猫と暮らすニューヨーク

夢のリノベアパート。猫用トイレも手づくり。

「朝、2匹がベッドの上に乗ってきて、家族全員が集合する。その瞬間がたまらなく愛(いと)おしい」と2人。「だって彼らは本当に私たちの家族だから」。


「朝、2匹がベッドの上に乗ってきて、家族全員が集合する。その瞬間がたまらなく愛(いと)おしい」と2人。「だって彼らは本当に私たちの家族だから」。

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Frida(フリーダ)14歳 メス サビ柄猫、Bowser(バウザー)9歳 オス 黒白猫
飼い主・教師の傍らミュージシャンとしても活動するDanny Fernandez(ダニー・フェルナンデズ)さんと、ソーシャルワーカーのTiina Treasure(ティーナ・トレジャー)さん夫妻。自分たちでリノベーションした、ブルックリンの1ベッドルームアパートメントに暮らす。

ティーナさんがサビ柄のメス猫フリーダを保護施設から譲り受けたのは、夫のダニーさんと出会う以前、フロリダに住んでいたときのこと。その後ダニーさんと出会い、2人&一匹でニューヨークへ移り住んだあと、オス猫のバウザーを保護施設から譲り受けた。

「よく冗談で、フリーダはティーナの猫。バウザーはダニーの猫って言ってるんです」と2人。長らく一緒に暮らしてきたティーナさんと猫のフリーダの絆は強く、ダニーさんは少し疎外感を感じていたらしい。「もちろんフリーダは僕にもなついてはいたけれど、なんていうか“自分の猫”が欲しいって思ったんです」とダニーさん。

そうして保護施設を訪ねた2人。ダニーさんは無邪気に遊びまわる黒白柄の猫にひとめぼれ。「でもフリーダは大人の猫でしょう。やんちゃな子どもの猫は、きっと合わないと思って反対したんです」(ティーナさん)。そんなティーナさんの意見が夫に聞き入れられることはなく、活発なその黒白猫は2人の家へとやってきた。とにかくよく遊ぶ姿を見て、ゲーム好きのダニーさんが“バウザー”(任天堂のゲームシリーズ、マリオに登場する悪役のキャラクター)と名付けた。

案の定、最初の4カ月はお互いにシャーシャー言いあって、まったく馴染(なじ)まなかったという二匹。「別々の部屋に一匹ずつ隔離して、ほんの少しの隙間だけを開けて、慣れさせるようにしたんです」(ティーナさん)。それでもわずかな隙間からシャーシャー威嚇しあう二匹だったけれど、毎日の隙間越しの関係に次第に慣れ、少しずつ距離を縮め、やがてひとつ屋根の下、とりあえずケンカのない暮らしが送れるようになったという。

座面がロープで編まれている、ティーナさん曰(いわ)く“ロープチェア”がバウザーのお気に入り。通りすがりに、こうやって必ず顔をすりすり。


座面がロープで編まれている、ティーナさん曰(いわ)く“ロープチェア”がバウザーのお気に入り。通りすがりに、こうやって必ず顔をすりすり。

「フリーダは生意気なボスキャラ」とティーナさん。バウザーよりも体が小さいにもかかわらず、「自分が座りたい場所にバウザーがいると、追い払います」(ティーナさん)。さらに「よくしゃべる猫」とはダニーさん。「僕が出会った頃は、フリーダはもっと普通の猫だったと思うんだけど(笑)。なぜかよくしゃべるようになったんです」。物申したいことがあるとき、あるいはティーナさんの呼びかけに返事をするときは、フリーダは決まって眉間(みけん)に皺(しわ)を寄せるみたいに、鼻と目をくしゃっと中央に寄せて口を開け、「ヒーッ」とか「シャー」とか、声にならない音を発する。その発声方法、一体いつどこで体得したのだろう……。

一方、ボスキャラのフリーダとは距離を置きながら、自分の生活をエンジョイしているバウザーは、頭がびしょびしょに濡(ぬ)れるのも気にせず、風呂場の蛇口から水を飲み続けるという、ちょっとまぬけな性格。困ったことに、かなりの寂しがり屋で、2人が外出してしまうと、外の通りにまで聞こえる声で、切なく鳴くのだという。それじゃあ毎日の外出が断腸の思いである。

ダニーさんにとって、フリーダもバウザーも人生初の猫。「猫たちを観察するのが好きです。それだけで楽しい」(ダニーさん)


ダニーさんにとって、フリーダもバウザーも人生初の猫。「猫たちを観察するのが好きです。それだけで楽しい」(ダニーさん)

ところで、ティーナさんとダニーさんは現在のアパートメントを、かなりひどい状態で購入。壁の塗り替え、システムキッチンの導入など、リノベーションのプランを一から考え、理想の部屋を叶(かな)えたという。壁に飾られている古い絵や、一点ものの家具は、ヴィンテージショップやフリーマーケットでティーナさんがこつこつと蒐集(しゅうしゅう)してきたものだ。

「何か猫たちのために工夫したインテリアはありますか?」と聞いたところ、これこれ、と玄関に置かれているヴィンテージの巨大なトランクを2人が指さした。よく見てみると、壁側の死角となる側面に、四角い穴が開けられている。ダニーさんがぱかっとトランクの蓋(ふた)を開けたら、中身は猫用トイレだった。蓋を閉めれば、ほぼ臭いゼロ。まるで、ホテルの部屋みたいなすてきな収納家具、高さもあるからベンチ代わりにもなる。これはすばらしいアイデア。売り出せば、いい商売になるのでは……と一同で盛り上がったのだった。

短い前髪が凛々(りり)しいバウザー。男性が嫌いで、足に飛びつきアタックするのがクセ。この日も取材チームのカメラマンの足に果敢にアタック。って、バウザーくん、そのカメラマンは女性なんですけど……。


短い前髪が凛々(りり)しいバウザー。男性が嫌いで、足に飛びつきアタックするのがクセ。この日も取材チームのフォトグラファーの足に果敢にアタック。って、バウザーくん、そのフォトグラファーは女性なんですけど……。

2人で叶えた夢の部屋とはいえ、猫を飼っていると、ソファを引っ搔かれたり、ラグに吐き戻されたり、夢とは言っていられない現実も起こりますよね?と聞く私に、笑ってうなずくティーナさん。「だからソファはレザーにしています。革だとなぜか猫たちがあまり引っ搔かないから」。さらにラグは、「ヴィンテージに限る」らしい。「もともとシミや汚れがあるでしょう。だから猫がちょっとぐらい吐いても全然気にならないんです」。なるほど、時が経つほどにさらに味わいが増して、一石二鳥ということですね。

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

ティーナさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/llaayyeerrss
ティーナさんのウェブサイト
http://www.layersandlayersofpaint.com/
ダニーさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/alien_trilogy
ダニーさんのウェブサイト
https://alientrilogy.bandcamp.com/

写真・前田直子

PROFILE

仁平綾

編集者・ライター
ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.bestofbrooklynbook.com

前田直子(まえだ・なおこ)

写真家

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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