このパンがすごい!

人気店シェフがついに旗揚げ! 「ハード系三銃士」が食卓を彩る/ショウパンアルティザンベイクハウス

 

ハード系三銃士。右からカントリーブレッド、麦畑の波音、ライ麦畑の波音


ハード系三銃士。右からカントリーブレッド、麦畑の波音、ライ麦畑の波音

■ショウパンアルティザンベイクハウス (栃木)
国産小麦を得意とする栃木県那須の若きスターシェフ・平山翔さんがついに独立。地元・那須にショウパンアルティザンベイクハウスを旗揚げした。

平山翔シェフ自らレジに立つ


平山翔シェフ自らレジに立つ

開店の日、平山さんは、作るパン同様のやわらかな物腰で売り場に立っていた。この店のコンセプトは「職人に会えるアトリエ」。製造スタッフ5人全員が販売も兼ねる。それは、平山さんらしい、小麦畑への真摯(しんし)な思いから生まれてきた。
「『半農半パン』(パン屋が小麦も作るスタイル)という道もあるかなと思ったけど、僕に農業はできない。いま僕たちパン職人は農家さんに近づいたけど、お客さんからはまだ遠い。だったら、お客さんとパンをやりとりする中で、小麦のことを伝えていけたら」
小麦生産者と消費者、その間を仲立ちし、距離を近づける役割が、平山さんの考える新しいパン職人像だ。

カントリーブレッド


カントリーブレッド

立ち上げに際し、小麦から触発された三つの食事パンを作った。名付けて「ハード系三銃士」。生産者や小麦畑への思いが詰まっている。
「カントリーブレッド」は水分の多い生地を高温で焼ききるパン。がりがりの‪皮、‬たっぷんたっぷんな中身、気泡ぼこぼこ。麦の風味、発酵の香り、旨味(うまみ)、でんぷん質のフレーバー、いい酸味。それらがとろけ、はじけ、拡散する。でも決してマニアックではなく、ごはんのようにむしゃむしゃ食べられる。「朝は食パン」という人が、ハード系パンにチャレンジするときの次のステップになるだろう。
このパンには地元・北関東で生産される「ゆめかおり」(茨城県・ソメノグリーンファーム産)を使用。「北米産のような癖のなさと保水性をもっている小麦です」。あわせて、滋賀県・大地堂のディンケル(古代小麦)で風味のインパクトを出している。

麦畑の波音


麦畑の波音

三銃士の二つめは、「麦畑の波音」。小麦と酵母というパンを作るのに不可欠な二つのものへの最高のオマージュだと感じた。最初に嗅いだ香りに「うわー」とのけぞり、言葉を失った。レーズン種の香りはワインのようで、揮発性の香りがすーっと鼻腔(びこう)をつき、その背後でワイルドな香りがうごめいている。

北海道・十勝の自然栽培生産者・中川泰一さんの「ノアR」を使用。真っ黒な焼き色も、モルトのような濃厚な甘さも、小麦が活(い)きていて酵素が活発に働いている証拠。飲み込んだあと、口の中に草の香りが残っていた。たい肥ではなく、草を肥料にする、中川さんの小麦ならではの味わい。
「最初はふるってふすまを取り除いていたのですが、ふるうのをやめたら真っ黒になりました。成形冷蔵(前の日に成形まで済ませ、冷蔵庫で長時間発酵させる)だと、こんなふうにやわらかい歯切れになります」。
パウンドケーキかと思わせる、さっくり感はそのせいだ。

ライ麦畑の波音


ライ麦畑の波音

三銃士三つめは、「ライ麦畑の波音」。栃木県上三川町の自然栽培農家・上野長一さんのライ麦を使用。上野さんは国産でまれなライ麦を、「ルヴァン」(元祖カンパーニュ専門店)に長年供給してきた長老。栃木の里山のテロワールに満ちた麦はどんなパンになったか? まるでカカオのような香りがした! エネルギーにあふれているのに、品のある味わい。噛(か)み進めると、お米のような風味に変貌(へんぼう)する。ねっちりと歯にくっつきながら、ほどけるような口溶けのよさで、これも食べやすい。
「上野さんのライ麦と中川さんの『ノアR』をブレンドしたらおいしいパンができました」

全粒粉のパン・ド・ミ


全粒粉のパン・ド・ミ

食パンにも力を入れている。全粒粉のパン・ド・ミは、貴重な国産の胚芽(はいが)を使用する。カットするのが困難なほどのふにゃふにゃさ。あまりにもふわふわでエアリーなため、思わず綿菓子みたいにすーっと吸い込んで楽しんだ。舌に着地した瞬間にじゅるりと溶ける飲み物感覚。深呼吸したくなる胚芽の香り、全粒粉の香り。麦の香りがカンパーニュのように濃厚なのに、テクスチャはエアリーという、あまりの矛盾。平山シェフの技術のすごさである。

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外観


外観

■ショウパンアルティザンベイクハウス SHŌPAIN ARTISAN BAKEHOUSE
栃木県那須塩原市西三島3-183-276
0287-48-7707
10:00~18:00
火・水曜休み
※4月3〜5日は休み
Instagram:shopain_artisan

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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