このパンがすごい!

「365日」の杉窪シェフプロデュース店には今、「新麦」マークがいっぱい/ブルージャム

店内風景


店内風景

この夏とれた小麦をすぐひいてみんなで味わい、収穫のお祝いをする「新麦」の季節がやってきた。九州産新麦は全国に先駆けて8月10日に解禁。福岡のお店ブルージャムに行くと、あの商品にもこの商品にも、「新麦」マークがついていた。

地元・福岡、九州の生産者とつながり、パンを通して「ジャム」セッションを行う。数あるメニューの中でも、九州産新麦のおいしさがダイレクトに伝わるのが「ハードトースト」だ。熊本県玉名産ミナミノカオリを原料とした新麦「Premium T」(熊本製粉)を7割使用。乳製品は入れず、小麦の風味にフォーカス。口から鼻へ抜ける草のような香りに九州産小麦の繊細な特徴があらわれる。中身は、ハードトーストの「硬い」イメージをくつがえす。干したての布団のやわらかさで舌を包む。

ハードトースト


ハードトースト

ブルージャムは、東京・代々木公園の超人気店「365日」でパンシーンを塗り替えた革命的パン職人、杉窪章匡シェフのプロデュース店。国産の安全でおいしい食材の作り手とつながり、素材重視のパン作りを行うという革命を、九州に伝えるべく選ばれた使徒が、弟子のひとりである櫻井広基シェフだ。

櫻井広基シェフ


櫻井広基シェフ

クロワッサンは、信じられないぐらいバターが芳醇(ほうじゅん)。嚙(か)めば、表皮がばりばりと快楽の音を立て、粉々になる。でも水分は奪われない。バターのじゅるじゅる感がとんでもないからだ。中はすごく潤って、バターの甘さは輝き、それはコクに満ちてのどにまで広がって、さらにやさしい甘さに変化し、1口で3度、4度とおいしい。

厨房(ちゅうぼう)の中で赤々と輝く光に、クロワッサンをおいしくする秘密があった。

「窯入れ前の最終発酵では、ホイロ(発酵機)を使わず、あえて暖房用の電気ヒーターを使います。温度は上げるが湿度もいっしょに下げることでバターを決して溶かさないようにします」

バターは硬いままオーブンに入り、焼かれてはじめて溶けることで、一層一層が完全に浮き上がる(ばりばりになる)と同時に、まるで生のバターのようなヴィヴィッドな風味が実現するのだ。

福岡のパンといえば明太フランスだが、ブルージャムでは、この絶品クロワッサンに明太子をはさんだ「明太クロワッサン」が食べられる。魚介の激しい香り、コクと辛み。舌はじんじん、のどはぴりぴり。それをバターの並々ならぬ甘さが癒やし、明太子の塩気がまたバターの甘さをかき立てるというWIN-WINのエクスタシーが生まれるのだ。

季節のキッシュ、明太塩パンなど


季節のキッシュ、明太塩パンなど

ここでも、安全でおいしいものをというブルージャム鉄の掟(おきて)は守られる。

「無添加の明太子を探しに探しました。明太子には赤いイメージがあり、ほぼすべての商品が着色料を使っています。うちの明太子はそれほど赤くないので、『明太子入ってないじゃない』とお客さんに言われることもあります(笑)」

もうひとつ、あえてパンではなくお菓子を紹介したい。愛らしいレモンの形をした「レモンケーキ」。かりかりのシュガーコーティングが割れると、しめり気のある、形になっているのが不思議なほどやわらかい中身が、ほろほろーと一挙に崩れる。その瞬間、さわやかなレモンの香りが爆発的にあふれ、きりきりと心地よい酸味で舌を震わせる。

レモンケーキ


レモンケーキ

ここでも鉄の掟。香料も市販のレモンピールも使わず、佐賀の農家から仕入れた無農薬のレモンを使用。手間は半端ない。収穫時期には、1年分を手仕込みするため、スタッフが延々と果汁を絞り、皮をすりおろしつづける。水飴(みずあめ)を入れ、小麦粉を少なめにしてアーモンドパウダーでつなぐことで、奇跡のやわらかさは得られる。

2階はカフェスペース。窓からパノラミックに広がる、室見川の流れが「青いジャム」に見えたことが店名の由来だという。そうなのだ。九州の自然こそが、最高に甘美なパンの材料なのである。

>>続きはこちら
店舗マップはこちら

■ブルージャム
福岡市早良区田村3-1-41
092-861-5888
8:00~18:00
無休(年末年始を除く)
http://www.bluejam-fukuoka.com

<よく読まれている記事>
パンの形が保てない?  また食べたくなる“やわらかすぎるパン”/モロパン
“ぷにゅぷにゅ食感は健在!! 塩バターロールの名手・「パンネスト」永松晃シェフが独立/日乃光
逆転の発想が生み出す、まったく新しいパン/マツパン
強火が生み出す、豪快な皮と甘く繊細な生地の二重奏/YAKICHI
ごくごくと飲み干したくなる明太フランス/パンストック

<バックナンバー>
このパンがすごい!

PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

【パンと絶景】標高2307m! 日本一高い場所にあるパン屋で食べる「山型パン」/横手山頂ヒュッテ

トップへ戻る

「卵の量を10g単位で変えて50回」ぷにゅっとした食感を実現のドーナツ/ THE STANDARD BAKERS

RECOMMENDおすすめの記事