てまひま

「アートが無人の駅舎に人を呼ぶ」駅とまちをめぐるアート祭、紀の国トレイナート2018

  

今年度のキャッチコピーは「ローカルダイブ -列車を降りて、まちへ- 」

電車好きやアート好きがちょっと足を伸ばして行ってみたくなる「紀の国トレイナート2018」。和歌山県内を走る電車・JRきのくに線の駅舎をアート空間に変える芸術イベントが、9月24日まで開催されています。

和歌山県の新宮駅や那智駅、串本駅、白浜駅、西御坊駅など、紀伊半島の海岸線にあるまちを結ぶJR きのくに線と紀州鉄道の多くが無人駅舎。そんな駅に降りてもらおうと、アーティストたちがその地域の魅力を駅舎アート作品に昇華させています。

湯川駅 駅舎内作品 「nest (アーティスト 荒井祐実)」


湯川駅 駅舎内作品 「nest (アーティスト 荒井祐実)」

アーティストらは、現地に泊まり込んで作品を制作。地元の人々と交流し、まちの歴史や海や木の匂いを感じながら、そのインスピレーションで作品を作りあげました。

5年目の同イベントで、今年ならではの企画として人気なのが「ローカルダイブ」。毎週末、アーティストや地域の皆さんと共に、駅からまちに深く潜っていくのです。駅舎のアートだけでなく、そのまちの根っこの部分をも堪能できるのが「ローカルダイブ」の魅力。WEB検索では決して出会うことのないような“地元の魅力”がつまっています。

「ローカルダイブ」で、アーティスト駅長とまちを再発見


「ローカルダイブ」で、アーティスト駅長とまちを再発見

「紀の国トレイナート2018」を支えるスタッフ・アーティスト、そして、インターン生

アーティストは当然のこと、そのアーティストに木材など作品の材料を提供した地元の企業や、本企画の事務局となった商工会議所など、多くの人が協力しあって、1つのかたちを作り上げていきます。そこに、訪れるお客さんが主役となり、各無人駅に降り立つことで「紀の国トレイナート2018」は成立するのです。

そんななか、今回はこの紀伊半島では見慣れない若者がたくさんやってきました。インターン活動としてやってきた大学生です。清泉女子大学や立教大学といった、普段は関東の大学に通う彼・彼女らは、紀の国トレイナートのインターンとして和歌山を訪れ、イベントを実行委員と共に支えました。

株式会社山長商店 製材工場視察中のインターン生たち


株式会社山長商店 製材工場視察中のインターン生たち

担当したのは、前年までのアートが施してある駅舎の清掃や、パンフレット設置の為のポップスタンド作り。戴帽式の際にアーティストの方々の担当した駅名がわかりやすいように駅名パネルも作りました。また、レセプションパーティーの設営、ワークショップのお手伝い、ローカルダイブの同行と、裏方ながらも、目の前の“できること”に積極的に取り組み、イベントを支えました。

湯川駅 通路を高圧洗浄機で清掃中


湯川駅 通路を高圧洗浄機で清掃中

パンフレットを立てるポップスタンドもインターン生たちで作る


パンフレットを立てるポップスタンドもインターン生たちで作る

滞在した1週間の間に、商工会議所やアーティストと触れあう機会もありました。たとえば、今回のアート作品『積み木の茶室』に木材を提供した山長商店は、年輪の目が詰まっている良質な紀州材を扱っています。そんな紀州材が消費者に貢献できるのは、家づくりに採用された時。立派な木材を実際に手にしてみることで、その魅力がより理解できたのでは。木材について、「知らなかったことがたくさんあった」とふり返る学生も。

扇ケ浜海岸に設置される「積木の茶室(アーティスト 広谷純弘)」


扇ケ浜海岸に設置される「積木の茶室(アーティスト 広谷純弘)」

また、実行委員でもあり商工会議所に務める尾崎さんが繰り返し使った言葉は、「任せきる勇気」。アーティストや作品に関しては全く関与せず、商工会議所はあくまで事務業務に徹するそう。そのほかのことに関しても、一度任せたら最後まで口出しはしないで任せきると決めているのです。「自分たちのイベントだから自分たちが」ではなく、誰かを信用することで組織がうまくまわる。こういった「任せきる勇気」に影響を受ける学生も多かったようです。

アーティストに同行して役所の人と一緒に車移動している際には、アーティストがその場で思いついたことを提案し、それをどのように実行させるかを双方で考えているところにも居合わせました。「普段の自由な発想がダイブを盛り上げる一つの要因になっている」と、社会に出てから生きてくる貴重な経験も。

9月22日のイーストコーストダイブでは「生を受ける前の体内回帰」を体験

さて、イベントはもう終盤。9月22日、湯川駅・三輪崎駅・新宮駅・串本駅で開催されるイーストコーストダイブは、湯川駅の駅事務室を特別に解錠。かつての駅員宿直室だった空間を使った、荒井佑実さんの作品「nest」を鑑賞することができます。生を受ける前の体内回帰を体験。

湯川駅 駅舎内作品「nest」に佇むアーティストの荒井祐実さん


湯川駅 駅舎内作品「nest」に佇むアーティストの荒井祐実さん

また、三輪崎駅では深尾尚子「じてんしゃ」のアーティストトーク後、海沿いの熊野古道を歩き新宮市街地へと潜っていきます。

三輪崎駅 コンコースに設置された「じてんしゃ(アーティスト 深尾尚子)」


三輪崎駅 コンコースに設置された「じてんしゃ(アーティスト 深尾尚子)」

【待ち合わせ】
その1:紀伊田辺駅改札 9:45
その2:紀伊勝浦駅改札 11:50
【解散】
新宮駅 15:15

23日のウエストコーストダイブでは駅舎アートに注目

23日は、西御坊駅・和佐駅・印南駅・南部駅・紀伊田辺駅で展開されるウエストコーストダイブ。御坊駅~紀伊田辺駅間の駅舎アートにスポットを当てる日となっています。

印南駅コンコース内に設置された作品「ぺるそな(アーティスト 松下太紀)」


印南駅コンコース内に設置された作品「ぺるそな(アーティスト 松下太紀)」

【待ち合わせ】
その1:御坊駅改札 9:35
その2:御坊駅改札 11:03
その3:和佐駅 11:11
その4:紀伊田辺改札 12:45
【解散】
南部駅 16:30

※9月24日はクロージングイベントが開催されます。

アートに出会うまでの電車を楽しみ、アートに出会ってからのまちの魅力を楽しみ、どんどん深みにはまっていく紀の国トレイナート2018。12の海辺のまちをつなぐ列車と駅舎のアートイベントは9月24日までです。

文・上沼祐樹

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