猫と暮らすニューヨーク

失踪、猫取り違え。茶トラの兄弟猫をめぐる珍事件あれこれ

飼い主は引っ掻かないけれど、やはりソファはがりがりしてしまう2匹。「ありがたいことになぜかソファの横側だけを引っ掻くんです」とヒラリーさん。おかげで引っ掻き痕が目立ちません


飼い主は引っ掻かないけれど、やはりソファはがりがりしてしまう2匹。「ありがたいことになぜかソファの横側だけを引っ掻くんです」とヒラリーさん。おかげで引っ掻き痕が目立ちません

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Fred(フレッド) 7歳 オス、Franz(フランツ) 7歳 オス いずれも茶トラ
飼い主・インテリアスタイリストとして活躍する一方、『monochrome home』などの著書もあるHilary Robertson(ヒラリー・ロバートソン)さん。ブルックリンのブラウンストーン住宅に家族と暮らす

「猫を飼って一番幸せな瞬間? 子猫だったフレッドとフランツが家にやってきたときですね。シンメトリーに座ったり寝転んだりして、2匹のスフィンクスみたいだった。それから、行方不明になったフレッドが無事に家に帰って来たとき。フレッドはとんでもない冒険を経験しているんですよ」。
そう話すのは、トラ柄の兄弟猫フレッド&フランツと暮らすヒラリーさん。人懐っこく、ヒラリーさんにべったりなフランツに対し、フレッドは孤独を好み、好奇心が強い。その性格が災いしてか、二度の失踪事件を起こしてしまったようだ。

一度目は、一家が2匹を伴い、NY郊外の週末住宅に滞在していたときのこと。
突如フレッドの姿が見えなくなり、「脱走したものと思いこんでしまった」というヒラリーさんは、名前を呼びながら家のまわりを必死に捜索した。「猫を失った悲しさと喪失感でいっぱいでした。兄弟を失ったフランツも困惑しているようだった」(ヒラリーさん)。
そんなフランツが、物置部屋のかすかな物音に反応を示したのは数日後のこと。まさかフレッドが?という予感的中。なんと、そこに仕舞ってあったロブスターの仕掛け網の中に、フレッドが捕らわれてしまっていたのだとか。

二度目となる事件が起きたのは、数年後のクリスマスシーズンのこと。
休暇でロンドンに滞在していたヒラリーさん一家のもとに、NYのキャットシッターから電話が鳴った。「たまたま開けっ放しにしていたドアから、フレッドが逃亡してしまったという史上最悪の知らせでした。当時ニューヨークは雪が降っていて凍えるほど寒かった。私たちはすっかり取り乱してしまいました」(ヒラリーさん)

雪が降る真冬のニューヨークで、家から脱走したフレッド。10日間もいったいどこで何をしていたのでしょうか……


雪が降る真冬のニューヨークで、家から脱走したフレッド。10日間もいったいどこで何をしていたのでしょうか……

ニューヨークに戻るやいなや、迷い猫のポスターを作って貼り、ソーシャルメディアに投稿し、近所の家々を訪ねて探しまわった。「保護猫の活動をしている知り合いから、猫を捕獲するためのわなを借りて庭に仕掛けたりもした」とヒラリーさん。結果は、全く関係のない野良猫がわなにかかるという、おそまつなもの。何の進展もないまま数日が過ぎ、ヒラリーさんがすがるような思いで占師に電話をすれば、「フレッドはもう死んでいる」という残酷な答え……。

絶望的な気持ちで迎えたある晩のこと。玄関ドアの方から、か細い猫の鳴き声し、ヒラリーさんがドアを開けると、なんとそこにはやせ細り、薄汚れた猫のフレッドの姿が! 真冬のニューヨークで失踪すること10日間、奇跡の生還!

フランツの凛々しくハンサムな顔を、アップでお楽しみください


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さて、まだまだネタが尽きないのが、一家のすごいところ。ある時、こんな珍事件もあった。
郊外の週末住宅に滞在していたときのこと。ブルックリンの家では、上階に住む住人が庭先でオレンジ色の猫を発見していた。ヒラリーさんの猫が脱走したに違いない、そう確信した心優しき隣人は、素早く猫を捕獲。ヒラリーさんに知らせようと試みたが電話がつながらず、一家が戻るまで猫を自宅で保護することにした。

「私が仕事から帰ると、気配を察してかいつも窓際で待っているんです。猫には第六感がある、なんて言うけれど、本当にそうだなって思います」(ヒラリーさん)


「私が仕事から帰ると、気配を察してかいつも窓際で待っているんです。猫には第六感がある、なんて言うけれど、本当にそうだなって思います」(ヒラリーさん)

一方、そんなことを知る由もない一家は、週末住宅でフランツ&フレッドの猫2匹と共に優雅な時間を過ごしていた。週が明け、ブルックリンの自宅に戻ったヒラリーさんは、見たこともないオレンジ色の猫を隣人から差し出されて、びっくり仰天! まるでコメディーのような話である。

我が道を生きる猫たちと、猫思いの優しく一途な人間たち。その間で繰り広げられるドラマの愛(いと)おしいこと。フレッドが無事帰還した今だから言えるけれど、二度目の失踪時、庭にロブスターの仕掛け網を置いておけば、案外早くに見つかったかもしれませんね。

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

ヒラリーさんのウェブサイト
http://hilaryrobertson.com
ヒラリーさんのインスタグラム
http://www.instagram.com/hilaryrobertson

写真・前田直子

PROFILE

仁平綾

編集者・ライター
ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.bestofbrooklynbook.com

前田直子(まえだ・なおこ)

写真家

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

失踪、猫取り違え。茶トラの兄弟猫をめぐる珍事件あれこれ

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