猫と暮らすニューヨーク

トラウマを乗り越えて。ベンガル猫と戯れる毎日

「こんなふうに手の上に載せることもできるんです」とクリオを軽々持ちあげるケイトリンさん。クリオもごきげんです。


「こんなふうに手の上に載せることもできるんです」とクリオを軽々持ちあげるケイトリンさん。クリオもごきげんです。

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Miss Cleo(ミス・クリオ)6カ月 メス ベンガル
飼い主・ウィリアムズバーグにあるショップMOCIUN(モーション)のオーナーであり、デザイナーのCaitlin Mociun(ケイトリン・モーション)さん。ブルックリンのアパートメントにて、ボーイフレンドでデザインスタジオ主宰のTammer Hijazi(タマー・ハイジャジ)さんと暮らす。

「以前、大きな黒いオス猫を飼っていたんです。名前はジュダ。宝石のオパールみたいな、それはもう美しいグリーンの瞳を持った保護猫でした。とても困ったことに、人間に噛みつく、攻撃的な性格だったんです」
そう話すのは、現在はベンガルの子猫と暮らすケイトリンさん。12年間に渡り暮らしていたオス猫のジュダは、良くも悪くも、思い出深い猫だったという。
「家の中を歩いている人の足にいきなり噛みつく、服の上から腕に噛みつく。しかも噛んだときのあごが震えているんです。本気だぞ、っていう証拠ですよね」
あるとき、2歳の女の子がケイトリンさんの自宅に遊びにきた。猫を目の前に、好奇心でいっぱいの女の子と、身を固くするジュダ。しばし沈黙の睨みあいが続いたあと、ジュダが“シャーッ”と威嚇して先制攻撃。女の子は、“キャーーーッ!”というものすごい悲鳴をあげて、退散したのだとか…。
いつも怒っていて、人生を楽しんでいるように思えない。そんな飼い猫を、どうしたら幸せにできるだろう。ケイトリンさんは徹底してリサーチし、猫の問題行動を落ち着かせるというハーブや薬を試したという。どれも効果がないまま、やがてジュダはストレスから深刻な病気になり、亡くなってしまった。最後は、部屋中がジュダの血だらけになった。
「それは言葉では言い表せないほど、辛い出来事でした。深く傷つきました。トラウマです。もう猫なんて一生飼えない。そう思いました」(ケイトリンさん)
そんなケイトリンさんを今、慰めている存在がベンガルの子猫、クリオだ。

野性のヤマネコが祖先のベンガル猫は、美しい斑模様がチャームポイント。母猫が白いベンガル猫のためか、クリオもやや白っぽい毛色です


野性のヤマネコが祖先のベンガル猫は、美しい斑模様がチャームポイント。母猫が白いベンガル猫のためか、クリオもやや白っぽい毛色です

ジュダが亡くなって1年が経ったころ、ケイトリンさんの無類の猫好きを理解しているボーイフレンドのタマーさんが、猫を飼うことを提案したという。
最初は大反対したケイトリンさんだったけれど、「数日考えて、きっとそれは幸せな選択だと決心した」という。以前飼っていたジュダのこと、トラウマがあること、それらを親身になって聞いてくれるブリーダーに出会い、生後3カ月のベンガルの子猫を飼うことに決めた。それはタマーさんからケイトリンさんへの、誕生日プレゼントだった。
「クリオは、とにかくフレンドリー。これまで出会ったことがないぐらい社交的な猫」と頬をゆるめるケイトリンさん。料理をしていればそばに近寄り、その様子を熱心に眺め、二人がソファに座って映画を見ていれば、寄り添い共に鑑賞する。テーブルで夕食を食べていると、膝の上に座ることも。とにかく飼い主にべったりだ。

リビング&ダイニングには、クリオのために設置したキャットウォークがあります。インテリアにぴったりなキャットウォーク、なんとIKEAの棚板を使ってDIYしたそう


リビング&ダイニングには、クリオのために設置したキャットウォークがあります。インテリアにぴったりなキャットウォーク、なんとIKEAの棚板を使ってDIYしたそう

一方で、野生のヤマネコが祖先のベンガル猫だけに、運動能力が高く、常にエネルギッシュ。おもちゃを追いかけて走りまわり、高々とジャンプを披露したりする。
「シーツや洋服、何かにもぐりこむことも大得意」というクリオが、ケイトリンさんを驚かせたのは、クリオが家にやってきて2日目のことだった。
ベッドルームにクリオを置き、ドアを閉めて出かけたケイトリンさんがランチのため自宅に戻ると、ベッドルームにクリオの姿がなかった。
「どこを探してもいないんです。名前を呼びながら、バカげてると思える場所まで探しました。枕の下、ドアがきっちり閉まっているクローゼットの中、便座の蓋が下りたトイレ、しまいにはベッドルーム以外の部屋まで!」(ケイトリンさん)
するとベッドルームで、小さな鳴き声がした。クリオが這い出てきたところは、なんと枕カバー。「クリオを探して枕を持ちあげたとき、その中にいたなんて! まったく気づきませんでした」(ケイトリンさん)。なんとも微笑ましいハプニングである。

スウェットパンツの中へもぐりこんだクリオ。ベッドのシーツにもぐるのも大好き。「家に来た日の夜から私たちのベッドに入ってきて、一緒に寝たんです」(ケイトリンさん)


スウェットパンツの中へもぐりこんだクリオ。ベッドのシーツにもぐるのも大好き。「家に来た日の夜から私たちのベッドに入ってきて、一緒に寝たんです」(ケイトリンさん)

「クリオはエネルギーで溢れんばかり。だからよく遊ばせるようにしています。週に7~8個は、オモチャを買っているかも」と話すケイトリンさんは、この日の撮影の最初から最後まで、クリオと飽きることなく遊び、時にはクリオを抱き上げ、愛おしそうにハグをした。辛い過去やトラウマがあっても、こうやってまた猫と笑顔で暮らせる日がくる。人間が内に秘めた強さ、そして猫という生き物がもつ癒やしの力を、感じずにはいられないのでした。

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

猫のクリオのインスタグラム
http://www.instagram.com/misscleo_callmemeow
MOCIUNのウェブサイト
http://mociun.com/

写真・前田直子

PROFILE

仁平綾

編集者・ライター
ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.bestofbrooklynbook.com

前田直子(まえだ・なおこ)

写真家

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

トラウマを乗り越えて。ベンガル猫と戯れる毎日

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ブルックリンのオス猫、ある日家までついてきた

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