東京ではたらく

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

職業:ウェディングプランナー
勤務地:東京都渋谷区
仕事歴:6年目
勤務時間:フレックス制
休日:不規則

この仕事の面白いところ:半年間かけて準備したものが形になる瞬間に立ち会えるところ
この仕事の大変なところ:常に新しいアイデアを生み出さないといけないところ

東京・渋谷にあるトランクホテルでウェディングプランナーとして働いています。ウェディングプランナーは、どんな結婚式を作りたいかというコンセプト作りから、披露宴の内容、会場セッティング、お料理、お花、ドレス、引き出物など、結婚式にまつわるあらゆることをご新郎ご新婦様と一緒に考えていく仕事です。

トランクホテルは2017年5月にオープンしたブティックホテルで、ホテル内にチャペルと披露宴会場を備えています。トランクホテルではプランナーのことを「ライフファシリテーター」と呼んでいるのですが、直訳すると「人生を導く役割」という意味です。

プランナーは結婚式を成功に導く仕事ではありますが、式の準備期間や結婚式当日だけにとどまらず、その後のご夫婦の生活、人生まで豊かに彩るお手伝いができたら。そんな願いや使命感を込めた言葉です。

ちょっと大げさかもしれませんが、結婚式というのはご新郎ご新婦様にとって夫婦としてのスタートラインなのだということを、私も仕事を続ける中で身にしみて感じてきました。ですから今は、その責任の重さを感じつつも、それ以上のやりがいを持って仕事に向き合えているように思います。

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

「ソーシャライジング」をテーマに掲げるトランクホテル。バーラウンジは一般に開放されており、昼間はカフェとして利用する人も多い

結婚式を挙げられた経験のある方はその大変さをよくご存じかもしれませんが(笑)、結婚式の準備というのはだいたい本番の半年ほど前から始まることが多いです。式場が決まったら私たちの出番で、ご新郎ご新婦様とは通算で5~6回ほどの打ち合わせを経て、本番の日を迎えます。

まず初回の打ち合わせは、「2人がどんな結婚式をしたいか?」という結婚式のアウトフレームを決めます。最初の一歩ですが、やっぱりここが一番大変というか、みなさん悩まれるところですね。この時にばっちりイメージをお持ちの方は本当にまれで、全くの白紙状態からお話が進むことも多いです。

プランナーの腕の見せどころというか、個性が出るのもやっぱりこの時だと思います。例えばこれまで手がけた結婚式のお話をして、「こんな感じはどうですか?」とイメージを膨らませていただくこともあります。でもそれだけでは、お二人らしい式にはならないと思います。

新郎と新婦。同じ人物がこの世にひとりとしていないように、2人の結婚式もまた世界にひとつだけのものです。だからこそ2人らしい式にしてほしい。そのお手伝いをするのが私たちの仕事ですから、まずはプランナーがお二人のことをよく知るところから話を始めるわけです。

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

式を間近に控えたご新郎ご新婦様と直前打ち合わせ。式当日の持ち物や段取りを綿密にチェックする。「靴下はご自身で用意されますか?」など、細かい部分も抜かりなく確認

そこでまず、初回、もしくは2回目の打ち合わせではお二人の性格や趣味、出会いなど、パーソナルなことを伺います。その上でお二人らしい式につながるキーワードを3人で探っていきます。

例えば猫がご縁でお付き合いがスタートしたというカップルがいらっしゃったとします。単純に考えると「じゃあ会場や招待状に猫のモチーフをあしらいましょうか?」というアイデアになるかもしれませんが、そこはもう少し突っ込んで、「猫のどういうところがお好きなんですか?」とお尋ねしてみます。

そうすると「う~ん、気まぐれなところ?」とか、「目が奇麗なところ?」とか、お二人からご意見が出てきますよね。「お二人の猫ちゃんはどんな目の色なんですか?」と尋ねて、例えば「とっても奇麗なターコイズブルーなんです!」と返ってくれば、もしかしたら会場のキーカラーがそのターコイズブルーになるかもしれません。

そんな感じで、ざっくばらんなお話を通して、お二人が日常の中で大切にしているもの、かけがえのないものを抽出していくんです。日常というのは何げない日々の連続なので、好きなものや大事にしていることを見過ごしてしまっているかもしれません。そこを自分たちが介在することで明確にしていけたらすてきだなと思っているんです。

全体のテーマが決まったら、式の進行内容を決めていきます。結婚式というと上司のスピーチがあったり余興があったりというのが定番でしたが、最近はそうした型にとらわれず、自由に構成される方も増えてきました。

牧師さんを呼ばず、2人で考えてきた誓いの言葉を読み上げて、参列した方々が結婚の証人になるという人前式というのもあります。

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

ルーフトップにあるチャペルはシックで大人っぽい雰囲気。周囲は緑に囲まれていて、渋谷のど真ん中とは思えないすがすがしさ

そんな風に近年、「結婚式の在り方」そのものが変化してきているなというのは肌で感じます。これまで結婚式というのは新郎新婦の門出をみんなで祝うというものでしたが、最近では逆に、新郎新婦がお世話になった方々を「おもてなしする」という場に変わってきているように思います。

