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私にあう素材は何だろう。『白いシャツは、白髪になるまで待って』

私にあう素材は何だろう。『白いシャツは、白髪になるまで待って』

撮影/馬場磨貴

いつの頃からか洋服選びの際、素材にこだわるようになった。それまではデザインが気に入れば品質管理タグで確認するのはサイズと値段(殊に後者は一番のポイント)。もちろん年齢的なものなのか着心地を一番に考えるようになったことは否めない。直接肌に触れる物は化学繊維素材をあまり選ばなくなった。

他にも、この人にあう素材、この街にあう素材、この本にあう素材は何だろう? というようなことを考える。「素材」とはいろんなものを表す。「質感」もその1つである。本書の冒頭で「似合うものがわからなくなったら、質感優先に切り替える(抄)」とある。やはりそうなのか。素材にこだわり始めた自分は間違っていなかった。

私の父は今年で82歳になるが、未だにデニムのパンツをはいている(おそらく世代的にGパンというのであろう)。とりたてて「着こなしお洒落じいじ」というわけではないが、孫である娘たちからは少し恰好よく思われている。女性にとっても男性にとってもデニムの着こなしは永遠のテーマのように思う。デニム独特の質感がそう思わせるのか。

本書は91の項目に分かれており、どの項目も見開き2ページでまとめられ、とても読みやすい。目次を見ただけで共感できる項目がいくつも見つかった。

「ファッション迷子」に光明

その一つに、光野さんは40代後半からボーダーTシャツを封印していたとある。まさに今の私はそれだ! あんなに大好きだったボーダーが気づいたら似合わなくなり、持っていたボーダーものを何年か前にすべて処分した。

でもそれは一生のことではないらしい。逆もしかり、似合わなかったものが似合うようになるアイテムもあるとのこと。なるほどそうかもしれない! どうしても苦手意識があるトレンチコートは、いつかローレン・ハットンのように着こなせるようになるのだろうか。

40代50代は長いトンネルを匍匐(ほふく)前進していたのが、60代を迎え広い青空が開けたようになったと光野さんはいう。歳をとることにネガティブになり、何年かに一度やってくるファッション迷子、しかしその言葉が不安ばかりでなく、また日常の服選びに光明が差し込んでくる気持ちにさせてくれる。

光野桃さんはファッションジャーナリストでありながら、女性のからだや自然とのつながりについて書かれるエッセイストだと認識している。まさに内側と外側、からだと衣服、心と装いがつながり描写されていることを思わされる。それは人が持つ品位となって表されることなのかもしれない。

生き方とファッションは同じ

歳をとることに臆病になるどころか、「人は老人になればなるほど美しくなっていい筈」と、白洲正子さんは『たしなみについて』の中で書かれている。

生き方もファッションも主張しすぎず、尺の広さをもって構えたい。ブランド物を必死に持ち、ハイヒールをガンバって履いた20~30代を経て、私も余計なものが削げ落ちてきたのだろうか、最近はウェーブソールの靴底にネイルはもっぱら単色が気に入っている。

いつか「生きてきた歴史を知恵に変えて」(P.165より)、恰好いい女性になれるよう、知らず知らずに入っている肩の力を段々と抜いていこう。

(文・岩佐さかえ)


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