クリトモのさかな道

移転まで3週間、お世話になった築地市場よありがとう!ご挨拶編

文・中津海麻子 写真・馬場磨貴

クリトモさんが築地でお世話になった人を訪ねます。最初は「伊藤ウロコ」さん。長靴や前掛け、腕カバーなど市場で働く人たちに欠かせないものから、デザインが楽しい築地Tシャツまでそろい、外国人観光客からも大人気です。店を切り盛りする伊藤嘉奈子さんは、友さんにとって「築地の頼れるお姉さん」。プライベートでランチにも行く仲です。
    ◇

ここの長靴を履いていれば、受け入れてもらえる!「伊藤ウロコ」

栗原 斉藤水産に入ったばかりの下っ端時代、よくお使いを言付かったんです。「ウロコ行ってこい!」と。ウロコ?? 何? どこ? って(笑)。
伊藤 初めて来たときのこと、すごくよく覚えています。「こんにちは! ウロコさんってこちらですか?」って話しかけてきて。初めてお使いに来る人は「言われたからきました」みたいな感じが多いんだけど、友さんは「わからないんで教えて下さい!」「これってなんですか?」って、興味津々で色々聞いてくれてね。かわいらしいし、親しみやすい方だなって。
栗原 ほんとですか? ありがとうございます! でも、市場の中を歩くのも最初は怖かったですよ。道を横切りたいんだけど、ターレーがバンバン行き交ってて、どのタイミングで渡っていいのかわからない。まるでベトナム(笑)。モタモタしてると「邪魔だ!」って怒鳴られるし。
伊藤 男社会だし、独特の世界だからね。
栗原 でも、メソメソしてちゃ築地じゃ生きていけない。「さーせん!」って謝っちゃえばそれで終わり。ひるまないことが大事なんですよね。サバサバしてて、慣れちゃうとそれがすごく心地いいんです。
伊藤 確かに友さん、あっという間にたくましくなったもんね(笑)。
栗原 あとは、ウロコさんの長靴を履いていれば、受け入れてもらえる!
伊藤 築地の人たちに支えられ、歩んできたから。友さんにもずっと愛用してもらって、ホントに心強い。
栗原 ウロコさんの長靴は、すっごいおしゃれなの。履き口が前から後ろにかけて斜めにカットされていて後ろが下がっているから、立ったりしゃがんだりしても足に当たらないし、足がほっそり長く見える効果も。もちろん履き心地も抜群。足にぴったりとフィットするから、うちの夫は魚の目が治りました(笑)。
伊藤 ありがたいことにグッドデザイン賞もいただきました。
栗原 市場の人はもちろん、一般の人にもオススメ。フェスとかウロコさんの長靴で行ったら絶対かっこいい! あと、私はウロコさんのTシャツも愛用していて。娘にもずっと魚河岸Tシャツを着せてるんだけど、サイズがちっちゃくなってきたからそろそろ買い替えないとな。
伊藤 Tシャツもグッズも、「築地」から「豊洲」になるから、それも楽しみにしていてね。築地を去るのは寂しいけれど、新しい市場も一緒に盛り上げていこうね。
栗原 もちろん! ウロコさんの長靴にTシャツ姿で決めて、豊洲にも出没しますよ(笑)。

魚を知ること、魚を愛することが一番大事 「亀本商店」

次にクリトモさんが訪ねたのは「亀本商店」。フグをはじめとする高級魚の仲卸で、社長の菊本肇さんは、魚も築地も知り尽くした市場のプロ。テレビ番組のロケなどでもご一緒しました。「心から尊敬する大先輩なんだけど、すごく気さくでお会いすると元気をもらえる!」とクリトモさん。仕事中の菊本社長を直撃しました。
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栗原 わぁ、アマダイおいしそう! 
菊本 これは山口県だね。6月ぐらいから夏までが一番よくとれるんだよ。
栗原 キンメダイはめちゃくちゃ美しい!
菊本 きれいどころが来てくれるっていうから、赤くてきれいな魚そろえといたよ(笑)。
栗原 またまたぁ(笑)。アカムツもいいですね。でも、私はクロムツの方が好き。
菊本 アカムツは最近高級魚としてもてはやされてるけど、昔は下衆(げす)な魚だったんだよ。脂が強くて、練り物とかに使うしかなかった。それに比べて黒ムツは魚の格が違う。わかってるねぇ。
栗原 一応、料理家と魚屋の社長やってますから(笑)。その魚屋部門を担当している夫は今、亀本商店さんの一角をお借りして仕事をさせてもらってるんです。本当にお世話になってます!
菊本 旦那さん、とても真面目で魚のことをよーく勉強していて感心するよ。うちの社員にも、「魚を売るんじゃなくて、魚の知識を売れ」と常々言っている。魚屋にとって、魚を知ること、魚を愛することは一番大事なことなんだよな。

栗原 魚を愛する……魚一筋でやってこられた社長の言葉は胸にしみます。ところで、菊本社長はいつから市場で働かれているんですか?
菊本 ガキのころからたまにおやじの手伝いはしてたけど、ちゃんと働き始めたのは大学卒業してからだね。前の東京オリンピックの次の年だったから、かれこれ50年以上前だな。
栗原 すごい、まさに生き字引!
菊本 長くやってるだけ(笑)。
栗原 そのころから築地は変わりましたか?
菊本 昔の人の方が旬を大事にしたよね。7月にすし屋に行ってマグロを頼もうとしたら、おやじから「マグロは夏に食べる魚じゃない!」と一喝されて。昭和40年ごろから日本人がアジをよく食べるようになってね、俺が10月や11月に売ろうとすると「売るんじゃない!」と怒られるんだよ。
栗原 ちゃんと旬を売れ、と。
菊本 そう。でも、今じゃ魚も野菜もスーパーに行けば一年中売ってるだろ? 料理研究家としては、そこらへんどう思うの?
栗原 私が一番大事にしてるのが「四季」なんです。だって、その食材が一番おいしくなるし、安く手に入るから。そのおいしさを引き出してあげればいいんです。
菊本 友さんみたいに料理の仕事をやってる人が、旬の大切さ、おいしさを伝えていってくれるとうれしいねぇ。今の季節は何がいい?
栗原 私、小ヤリイカが好きなんです。パリッと焼き上げて、青唐辛子としょうゆかけて。
菊本 へー、いいねぇ。1杯いきたくなるね(笑)。
栗原 今度飲みながら魚談義しましょう!

「フグ除毒所」

PROFILE

栗原友

料理家
1975年生まれ、東京都出身。2012年から4年間、築地「斉藤水産」に勤務した。現在は料理教室を中心に活動する傍ら、魚料理の啓蒙や、魚を用いた食育に力を入れている。また、東京・浅草の遊園地「花やしき」内の居酒屋「夜のさわぎ」をはじめとする飲食店のプロデュースなど、幅広く活動中。近著に『クリトモの大人もおいしい離乳食』(扶桑社)、『クリトモのさかな道 築地が教えてくれた魚の楽しみ方』(朝日新聞出版)。

〈クリトモのさかな道特別編〉移転まで5週間、最強の胃袋を持つ私が行く築地市場内飲食店(3)小田保・天房・ふぢの・八千代

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