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5年後、あなたはどこで何を?『5(ファイブ)』

撮影/馬場磨貴

撮影/馬場磨貴

今から5年前、あなたはどこで、何をしていましたか? 1年前ならすぐに答えられそうですが、5年前だとどうでしょう。逆に今から5年後の未来、あなたはどこで、何をしているでしょうか? ふと立ち止まり、未来に想いを馳せることを、最近いつしましたか?

人生の手綱を握るのは誰か

「5年間」は短いようで長く、長いようで短い、不思議なスパン。ただ、人生の景色が変わるのに「5年間」は十分な長さでもあります。私に関していえば、大学時代に1年間休学をして、ふらふらと海外を1人旅していたのですが、それを終えて帰国した時期が、今から5年前の春先でした。

その旅を通じ、恥ずかしながら人生22年目で、「自分の人生の手綱は、ほかでもない自分自身が握っている」という、ある意味で当然の事実をはじめて強烈に認識したのでした。旅の中ではどこへ行くのも自身の心に従い、選択可能です(もちろん自分が責任を負う前提で)。

そして、生きていくこともそれと同じように、「選択の自由と責任」という手綱を握っているのは自分自身なのだと、雷に打たれたように気づかされてしまった後の、霧が晴れるように視界がクリアになり、希望と勇気がむくむくと湧いてきた不思議な感じを覚えています(私にとってはたまたま旅でしたが、人によってそれがスポーツだったり恋愛だったり読書だったりするのでしょうか)。

しかし、手触りまでわかるようなあのときの新鮮ではっきりした手綱の感覚は、5年の時を経て、日々の中で薄められていきました。

わたしだけの本。あなただけの本

『5(ファイブ)』は、あの手綱はまだ自分の掌の中にあることを、ままならない日常の途上で思い出させてくれる一冊です。

この本は、タイトルに「5」とあるように、5年後の自分をイメージしつつ、現在の自分は何を大切にしていて、これからどんな人生を歩みたいのかを「一緒に考える」本です。たとえば、あるページには「自分にとっての成功を定義する」とあります。見開きの左ページには、著名人たちが考える成功についての格言が紹介され、右側には自分にとっての成功とは何かを書き込めるスペースが用意されている、という具合です。

紙上で自由に展開するカラフルな文字やイラストを目で追うだけでも、十分楽しめるつくりが施されていますが、この本の最大の魅力はまるでテニスの壁打ちのように、本書を壁と見立てた言葉と思考のラリーを通じて、「自分の人生は自分が決める」というシンプルな事実に立ち戻れる点です。1冊読み終えた(書き終えた)頃には、今の自分の球筋・角度・圧力などが刻まれたあなただけの本になっていることでしょう(空振りや見逃しも含めて、今の自分の記録になります)。

未来をイメージするときに戻ってきた手綱の手触りが、どこか懐かしくもあります。

ちなみにオススメは、誰かを誘って一緒に楽しむこと。私の場合は妻を誘って2冊購入し、それぞれ書き込んでいきました。そのときだけでも当然楽しめたのですが、もうひとつルールを課して、5年後に見返すまで開かないことにしました。

そのため、我が家ではいまも本棚の片隅にひっそりと、開かれるのを待っている『5』が2冊あります。いつかそれを引っ張り出してきて、お酒でも飲みながら5年前の自分たちの記録を互いに見返すことを、ちいさな人生の楽しみにしています。

5年前のあのとき、ガンジス川のほとりの熱風の中で、パタゴニアの車窓から見えた青い地平線の中で、サハラの星空の中で感じた確かな手綱の感覚。それをわずか1センチの紙束の中に閉じ込めておけるという本のうれしさ。「わたしだけの本」になったこの本は、必ず「あなただけの本」にもなり得ると思うのです。

(文・中田達大)


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