このパンがすごい!

日本そば屋の前に「有機パン」の看板!! 売り切れ必至の食パン専門店 /パン工房アンペル

そば屋の店先にパンの看板


そば屋の店先にパンの看板

なんとそば屋でパンを売っている。どこからどう見ても日本そば屋でしかない店の前に「有機パン」の看板ひとつ。それでも口コミで話題が広がり、午前中でほとんどパンが売り切れる。やわらかく、麦の風合いが心地よく、すいすい喉(のど)を通って、いくらでも食べられてしまう代物。

オーガニック角食パン


オーガニック角食パン

「オーガニック角食パン」からはおだやかに熟成香が立ち上っている。わらびもちのようにやわらかな中身が、舌の上でふるふると躍る。スポンジが水分を吸い込むように、きゅーっと唾液を吸い込んで自壊し、やわやわとなって、消えていく。喉を流れ下るのはもはや液体。喉の奥でまで小麦のやさしい甘さを感じている。バターはやさしくじんわりとあふれ、小麦の甘さを消さない。

「パン工房アンペル」で売っているアイテムはほぼ食パンのみ。というといま流行(はや)りの「食パン専門店」の「高級食パン」を思い起こさせるが、まったく異なっている。高級食パンがとても甘いのに比べ、この食パンは甘くない。砂糖もバターも最小限。だから、朝昼晩どんな食事にも合う。トースト最高、生でもサンドイッチでもおいしい。

すべての材料にオーガニックのものを使用(バター除く)。小麦ももちろんオーガニック。北米産、北海道産を使用している。

「オーガニック全粒粉食パン」は、北海道十勝の自然栽培農家・中川さんの小麦をブレンド。自家製粉だから香りが実にすがすがしい。最初はふすまの木質的な香りがしている。噛(か)み締めると、すーっとペパーミントのようなさわやかな風が鼻を吹き抜ける。ふるふる感、エアリーさ、喉越しよさは角食パン同様。だからするすると胃の腑に収まって、食べる手が止まらないのだ。

全粒粉食パンの生地にレーズンを入れた「オーガニックレーズン食パン」。湿って、とろけて、液状化していく生地だからこそ、ジューシーなレーズンとの相性が格別。ふすまの香りとレーズンの香りは溶け合い、高め合う。

オーガニックのパンというと、食べにくい、硬いという色眼鏡で見る人もいるかもしれない。アンペルのパンはまったくちがう。オーガニック「だから」、えぐみがなくて本当に食べやすい。製法も後押しする。

「湯種を使って長時間発酵させ、水分を多く入れています。2日目、3日目でもおいしく食べられます」

そばを作る矢吹弘史シェフ


そばを作る矢吹弘史シェフ

矢吹弘史シェフは津波で大きな被害のあった福島県いわき市の出身。原発事故をきっかけにオーガニックに興味を持ったという。それにしても、なぜそば屋でパンを売るのか? このそば屋は奥さんの実家で、大学入学とともに東京に出てきた矢吹さんのバイト先だった。ここで出会った奥さんと結婚、パン屋として独立。駅前に立地するそば屋でパンを売ってみたらどう? と家族に勧められ、こんなスタイルになった。行く行くは義父に習ったそばやうどんも販売したいという。自家製粉をはじめて小麦の粒に触れるようになったこともあり、小麦もそばも穀物、という考えを持つようになったという。

「人間は穀物を食べて生きてきた。穀物のよさを広めていきたい」

工房は、飯能市内の名栗という地区にある(土曜日のみ工房でもパンを販売)。

オーガニックまるぱん


オーガニックまるぱん

「目の前にバーベキュー場があるようなすごくいいところなんです」と聞いて、行ってみた。時あたかも紅葉シーズン。パンを買い、名栗川の清流で釣りを楽しんだあと(有間渓谷観光つり場。釣りもバーベキューも楽しめるスポット)、紅葉を見ながらまるぱんを食べた。ぷにゅぷにゅと歯と歯のあいだで押し潰され、はかなく溶けるまるぱん、散る紅葉。パンもレジャーも一挙両得の、家族大絶賛の一日になった。

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■パン工房アンペル
ゆきやなぎ飯能駅前店
埼玉県飯能市柳町23-20
070-4073-1105
10:30~売切終了
月曜火曜休み

■名栗工房店
埼玉県飯能市下名栗221-1
070-4073-1105
8:00~11:00
土曜のみパンを販売

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

http://panlabo.jugem.jp/

Instagramで世界のトップベイカーと交信して作りあげた最先端ベーカリー誕生/ VANER

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「はやりの小さなパンの真逆を(笑)」豪快に笑う店主のパン/ベーカリーミウラ

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