ほんやのほん

数学と料理とは同じだ。『おいしい数学』

撮影/馬場磨貴

撮影/馬場磨貴

はじめてこの本に出会ったとき、摩訶不思議(まかふしぎ)なタイトルが気になり手を伸ばしました。
おいしい数学? どういうことだろう?
得意ではないけれど、料理にも数学にも関心の深い私は、このタイトルを見ただけでときめいてしまったわけです。

著者であるジム・ヘンリーの研究分野は数理論理学。
彼は数学も料理も愛しているが故に、このような本を執筆することになった人物。日夜、新しい数学パズルの考案やオリジナル料理でのおもてなしに情熱を燃やす、少し風変わりな数学者です。

どちらも「楽しさ」が原動力、そして…

まえがきにはこう書いてあります。
「正しい方向から眺めると、数学と料理は驚くほど似通っている。それが、この本の前提だ。数学と料理について調べ、その本質な類似性を明らかにする。それがこの本の目標だ」。

ただ、この本は「数学を料理に応用するものではない」。
著者が伝えたいのは、数学と料理の新しい見方を知ってもらいたいという思い、そして、真の主題は「楽しむこと」。最大の原動力は「楽しさ」であると。

繰り返しの作業、望みのない思索、深刻な間違いさえも楽しいと思える。何かに興味を持つとどこまでも調べ、うまくいくまで挑戦してみる。一見、とてもつらいと思うようなこの過程さえも、楽しもうとする気持ちは、数学や料理だけでなく、全てのことに通ずる気がします。

「数学と料理とは同じだ」という著者の思いに、訳者の水原文さんは、言いたいことがとてもよくわかると思ったそうです。
とっぴな考えのようですが、ときには大胆な発想で、またある時は慎重な手順を踏んで行う必要があるという点で、数学と料理は非常に類似していると。

『おいしい数学―証明の味はパイの味』ジム・ヘンリー 著 水原文 訳 岩波書店 2484円(税込み)

『おいしい数学―証明の味はパイの味』ジム・ヘンリー 著 水原文 訳 岩波書店 2484円(税込み)

数学と料理と聞くと、とても難解なことばかりが書かれているのでは? と思う方も少なくないと思います。
ですが、実はどちらも私たちの生活に、とても密着した存在です。
著者の語りかけてくるようなユーモアたっぷりの文章と、図解や可愛らしいイラスト、アメリカと日本の食文化の違いを知ることで、終始楽しみながら読み進めることができます。

数学も料理も苦手! と思っている方にこそ、ぜひ手にとってみていただきたいです。

PROFILE

蔦屋書店 コンシェルジュ

12人のブックコンシェルジュの皆さんに、
そのとき、一番おすすめの本を週替わりで熱くご紹介いただいています。
●代官山 蔦屋書店
間室道子(文学)
●二子玉川 蔦屋家電
岩佐さかえ(健康 美容)/大川 愛(食)/北田博允(文学)
嵯峨山 瑛(建築 インテリア)/中田達大(ワークスタイル)/松本泰尭(人文)
●湘南 蔦屋書店
川村啓子(児童書 自然科学)/重野 功(旅行)/羽根志美(アウトドア)
八木寧子(人文)/若杉真里奈(雑誌 ファッション)

大川 愛(おおかわ・あい)

二子玉川蔦屋家電、食コンシェルジュ。
書店・出版社で、主に実用書や絵本の担当を経験。
本に囲まれている環境が、自らにとって自然と感じる。

多和田葉子作品でしか体験できないこと。『地球にちりばめられて』

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境界線という幻想。『ナイトフライト』『新しい住みか』

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