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『GINZA』中島敏子編集長が交代前に問う「流行」写真集

撮影/馬場磨貴

撮影/馬場磨貴

『GINZA』の編集長が代わる――。今年の1月、衝撃のニュースが舞い込んだ。雑誌は編集長のカラーが出るほど面白いものだと思っている。編集長が代わると同じタイトルでも違った面白さが出てくるという体験を何度もしてきた。

日本発のモード誌『GINZA』に出逢ったのは今から13年以上も前のこと。現『Ku:nel』編集長である淀川美代子さんが手掛けていた時代だ(憧れの淀川さんについては過去にこちらで書かせて頂きました)。以来毎月欠かさず読み続けている、まさに私の人生の半分近くをともにしている大好きな雑誌だ。

トレンド紹介からカルチャー誌へと雑誌の流れを変えた

特にのめり込むようになったのは、2011年5月号、編集長が中島敏子さんに代わってからだ。あの時、手にとった瞬間に感じた、革命が起きた、という興奮を今でも鮮明に思い出すことができる。

女性ファッション誌は、当たり前だがファッション情報が中心の記事構成だ。だがこのリニューアル号で重きが置かれたのは、ファッションというよりも生き方だったように思う。登場する女性たちのインタビューをはじめとするフォーカスの当て方に唸(うな)った。そしてカルチャー要素が今まで以上に充実し、ファッショントレンドを紹介するにとどまらず、カルチャー誌の面も持ち合わせるような雑誌になったのだ。

今ではどの女性ファッション誌でも当たり前のようになっているライフスタイルに比重を置く誌面構成はこの『GINZA』リニューアル号からの流れだと私は分析している。特に20~30代向けの女性ファッション誌で、食・インテリア・旅・映画などファッション以外の特集を打ち出すことはあまり目立っていなかったように思う。まさに中島さんが手掛けた『GINZA』は日本のファッション誌の流れを変えたのだ。

『GINZA』中島敏子編集長が交代前に問う「流行」写真集

『GINZA』2018年4月号〔保存版 流行ファッション写真集〕 マガジンハウス 850円(税込み)

それは中島さんが、伝説の雑誌とも言われる『relax』の副編集長や『BRUTUS』での編集経験を経ての女性ファッション誌編集長という、当時では異色の経歴だった故であろう。編集長就任当初は、あまり良い目で見られないことも実は少しあった、と当時のことを伺ったことがある。そんな逆境に立たされた中でのプレッシャーはものすごいものだったに違いない。

そんな中で、あのリニューアル号からブレることなく新しい『GINZA』をつくり続け、男性読者までをも獲得していったのだからすばらしい。何事も貫き通すことが大切なのだと改めて感じ入ったエピソードだ。

編集後記の中島さんの言葉に、震えた

そして話を冒頭に戻すと、中島さんが手掛けるものはあと1号で終わりを迎える。現在発売されている2018年4月号の特集は、「流行ファッション写真集」。実はこの特集、中島さんからの熱いメッセージに応えた写真家と一緒につくりあげた作品集である。

日本の写真家たちの才能と努力が合わさって完成したこの号は、写真集が多くの人々に影響を与えるように、ファッション誌が果たすべき役割を問いかけるような、そんな問題提起をしている重要な号になっているのではないだろうか。

そして、ユーモアを交えて語られる舞台裏の話。プロフェッショナルの仕事の裏側まで垣間見られる面白さが、よりこの特集に深みを増している。ものづくりにかける大きな情熱に、心が動く読者が絶対にいると思う。私は編集後記の中島さんの言葉に、震えた。そう、これが雑誌の力なのだ。

きっと中島さんの血を継承しながら、また新しい『GINZA』が生まれるのだと思うと今から楽しみで仕方ない。

     ◇

*今回の更新をもって、私が書かせて頂くものは最後となりました。前連載時より長きにわたり、お読み頂いた方へ心より感謝致します。本当にありがとうございました。

(文・高山かおり)

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高山かおり(たかやま・かおり)

代官山 蔦屋書店 マガジンコンシェルジュ。北海道生まれ。
某セレクトショップの販売員として5年間勤務。在職中にルミネストシルバー賞を受賞。2012年4月より現職。主に国内の雑誌・リトルプレスの仕入れ、マガジンストリートでのフェア・イベントの企画を手がける。初めて読んだ雑誌は、4歳のときに出会った『こどものとも』。

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