ゲストがゆったりと食事をしながら純粋にパーティーを楽しめる場にしたいというご新郎ご新婦様も多くて、その場合には進行の構成にゆとりをもたせたり、披露宴会場によってはテラスでBBQをすることなんかもあります。

お料理が決まったら次は会場を彩るお花やブーケ、そしてドレスも決定していきます。引き出物も決めないといけませんね。怒涛(どとう)のように「決めなくてはいけないこと」が押し寄せてくるのですが、この頃になると新郎新婦も理想とする式の形が何となく見えてきているので、私はとにかくお二人のTO DOの進捗(しんちょく)管理と手配漏れがないようにと手配物の確認を細かくしていきます。

そして最終打ち合わせとリハーサルをして準備は終了。あとは当日を待つばかりです。私の当日の仕事は、これまで準備してきたこと全てが正確かつスムーズに進行されているかどうかをチェックすること。当日は朝から各セクションとコミュニケーションをとりながら入念に確認をするわけです(笑)。

世界にひとつだけのウェディングを作るために

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

ホテルのフローリストと装花の打ち合わせ。「ブーケの雰囲気は主にご新婦様とたくさんのお写真を使ってイメージをすり合わせます。やっぱり花嫁さんにとってブーケは特別なものですから」

ウェディングプランナーの仕事に本格的に興味を持ったのは社会人になって1年ほど経った頃でした。

大学時代から人とコミュニケーションをとるのが好きで、将来は営業職に就きたいと漠然と考えていました。営業職の方って、こちらが伝えたいと思っていることを即座にキャッチして、ものすごく上手に会話を進めてくれるなという印象が当時からあって。

大学のOBにもそういう先輩が多かったんですね。それで自分も「そういう大人になりたい!」と思ったのが営業職に憧れたきっかけでした。

新卒採用でとある大手料理教室の営業職に就くことができまして、まさに水を得た魚のように働きました。日々、人とコミュニケーションを取りながら仕事を進めていく営業職はやっぱり自分の性格に合っていて、とても楽しかったですね。

でも、好きが高じてというのでしょうか(笑)、やればやるほど「もっと人と深く関わる仕事がしたい!」と思うようになりまして。例えば料理教室の営業職だと、料理に興味のある方々にお話をして入会していただくというのが主な仕事になりますが、入会していただいた後は、私はもうその生徒さんたちと関わることは少なくなってしまうんですよね。そこが少し寂しいというか……。

それで思いついたのがウェディングの仕事。初顔合わせから式当日までの半年間は二人三脚、あ、3人なので三人四脚でしょうか(笑)。とにかく、お客様と深く長くお付き合いできることが魅力的でした。

実際にお仕事を始めてみると、式当日までのお付き合いかと思っていたら、式が終わってからも産まれたお子さんのお顔を見せにわざわざ会いにきてくださったり、年賀状のやり取りが続いたり……。大好きなお客様とずっとつながっていられるすてきな仕事でした。

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

式前日には手配しておいたドレスのチェックも。「汚れやほつれがないか、最終チェックします。今でも式前日の夜には、ドレスが届いていない!っていう悪夢を見ることがあるんです。それくらいナーバスになりますね(笑)」

準備期間中、ご新郎ご新婦様には本当に色々なことが起こるんです。もめ事、けんか、すれ違い……。結婚式準備期間で初めてけんかしましたなんてこともよく聞きます。でもそんな時間を経て2人は少しずつ成長して、だんだんと本当の夫婦になっていくんです。それを一番近くで見て、時にはサポートしていけるというのは、なかなかない仕事ですし、やりがいや感慨はひとしおです。

これまでひやっとしたことですか? もう数え切れないくらいあって思い出せませんね(笑)。ああ、でもトラブルというと、ある日、何度目かの打ち合わせに来られたお二人がいて、その日は披露宴の進行内容を決める打ち合わせだったんですね。

でも、どうもご新婦様のご機嫌がよろしくないぞと。私もご新郎様も気づかないそぶりで話を進めていたのですが、披露宴でご新婦がご両親への感謝の手紙を読むかどうかというところで、お二人の意見が割れてしまって……。

それまでの打ち合わせで、ご新婦様とご両親の関係が芳しくないという雰囲気は感じてはいたのですが、この機会に仲直りをしてほしいというご新郎様の強い思いから、お話の中でご新郎様が少し強めに「やればいいじゃん!」とおっしゃったものですから、ついにご新婦様が怒ってしまって。打ち合わせの場から走って帰ってしまったんです。

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

自分で結婚式を挙げてみてわかったことがあるという宇田さん。「プロの私でもどんな式にしようかめちゃくちゃ迷ったので、新婦さんが優柔不断になるのは当たり前なんだなと(笑)。納得いくまでとことん考えましょう! と思えるようになりましたね」

翌日ご新郎様にお電話をして仲直りされたと伺いましたが、その時は焦りましたね。長くこの仕事を続けていると、そういうことは本当によくあるんです。夫婦といっても、違う価値観を持った人間同士ですから、全てにおいてぴったりと意見が合う事なんてそうそうないんです。

