ほんやのほん

学校に行きたいという気持ちがキラキラと。『すごいね!みんなの通学路』

ほんや0723

撮影/猪俣博史

みなさんは通学路というとどんなイメージをお持ちになりますか。
そしてみなさんには通学路にどんな思い出がありますか。

私の通学路。
実家のマンションのすぐ目の前にある小学校と中学校に通っていた私のそれは、通学路と呼ぶにはあまりに短い距離。
非常時に備えた集団下校の練習というような時にも、あっという間に家に着いてしまうので、なんの緊迫感もありません。
ちょっとの雨なら傘なんて要りません。忘れ物だってさほど怖くありません。レタスサラダを作る調理実習のレタスを忘れても、職員室から家に電話をかけたら母がすぐに校門まで届けてくれ、何食わぬ顔でやり過ごす、思えばとんでもなく甘えた境遇でした。

テレビから映画、今年は課題図書に

それはともかく、私が通勤途中で見かける今の子どもたちは、この時期、肩から水筒を下げて、みんな楽しそうに歩いています。楽しいばかりではない子もいるかもしれないけれど、ひとまずのんびりできる、安全な道を歩いています。

でも時には雨の日にびしょぬれになったり、風がとても強い日には体ごと持っていかれそうになったり、時には重い荷物を背負って疲れることもあるでしょう。

ところがこの絵本に出てくる世界のあちこちに住む子どもたちの大変さは、そんなものではありません。

こんなアスレチックのようなことを朝からやったら、学校に着く頃にはさぞかしぐったりして、勉強どころではないのでは? というような通学路。
ロバや牛などの家畜の背中にのって、延々と時間がかかる通学路。
お友達同士でちょっとふざけようものなら断崖絶壁の底に落ちてしまいかねない通学路。
そして勉強には欠かすことのできない、普通は持ち運ぶものではない○○を、毎日持ち運びしなければならない通学路……(○○はぜひ絵本を手に取ってご確認ください)。

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『すごいね!みんなの通学路』ローズマリー・マカーニー著 西田佳子訳 西村書店 1620円(税込み)

決して恵まれているとはいえない、こんな環境のなかで、こんな苦労をしてまでも、学校に行きたいという気持ち。
学校に行けばお友達や先生に会える、新しい何かを学ぶことができる、そんな期待に満ちた、キラキラしている子どもたちの瞳は、その「冗談みたいな」通学風景を、なんだか愉快な、楽しげなものに思わせてくれるから不思議です。
最初、私はこの「世界の通学路」をNHKのドキュメンタリーで見ました。その後、映画にもなり、そしてこの絵本は今年の課題図書にも選ばれています。

どんなに過酷な道のりでも、どれだけ時間がかかっても、毎日、友達や先生、そして新しい学びが待っている。だから今日も元気に家を出る。そんなシンプルな彼らの表情に、たくさんの勇気と元気をもらっています。
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PROFILE

川村啓子(かわむら・けいこ)

写真

湘南 蔦屋書店 児童書・自然科学コンシェルジュ。
読書といえば小説が主で大学も文学部、ずっと「人間のこと」ばかり考えてきましたが、このお仕事に出会ってからは「人間以外のこと」を思う時間が増えました。今気になっているのは放散虫。「自然界は美しいものだらけです」

PROFILE

蔦屋書店 コンシェルジュ

12人のブックコンシェルジュの皆さんに、
そのとき、一番おすすめの本を週替わりで熱くご紹介いただいています。
●代官山 蔦屋書店
間室道子(文学)
●二子玉川 蔦屋家電
岩佐さかえ(健康 美容)/大川 愛(食)/北田博允(文学)
嵯峨山 瑛(建築 インテリア)/中田達大(ワークスタイル)/松本泰尭(人文)
●湘南 蔦屋書店
川村啓子(児童書 自然科学)/重野 功(旅行)/羽根志美(アウトドア)
八木寧子(人文)/若杉真里奈(雑誌 ファッション)

5年後、あなたはどこで何を?『5(ファイブ)』

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