このパンがすごい!

えっ、パンの中にあさり!? 途中下車しても食べたい豊橋グルメを詰め込んだパン屋/豊市パン

店内風景


店内風景

新幹線を途中下車してでも食べたいパンが豊橋にある。豊橋駅から直結したビルにある「豊市」内に昨年オープンした「豊市パン」。豊橋をはじめとする東三河地方の特産品を使用。「こんなものまで!?」というような素材がパンに昇華している。

平松食品のあさりのしぐれ煮コンプレ


平松食品のあさりのしぐれ煮コンプレ

たとえば、「平松食品のあさりのしぐれ煮コンプレ」。全粒粉のパンの中から、しょうゆの甘さに満ちたダシ感が次から次へ湧き出してくる。ぷりっとなにかを噛(か)み、「これはもしや?」と思ったら、パンの中から本当にアサリが出てきた。生々しい貝の圧倒的旨味(うまみ)がすべてを塗り替えていく。ときどきショウガと山椒が和のスパイシーさをプラス。まさにパン全体で一個の佃煮と化している。

「地元にある老舗の佃煮屋さんの『あさりのしぐれ煮』を使用しています。カットしたものを汁もいっしょに全粒粉のパンに練り込んで、さらに成形のときに2、3個包んでいます」と荒川剛嗣シェフ。

丸八製菓のつぶあんバターサンド


丸八製菓のつぶあんバターサンド

「丸八製菓の桜あんバターサンド」(季節商品、現在休止中。いまは「丸八製菓のつぶあんバターサンド」[写真参照]を提供)は、「八雲だんご」で有名な地元の老舗「丸八製菓」の桜あんを使用。さっくりと心地よくパンが噛み切れた裂け目からあふれ出る、桜の香りをまとったかぐわしいあんこ。マトリョーシカのように、さらに中からとろけ出た大量のバターが合流、甘さとオイリーさの爆発を演出。風味がよく、歯切れがすばらしいブリオッシュには荒川シェフならではの技が潜む。

荒川剛嗣シェフ


荒川剛嗣シェフ

「生地をリバースシーター(クロワッサン生地をのばす機械)でのばして折りたたみます。発酵をとりすぎないよう、温度を上げずにゆっくり最終発酵させ、コンベクションオーブン(ファンで風を起こし対流で加熱するオーブン)で焼いているので、ふっくらしっとりになります」

「豊市野菜のナスとトマト」もまた然り。パンで盛り上げた土手に野菜からほとばしり出た旨み汁がなみなみたまっている様はまるで貯水池。だが、ふんにゃりとした食感もろとも噛みついた瞬間気づく。これは池ではなく、噴水なのだと。どびゅっとあふれる野菜ジュースの奔流。夏の太陽を浴びて完熟したミニトマトの味わい、その下はナス。トマトソースも相まって、甘酸っぱさと旨味がぎんぎんぎらぎらと感じられる。

このパンに使われるトマトとナスは、「豊市」内にある「くくむ市場」で売られるもの。ワゴンの上にたくさん盛られたトマトの種類は圧巻。青やオレンジ、ミニトマトもフルーツトマトもありとあらゆる種類、すべて地元産のものが売られる。

「豊市」は、名古屋や東京に負けないおいしいものを地元で提供したいという思いで料理に力を入れてきたホテルアークリッシュが運営。ホテルメイドのものを気軽に食べられて、買い物やランチなどで日常使いできる。地元の食材を積極的に使用することがコンセプト。

「この地域には、自然栽培の農家さんなど、いい生産者さんがいっぱいいる。地域の生産者の方、加工業者さんと、お客さんとの橋渡しをしたいと思っています」

A.R.T. TABLE。豊市内にあるホテルメイドのデリカテッセン


A.R.T. TABLE。豊市内にあるホテルメイドのデリカテッセン

パン屋、マルシェ、デリカテッセン、ジェラートからなる。イートインスペースが広くとられていて、あっちこっちで買ったものを組み合わせて食べるのが楽しい。デリカテッセン「A.R.T. TABLE」はホテルメイドのデリやサンドイッチが気軽に食べられる。サンドイッチのパンは、豊市パン製。

油淋鶏とたまごのタルタルドッグ


油淋鶏とたまごのタルタルドッグ

そのひとつ、「油淋鶏とたまごのタルタルフォカッチャサンド」(現在は、「油淋鶏とたまごのタルタルドッグ」[写真参照]に変更)。甘じょっぱいタレにぬれそぼる鶏カラは食欲の爆裂を呼び起こす。そこにさらなるこってりとまったりを加える卵のタルタルという禁断の組み合わせ。ふさふさなフォカッチャからオリーブオイルのオイリーな風を吹かせこってりをさらにあおりたてる。

店内にみちあふれる商品、パンでも加工品でも野菜でも、あれも豊橋、これも東三河といたるところ地元産。この地域が食材の宝庫であることがわかる。もはや、新幹線で豊橋を通るたび、途中下車したくて体がむずむずしてしまいそうだ。

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■豊市パン
愛知県豊橋市駅前大通1-135 ココラアベニュー2F
0532-54-3911
www.arcriche.jp/2017/07/07/toyoichi
10:00~20:00
年中無休(年末年始除く)

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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