このパンがすごい!

蔵造りの建物に白壁、格子戸……江戸時代にパン屋があったらこんな感じ?/ ももふくふく

店内風景


店内風景

ももふくふく。不思議な響きに惹(ひ)かれ、旅をした。

長野市から車で約30分、須坂市は「蔵の町」と呼ばれるところ。その通り、ももふくふくは古い町並みにあった。時代劇に出てくるような重厚な蔵造りの建物。白壁に格子戸がうつくしい。中に入る。白い三和土(たたき)に木製のテーブルとショーケースがシンプルに置かれて、惚(ほ)れ惚(ぼ)れするようにすがすがしい。もし、江戸時代にパン屋があったらこんな感じかもしれないと、パラレルワールドに迷い込んだような楽しい気持ちになった。

外観


外観

まるで雑貨のようにかわいい形のパン。中でも目に飛び込んできたのは「まめ」。はじめて見る形。小さな玉が数珠つなぎになってバトンを作っている。かりっとしたバゲット生地の中に、甘い黒豆。豆の甘さと、長野県産小麦(地元・柄木田製粉のものを使用)の味わいがじわり滲(にじ)む。

まめ


まめ

伸ばした生地にひとつひとつ黒豆を包み、つなげて、棒状にする。しかもゆがみなくうつくしく形作る。ただ目新しいだけではなく、仕事がとても丁寧であることに感銘を受けた。

どんな人がパンを作っているのだろう。姉の篠田弘美さんと妹の百子(ももこ)さんの姉妹。おだやかさの中に、ひたむきさと美意識を感じる2人だった。東京でべつべつにパンを志していたが、自分たちのお店を持とうと決意。この素敵(すてき)な建物が見つかったことで、建物に合うような、和を感じさせるパンというコンセプトも定まった。

アイテムは、どちらがどのパンということもなく、姉妹らしく息ぴったりにできあがる。

「2人で話しあって決めます。自分たちが食べておいしいパン。2人の味覚で一致したパンを作っています」

前日に仕込み、一晩冷蔵発酵。熟成した小麦のおいしさを大事にしている。

三種豆


三種豆

「三種豆」(現在休止中)のうつくしさに魅了された。これも長野県産小麦を使用したバゲット生地。大納言、白手亡、うぐいすと三種の鹿の子が入る。まるで波に洗われる海岸の石のように、生地のひねりが作るストライプに翻弄(ほんろう)される豆たち。ひねりは外観だけの効果ではない。このかりかり感、噛(か)みごたえは新しい。麦風味の濃厚さと豆の甘さが戯れる。

「ひねると層が生まれて、ばりばりっという感じの食感になります」(弘美さん)

くりーむパン断面


くりーむパン断面

菓子パンのシンプルさ、味わいのやさしさは出色である。ころんと転がっていた「くりーむパン」。ブリオッシュ形であるが、ブリオッシュ生地ではなく、甘さはほんのりの食パンのような生地。ああ、心地いい、ふわふわもっちり。中から出てくる辛子色のクリームも急がず慌てず、噛(か)むたびにゆっくり甘さと卵の滋味が滲(し)みてくる。そして、本当の衝撃はクリームを食べ終わったあとの、パンの破片。パンだけでも、やわらかく、味わい深く、皮はこんがりとして、おいしくておいしくてたまらず、むしゃむしゃ食べまくった。

ももふくふくメロンパン


ももふくふくメロンパン

同じく定番の菓子パン「ももふくふくメロンパン」。かりっとした皮が、乾いた砂のように、もろく快く崩れ去る。パン生地からは、甘食みたいな香りをなつかしく吸いこむ。ふわふわすぎず、むっちりとした歯ごたえ。そこから、思いがけずミルキーさがあふれだす。

だいなごん


だいなごん

クリーンな香りと、肉感的な食感は、ももふくふくのパンに共通する特長。「だいなごん」という真っ白いパン。おとなしげにたたずんでいるけれど、食べれば大きなサプライズが押し寄せる。白パン史上稀(まれ)に見るエアリーさ。ふわっともちっと、もう本当にやわらかすぎて、歯茎のなすがまま翻弄される。そんないじらしい生地を突き破って、大納言がごろごろと登場。小麦の白い味わいと相まって、大福的マリアージュが訪れる。
「いっきん角食」は人気アイテム。ぷにっとした感触から、ぱっつんと切れる瞬間の快感。ほとばしる甘さ、次から次に湧きだすミルキーさ。この食パンは、食感の快楽の極致をいく。

並びには、古い建物に惹かれてやってきたカフェやゲストハウスもオープン。少し足を伸ばして小布施に栗のお菓子を食べに行くのもいい。ももふくふくを目指して旅をして、損がないどころか、楽しくておつりがきた。

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■ももふくふく
長野県須坂市大字須坂35-イ
026-247-8578
11:00~17:00(売り切れ次第終了)
日曜・月曜休み

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

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