花のない花屋

不思議と“お客さんと仲良くなってしまう”神戸のセレクトショップに感謝の花束を

不思議と“お客さんと仲良くなってしまう”神戸のセレクトショップに感謝の花束を

〈依頼人プロフィール〉
太田成沙さん 26歳 女性
東京都在住
会社員

そのお店に出会ったのは2008年の夏。大学見学のために訪れた神戸の旅で、ふらりと立ち寄ったことがきっかけでした。元町にあるレディースのセレクトショップで、国内の職人さんが作ったものや、海外の珍しいブランドのものが置いてあり、センスのいい空気感が漂っていました。

女性の店員さんが一生懸命商品の魅力を話し、こちらが質問すると、丁寧に答えてくれました。「なんだろう? 他のお店と全然違う」とはっきり思ったのを覚えています。その日はハンドメイドのネックレスを買って帰りました。

無事に大学に入学し、しばらくそのお店のことは忘れていましたが、ある日元町をぶらぶら歩いていたとき、不意にお店のことを思い出しました。実は、アパレル関係の仕事に就くことは小学生からの夢でした。ちょうど将来のことを見据えて勉強や仕事をしたいなと思い始めていた私は、「働くならこんなお店が理想かも……」と思い、まずはアルバイトに応募。大学2回生のときから働き始め、大学卒業後は正社員として、合計4年半ほどお世話になりました。

このお店の魅力は、商品はもちろんのこと、アパレル一筋のオーナー夫妻のもとに集まった家族のようなあたたかいスタッフ、そして彼らの接客スタイルです。土地柄、観光客のお客さんも多いのですが、初めて入ってきたお客さんともみんな仲良くなってしまいます。普通なら、「洋服を広げてみてくださいね」「それ、かわいいですよね」など、当たり障りのない会話で終わってしまいますが、ここではなぜかもっと深い話になります。仕事や進路に関する悩み、結婚、出産の報告、恋愛の話などをしてくださる方も多かったですし、家族ぐるみでご来店くださる方もたくさんいらっしゃいました。

コンビニの店員しか接客経験がなかった私には、この接客はとてつもなく難しいことのように思えました。人見知りをする方だったので、なかなかお客様に話しかけることができず、話しかけても緊張して会話が弾みません。まずは、先輩の接客スタイルをひたすら観察し話し方や間の取り方を真似ることから始めましたが、見た目や年齢、雰囲気の違う私がそれだけでうまくいくはずがなく……。

姉のような存在だった先輩が、「こうしたらもっとお客様に伝わるよ」「今はこう言ったらよかったね」など毎回フィードバックしてくれましたが、うまくできない自分が悔しくて、涙することも度々ありました。

お声がけができるようになるまで2、3カ月くらいかかり、なんとか接客が形になってきたのは、働き始めて1年ほど経った頃から。お客様のその日の服装や持ち物、目線や動き、お声がけに対する反応など、あらゆることに敏感になり、そこからその人の心に響きそうな言葉を選ぶ……ということができるようになり、“なんとなく”のお声がけをすることがなくなりました。

結婚を機に退職してしまいましたが、このお店では生きていく上で大切な人との距離感、接し方、気配りを教えてもらったと思っています。そこで、お店にこれまでの感謝の気持ちを運んでくれるお花を贈りたいです。お店のスタッフにはもちろん、お客様の目にもとまるお花だとうれしいです。

お店にはいろいろなものがあるので、カラフルなイメージの花束をお願いします。お店のモチーフがサボテンなので、サボテンも入れていただけますでしょうか。できれば、お花がおわったあとにオーナーご夫婦とスタッフ5人がそれぞれ家に持ち帰って楽しめる要素があるとうれしいです。

不思議と“お客さんと仲良くなってしまう”神戸のセレクトショップに感謝の花束を

花束を作った東さんのコメント

仕事でお世話になった人たちへ贈るお花……そういうのもいいですね! 今回は“センスのいい雰囲気が漂うセレクトショップ”とのことだったので、サボテンや多肉植物をメーンに使い、思いっきりアレンジをしました。

主な花材はサボテン2種類、バーゼリア、アロエ、ネオレゲリア、パフィオペディラム、キングプロテア、ピンクッション、サラセニア、ケイトウ、エアープランツなど。形や質感がどれも個性的で、ボタニカルガーデンのように華やかです。

ポイントはエピデンドラムの赤い挿し色。エアープランツのピンクの花、キングプロテアやケイトウの赤とともに、個性的な植物たちをまとめてくれています。リーフワークはカクレミノの実と葉です。もちろん、サボテンや多肉植物は花が終わったあと、持ち帰って育てることができます。

太田さんの感謝の気持ちがみなさんに伝わりますように。

不思議と“お客さんと仲良くなってしまう”神戸のセレクトショップに感謝の花束を

不思議と“お客さんと仲良くなってしまう”神戸のセレクトショップに感謝の花束を

不思議と“お客さんと仲良くなってしまう”神戸のセレクトショップに感謝の花束を

不思議と“お客さんと仲良くなってしまう”神戸のセレクトショップに感謝の花束を

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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