結婚式はよく言われる通り、夫婦としての初めての共同作業です。だからその準備期間に価値観の違いが露呈してしまうというのは、当たり前ですよね。大切なのは、その時にどう考えて行動するか、歩み寄ることじゃないかなと思うんです。

つまり、初めて気づいてしまった2人の考え方の違いというものをどうとらえていくかによって、ピンチもチャンスに変わるんじゃないかなと。考えてみれば、ご家族との関係性についてじっくりと話し合う機会というのも、そう持てるものではありませんから、結婚式の準備期間をお互いの理解を深める機会にしていただけたらいいなと考えています。

トランクホテルでは、結婚式の準備期間にいろいろなワークショップを準備しているのですが、例えばご夫婦で農園に出かけて、そこで一緒に野菜を育てるという体験もあります。普段はなかなかできないことをやってみるというのも、夫婦の絆を深めるのにとてもいいみたいで(笑)。

さらに収穫したお野菜を披露宴のお料理に使うこともできるのって、すごくすてきですよね。

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

ホテル内には四つの披露宴会場が。それぞれデザインやキャパシティが違っていて、コンセプトによって好みの会場を選べる。渋谷駅から徒歩10分というアクセスの良さ

他にもヨガ体験や、もっと実用的なものでいうと、妊活や住まい作りにまつわるワークショップなんかもあります。挙式の後に参加できるものもたくさんあって、結婚式が終わった後もお客様とのご縁が続くということも、このホテルならではのだいご味ですね。

そんな風に、試行錯誤を経て結婚式を挙げられた2人が、どんどん夫婦として成長していく様子を見る時は、この仕事をしていてよかったなと心底思います。

大変なことですか? う~ん、性格的につらかったことは忘れていくタイプなのですが(笑)。強いて言うなら、常に新しいアイデアをインプットし続けないといけない点でしょうか。

先ほどもお話しした通り、せっかくの結婚式ですから、ご新郎ご新婦様、お二人だけのオリジナルの式にしたい。でも、そのためにはアイデアを膨らませるためのソースというか素地が必要です。私たちの仕事はお客様の漠然としたアイデアを具体的な形に落とし込むお手伝いをすることですから、そのためにはいろいろな引き出しを常に持っていないとダメなんですね。

こと最近ではソーシャルメディアが発達しすぎて、お客様も世界中のすてきなウェディングを手軽に見ることができます。その上で「まだ誰も見たことのない式をやりたい!」ということになるので、それはまあものすごいハードルの高さで(笑)。

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

◎仕事の必需品
「発注関係など、とにかくタスクが多いので、パソコンで逐一チェック&管理。お客様にお貸しするボールペンと、決定事項を書く赤ペンも常に持ち歩いています」

というわけで、仕事中であろうと休日であろうと、アンテナは常に張りっぱなしです。映画や音楽、本などはもちろん、日々歩く街の風景の中にも「すてきだな」と思うものを無意識に探していますね。

でも、それが苦になるというよりは、「あ、いいアイデアの元になりそう!」とポジティブにとらえられているあたり、やっぱりこの仕事が好きなんだなと思っています。

今後の目標は、ずっと変わらずプランナーを続けることです。実は私には娘がいまして、妊娠、出産でしばらく仕事から離れていました。休職中に痛感したのは、「やっぱり結婚式の仕事が好き!」ということ。通常育休や産休でのカムバックが難しい業種ではありますが、新しい働き方を会社が理解し応援してくれたのは大変ありがたかったです。

母親として生きていくのも、もちろんすてきですが、私にとって、母親であることとプランナーであることは、どちらが欠けても私じゃない、大切な生きがいだと気づかされました。

とはいえ、結婚式というのはほとんどが土日に集中してしまうので、そこはもう気合と体力で乗り切るしかないですね。先日は土曜日に娘の幼稚園の運動会があったのですが、午前中に運動会に出て、その足で午後の結婚式に入りました(笑)。

私自身もそうですが、こと東京は、さまざまな女性の生き方が許される街だと思います。結婚の仕方だって十人十色ですし、それが面白いところです。自分たちらしく、唯一無二の結婚式を作れるのも、東京らしい自由さかもしれません。そんなお手伝いをこの先もずっとしていけたら、そんなに楽しいことはないですね。

■トランクホテル

PROFILE

  • 小林百合子

    編集者
    1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

  • 野川かさね(写真)

    写真家
    1977年神奈川県生まれ。山や自然の写真を中心に作品を発表する。クリエイティブユニット〈kvina〉、自然・アウトドアをテーマにした出版・イベントユニット〈noyama〉の一員としても活動する。作品集に『Above Below』(Gottlund Verlag)『with THE MOUNTAIN』(wood/water records)、著書に『山と写真』(実業之日本社)など。
    http://kasanenogawa.net/

書店員:太田千亜美さん(38歳)

トップへ戻る

骨盤ケアセラピスト:三浦沙矢香さん(34歳)

RECOMMENDおすすめの記事