相棒と私

森山未來さん「人間同士でやっているので妥協することも絶対に必要」

photo:matron


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友だちとも、恋人とも違う、同じ目的を共有する「相棒」とはどんな存在? 「相棒」との大切なエピソードを語っていただく連載です。今回は、俳優でもなくダンサーでもなく、自身を「表現者」と語る森山未來さんにお聞きしました。

私:森山未來
相棒:大植真太郎(ダンサー、ダンスカンパニー「C/Ompany」主宰)
   平原慎太郎 (ダンサー、ダンスカンパニー「OrganWorks」主宰)

土俵のように設(しつら)えられた舞台の周りをぐるりと観客が取り囲む。パフォーマーが自在に体を動かし3人が1つになったり、2人に別れたり。3人のパフォーマンスを見ているうちになんだか人間の境界線さえも曖昧に感じられていく――。

大植真太郎さん、森山未來さん、平原慎太郎さんによる「談ス/NUDE」が4月5日、神奈川県横浜美術館グランドギャラリーで開催された。同館で開催中のヌードをテーマにした展覧会「ヌードNUDE〜英国テート・コレクションより」の一夜限りの特別企画。5月中旬からは談スシリーズ第3弾となる全国ツアーがスタート。それを前に森山未來さんが「相棒」を語った。

「作品を一緒に作ろうとする人が、『相棒』という存在であるかどうかが大切。一緒に作っていて面白そうだ、と思える人かどうかだけで仕事を選んでしまうところがあります」

その森山未來さんにとって今の相棒は、2014年から「談ス」シリーズを共に作り込んできたダンサーの大植真太郎さんと平原慎太郎さん。

そもそも3人が「談ス」シリーズに着手することになったのは2014年。当時、森山さんは文化庁文化交流使としてイスラエルに、平原さんは文化庁新進芸術家海外研修でスペインに滞在中。スウェーデンを拠点に活動する大植さんの掛け声で3人が集合して創作を始めた。

写真左から、大植真太郎さん、平原慎太郎さん、森山未來さん/photo:matron


写真左から、平原慎太郎さん、大植真太郎さん、森山未來さん/photo:matron

年齢もキャリアもバラバラだが、「3人の間にヒエラルキーがあるわけではない」と森山さん。「作品づくりはみんなイコールの状態で、同じ目線で行っています。その時々に自分が感じていることをお互いに出し合って、みんなが何かしら共有できたらそれを大きなコンセプトとして動き始めます」

出てくるアイデアは体、言葉、音楽、ビジュアル……とジャンルは様々。次から次へと派生していったイメージを数珠繋ぎのようにつなげていく。一方で、コンセプトからどんどん脱線していく可能性もあるので、その見極めをお互いに大事にする。

作品の大まかな流れを作るのは大植さんと森山さんだ。森山さんはロジカル、大植さんは感覚派とタイプは正反対。平原さんも感覚派ながら、2人を客観的に見て煮詰まった時などに「合いの手のようなものを入れる」ような役回りだという。

「僕だけではロジカルなダンスばかりになってしまい、整理されすぎてつまらないものになってしまうかもしれない。2人の感覚的な部分で行動できる強さにはかないません。ただ、大植さんだけだと感覚的過ぎるところもあり、ビジュアル的には面白くても観客は何が起こっているか全く認識できないということが起きる可能性もある。そういうことを3人がお互いにきちんと見ているからこそ、良い関係を築けているのかもしれません」

三人三様タイプの違う人間が最高の作品を生み出そうとすれば、当然、意見の食い違いは出てくる。お互い曲げられない部分もあるから、対立も避けられないと森山さん。では、そんな時はどう対処しているのか?

