花のない花屋

「田舎だから、助け合い精神だよ」 闘病の母を助けてくれた、離島に住む友人へ

「田舎だから、助け合い精神だよ」 闘病の母を助けてくれた、離島に住む友人へ

〈依頼人プロフィール〉
高木八重さん 44歳 女性
鹿児島県在住
パート

「お母さん、入院することになったから」。昨年の11月、仕事からの帰宅途中に父から電話がありました。母が急性骨髄性白血病であることがわかり、病院に緊急入院するとのことでした。

実家は離島にあるため、母は本土の病院に入院。すぐに無菌室にて抗がん剤治療を開始し、抗がん剤が効かなくなると、治験薬に切り替えて治療しました。

緊急入院で突然かごの鳥になった母の唯一の楽しみは、食べること。離島からなかなかお見舞いに行けない父の代わりに、本土に住む私や親戚が母に差し入れを届けていました。

そんなある日、母が「ちーこちゃんのガネ(野菜の天ぷら)が本当においしかった!」と言いました。聞けば、実家の近くに住む昔からの友人、ちーこちゃんにリクエストして、父に持ってきてもらったとのこと。なぜそこまでしてちーこちゃんのガネを食べたがるのか不思議でしたが、なるほど、余っていたものをつまんで納得。初めて食べるおいしさでした。

半年ほどの闘病の末、母が亡くなった夜は、遅い時間だったにもかかわらず、ちーこちゃん一家は離島から病院に駆けつけてくれました。そして斎場のない島でのお通夜に自宅葬……。私たち遺族はまったく気も手も回らない中、猛暑の台所でお手伝いの方々を取り仕切ってくれたのは、ちーこちゃんでした。

どうしたらいいのかわからない私には、「お母さんを一人にせずに側にいてあげなさい」とやさしく言葉をかけてくれました。滞りなく母を見送れたのはまさに彼女のおかげです。さらに、母が亡くなって数カ月経った今は、自分の家族や仕事を抱えているにもかかわらず、一人残された父にも気をかけ続けてくれています。

「田舎だから、助け合い精神だよ」とちーこちゃんは言いますが、私はそれ以上のものを感じています。60歳を超えているとは思えないほど可愛らしく、立ち振る舞いも含めてチャーミング。すべてがさりげなく、芯の強さが優しさとなって表に出ているような女性です。

そんなちーこちゃんに、私たち遺族も母もとても助けられました。そこで、今改めて感謝の気持ちを込めて花束を贈りたいです。

花はちーこちゃんをイメージして、かわいらしい中に凛とした雰囲気のあるアレンジだとうれしいです。離島なので生花を贈るのが難しければ、ドライフラワーの花束でもかまいません。どうぞよろしくお願いいたします。

「田舎だから、助け合い精神だよ」 闘病の母を助けてくれた、離島に住む友人へ

花束を作った東さんのコメント

お母様の闘病中、葬儀。そして、その後のお父様のことも気にかけてくれた“ちーこちゃん”へ。
離島ではあまり見ないような珍しい花を選びました。

今回の花束には、珍しい種類のバラをはじめ、カラー、ガーベラ、エピデンドラム、アンスリウム、トルコキキョウを採用。一つひとつは個性があって芯がある花なのですが、束ねてみると可愛らしく、チャーミングにおさまる花束です。まわりは、ユーカリ(グニユーカリ/ポポラス/マルバユーカリ)。

お話からは、可愛らしい雰囲気の中にも、どこかキリッとしたちーこちゃんの姿が浮かびました。「田舎だから助け合い精神だよ」「お母さんを一人にせずに側にいてあげなさい」という言葉からも、いろんな場面で支えになってくれたことが伝わってきます。そんないろんな顔のちーこちゃんを思いながら、花束をつくりました。ちーこちゃんに感謝の気持ちが届きますように。

「田舎だから、助け合い精神だよ」 闘病の母を助けてくれた、離島に住む友人へ

「田舎だから、助け合い精神だよ」 闘病の母を助けてくれた、離島に住む友人へ

「田舎だから、助け合い精神だよ」 闘病の母を助けてくれた、離島に住む友人へ

「田舎だから、助け合い精神だよ」 闘病の母を助けてくれた、離島に住む友人へ

(写真・椎木俊介/ライター・宇佐美里圭)

「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
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花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

PROFILE

  • 宇佐美里圭

    1979年、東京都生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒。在学中、ペルー・クスコにて旅行会社勤務、バルセロナ・ポンペウファブラ大学写真専攻修了。ワールドミュージック誌、スペイン語通訳、女性誌、『週刊朝日』編集部を経て、『アサヒカメラ』編集部。料理研究家・行正り香さんの書籍を多数手がける。ラテン音楽、山、ワインが好き。

  • 椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。

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http://azumamakoto.com/

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