このパンがすごい!

「他のパンよう焼かんので(笑)」大阪下町のフォカッチャ専門店/パンヤ

外観


外観

 さすが粉もんの町。まるでお好み焼き屋のようなパン屋があった。大阪の下町、玉造。築約80年を数えるクラシックな交番の隣に、そのままずばり「パンヤ」の看板。

 外に面した対面式の売り場は、さながらたこ焼き屋の趣。売っているのはフォカッチャのみ。といっても、ガラスケースにずらり、変わり種が並ぶ壮観。マルゲリータ(これは定番)、ローストポーク(うん、イタリアっぽい)、キーマカレー(カ、カレー!?)、ハチミツチーズ(甘いパンもフォカッチャで!?)、ミルクイタリア(ミルクフランスじゃなくて!?)……。

キーマカレー、マルゲリータ、ハチミツチーズ


キーマカレー、マルゲリータ、ハチミツチーズ

 フォカッチャは、本場イタリアそのままではなく、ごはん民族・日本人に絶妙にマッチさせたもの。上と下のかりかり部分はとにかく歯切れがいい。白いところは食パンかコッペパンレベルにふわっふわ。だけでなく、ぷにっぷに。そして、口溶けのちゅるー。

ローストポーク


ローストポーク

 それに加えて、具の部分が、イタリアと関西風味を融合させた感じ。「ローストポーク」は、はじめはそっけなく豚の肉っ気が入ってくる。そこへバジルソースがイタリアの風を強烈に吹かせる。さらに旨味(うまみ)とうるおいを添える野菜のグレービーソース。口なじみがよく、焼き肉のタレのようなコテコテ感がある。イタリアと関西という対極の異文化がハイブリッドする。

後ろ姿は中津シェフ


後ろ姿は中津シェフ

 店主の中津さんは、ピッツァ屋から「パンヤ」に転身した。なぜフォカッチャ専門店だったのか?

「ピッツァに限界を感じて。もっと広い層に食べてもらいたいと思ってパンヤをやりました。他のパンよう焼かんので(笑)」

 熟成された生ハムやチーズに合う力強いイタリアのフォカッチャとはちがう。食パンみたいにふわふわのパンに、日本人の舌になじんだ具材をのせ、テイクアウトで気軽に買える「お好みパン」。「お好み」であり「エコノミー」な新しいパンの誕生。

「フォカッチャって自由。なんでも具をのせられる。もともとピッツァがやりたかったん、自由だから。でも、僕らイタリア人でもないし、ナポリ出身でもない。だから、日本人にどう近づけてあげるかなんだと思います」

 もともとパン職人ではない。でも、イタリアンの料理人であり、ピッツァ職人であった。だから、発酵も窯も操れる。

「おもちのようなイメージでやりました。窯の温度はちょっと高温、若干短めに焼いています。焼きすぎると水分が飛んでしまうので。ノリはソフトフランス。主役のようで主役でないパン」

 具材もお手の物。イタリアンの技を応用しながら、着地点は日本人の「お好み」に。イタリアン的な味わいだなーと思った次の瞬間に、いつかどこかで食べたことある味わいにほっとしている。

鯖の燻製ポテトサラダ


鯖の燻製ポテトサラダ

 たとえば、「鯖の燻製ポテトサラダ」。どろっとしてこっくりとしたマッシュポテト。オイル感のほとばしりがそれを高め、さらにはフライドガーリックがかりかりぴりぴりと、旨味のムチをふるう。燻ったサバの薫香や、脂の旨味までじゃがいもが吸い込み、どんどん味わい深くなってくる。

 「照り焼きシーザー」。しょうゆ味に甘辛くぎゅっと強めで味付けした鶏肉。照り焼きといえば、マヨネーズが定番だが、ちょっとひねってシーザードレッシングで。野菜にあえているので、マヨ味がさわやかに肉とからむ。

 カラー舗装の下町商店街という立地に合わせた、関西風フォカッチャ。イタリアンとピッツァの素養がある中津さんにしか作れないものだ。いつ行っても数人が列をなしているのも納得。パンは人が作り、町が作るのだから。

小窓から受け渡す


小窓から受け渡す

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■パンヤ
大阪市東成区東小橋1-2-4
06-7505-9919
11:00~17:00
日曜休み

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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