「暗黙の了解であるのが、相手を『否定はしない』ということです。例えば、だれかからアイデアが出た時に、『面白くない』とか『違う』と否定せず、一回自分を通して『それならこんなふうに考えられるかな』と考えてみる。アイデアを聞いた瞬間は『ない』と思っても、もしかしたらこういうふうに変換できるかもしれないと、一度チャレンジしてみる。そこで違ったら「やっぱりなかったか」となってもいい。最初から『ない』と否定することは極力しません」

一つの見方に何か違うエッセンスが加わることで、Aという方向にもBという方向にも行ける可能性があることを3人は知っている。だからこそ、他の人の意見を待っているようなところもあるという。

対立さえ楽しめるのが“相棒”

「人間同士でやっているので妥協することも絶対に必要です。人によってはそれをネガティブに捉えるかもしれない。でも、生きていくためには絶対に他者がいないと存在できないわけですし、そこで妥協せずに生きていくなんて綺麗ごとですらない、と僕は思います。そういう意味では、対立が生まれたときに、基本的には折れる理由がないので下りられないんですけど、このままでは絶対に破綻するとも思っていない。何かが動く瞬間を待つ。するといくら僕が否定しても、そのうちいいと思う方向に自然と転がっていくものです」

真剣にものづくりに励むからこそ対立があるのは当然――。森山さんの話を聞いていると、対立さえ楽しめるのが“相棒”関係なのだと思えてくる。

「僕は人を引っ張ろうとしてしまうタイプなんですが、2人はそれで簡単に動くような人たちでないから面白い。なかなか動かないということを楽しめるので、僕もガンガン投げていけるし、彼らは動かない時は動かないし、乗ってくる時は乗ってくる。お互いそうなんですよ。3人それぞれアプローチの違いはあれども、自分自身を信じている力と、お互いをリスペクトしている力があるからこそ、ひとつのものを作り上げることができる」

ダンスパフォーマンスに限らず、物事はテンプレートで作ることはできない。人と人との対話の中から生まれる「できること」や「やるべきこと」が見つかっていくと森山さんは確信している。

「僕は対話をあきらめない人と作品を作ることが好きです。方法論で物を作っている人ではなく、今ここにある環境で、ここにある人とどういうふうに物事を作っていくのか、きちんと考えている人と仕事をしたい。一緒に仕事をしていておもしろいなと思う人たちって、自分のペースを無意識にでも意識的にでも、すごく大事にしている人たちだなと思うことが多い。そんな人たちが僕の相棒なのかもしれません」

森山未來さん

森山未來
1984年8月、兵庫県出身。多くの舞台や映画、ドラマで活躍する一方、ダンスパフォーマンス作品にも積極的に参加。2013年秋から1年間、文化庁文化交流使としてイスラエルに滞在。Inbal Pinto&Avshalom Pollak Dance Companyを拠点にベルギーほかヨーロッパ諸国にて活動。俳優やダンサーといったカテゴライズに縛られない「表現者」としてのあり方を日々模索中。映画「怒り」で第40回日本アカデミー賞優秀助演男優賞、第10回日本ダンスフォーラム賞他、映画、舞台、ダンス各方面で様々な賞を受賞。

森山未來さんからのお知らせ

森山未來さん「人間同士でやっているので妥協することも絶対に必要」

大植真太郎、森山未來、平原慎太郎の3人によるダンスパフォーマンス第3弾。
【公演情報】
2018年5月〜6月、東京・中野「なかのZEROホール」での公演(5月15日)を皮切りに、全国15都市で上演。
詳細は、http://www.dansu2018.com

editor’s note-インタビュー後記-

談ス第3弾のこのタイトルをどう読みましたか? 縦に読んだり横に読んだり。さらには、右から読んだり左から読んだり……。自由に読んでください、と森山さん。みなさんはどう読みますか?

PROFILE

坂口さゆり

生命保険会社のOLから編集者を経て、1995年からフリーランスライターに。映画評や人物インタビューを中心に、金融関連や女性のライフスタイルなど幅広く執筆活動を行う。ミーハー視点で俳優記事を執筆することも多い。主な紙媒体に、「朝日新聞」(朝日新聞社)「AERA」「週刊朝日」(以上、朝日新聞出版)「Precious」「女性セブン」(以上、小学館)「プレジデント」(プレジデント社)など。著書に『バラバの妻として』(NHK出版)『佐川萌え』(ジュリアン)ほか。

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