人に不器用なくらい丁寧に接する人です。

 彼の職業はシステムエンジニアで、毎日遅くまで働いています。私たち夫婦がともに好きなブルーと、登山が好きな彼にちなんでグリーンを中心にアレンジをしてもらえるとうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。

夫婦になった瞬間から、がんと向き合っていくことになった私たちに

花束を作った東さんのコメント

 夫となられる方が素敵な人でよかったです。今回は高橋さんの彼への思いを込めてアレンジさせていただきました。

 メインはお二人が好きなブルー、デルフィニウムの花です。長めに切って高さを出し、明るい未来へ伸びて行くイメージで挿していきました。

 一方、デルフィニウムのまわりはご主人が好きなグリーンでまとめています。シキミア、エリンジウム、ポリシャス、セダムなど濃い緑色で、しっかりとした植物を選びました。また動きをつけるために、タマネギ科のアリアムをぐるりとまわしています。お花が終わってもグリーンの部分はしばらく持つはずですので、枯れた花を抜きながら長く楽しんでください。

 これからも末永く、お二人の関係が続きますように。

夫婦になった瞬間から、がんと向き合っていくことになった私たちに

夫婦になった瞬間から、がんと向き合っていくことになった私たちに

夫婦になった瞬間から、がんと向き合っていくことになった私たちに

夫婦になった瞬間から、がんと向き合っていくことになった私たちに

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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